276-剣術試合開始直前の私
金紅さんは優雅にスッと、アタカマさんは豪快にどすりと、ライオネア様はくるりと回転、スズオミ君は着地直前に1度浮遊してから堅実に。
出場者全員がそれぞれの動作で地上闘技場に降り立ち、その度に歓声が沸くのを聞きながら、ふと思った。
そうだ、私、本格的な剣術の観戦は初めてなんだ、と。
ハンダさんと中央冒険者ギルドギルドマスタースコレスさんの試合、それから私がカバンシさんと組ませて頂くみたいにしてハンダさんと試合というか冒険者資格試験をした事はあるけれど。
学院の剣術大会は『キミミチ』で見たというか見まくったけど、ゲーム画面だからなあ。
あとは、鮮明なニッケル君の記憶。
「それでは、第一試合に進むのでライオネア・フォン・ゴールド、スズオミ・フォン・コッパー、こちらへ。審判は私こと聖魔法大導師が、実況と解説は大司教が執り行う。出場者残り二名は控えの場に」
ライオネア様とスズオミ君は浅緋さんの近く、地上闘技場の中心に。
金紅さんとアタカマさんは百斎さんと一緒に闘技場の端に転移移動する。
すると、わぁっという歓声が。
転移移動した先で百斎さんが立派な実況解説席と二人が休むには十分なテントを出したからだ……あれ?
『うん、天幕さんに協力してもらった』
リュックさん! やっぱり!
何故か自立している立派なミニ天幕。
あの座りやすそうな(実際使用者に合わせて材質変化してくれるからめちゃくちゃ座りやすいの!)折り畳み式の木の椅子も、元100均の椅子が立派になった椅子にそっくり!
うわ、アタカマさんの椅子、大きい!
そして演台、つまり実況解説席には音声拡張魔道具が用意されている。
多分、魔道具開発局局長ジンクさん謹製の最高級品だ。
うーん、剣術試合の観戦作法とか色々をニッケル君の記憶に頼るぞ、それで大丈夫かな? とか思ってたのに。
親近感、とか既視感、出てきたなあ。
「制限時間は1時間。場合によっては審判介入による試合中止もある。また、この地上闘技場全ての使用が可能。然しながら客席に移動した場合は場外負けとなる。ライオネア・フォン・ゴールドは強力な聖なる護符の使用を認められている為、身体保護魔法付与はスズオミ・フォン・コッパーのみである! 但し、武器への魔法付与は今、私が確認するこの場で一度、認める! 両名とも、武器への付与を。スズオミ・フォン・コッパーは身体保護魔法の付与も構わぬ。速やかに行う様に!」
いつの間にか、浅緋さんもマイクに似た音声拡張魔道具を使ってる。
『ご、護符ってまさか……。あ、すみません殿下、また念話飛ばしちゃった』
『いや、大丈夫。興奮し過ぎないでね』
『はい! でも真の姿のお母さんがいるから聖魔法飛ばしまくりな迷惑聖女候補にはならないですよ! 安心して下さいね!』
うんうん、まあ、セレンさんの気持ちは分かる。
迷惑聖女候補、って笑える。
それはそれとして……。
真っ白な縁台も絶対簡易台じゃないよね、って荘厳な感じだし。
そもそも、亜空間収納と人の同時転移とか、普通に披露して良いのかな?
ほら、アタカマさんは貴賓席と同じで備え付けられてるらしい水分を補給しながら笑ってるけど、金紅さんは苦笑いしてるよ!
いいの?
『私とは異なりまして意志を持たぬ天幕ですからご容赦下さい』
いや、天幕さんは協力してくれただけでしょう?
でも、意志を持たない、って事は、あの自立は百斎さんの魔力?
いや、もちろん、観客席の皆さんは次に控える団長副団長のお二人が見られて嬉しいだろうけど!
「大丈夫ですよ、ニッケル様。ほら、始まりますわよ。ライオネアもスズオミ様も集中しております」
あ、ナーハルテ様。ああ、癒される。
そうだ、私も集中集中! スズオミ君の応援!
闘技場では浅緋さんから試合直前、最終確認が始まっていた。
「最後に今一度注意事項を……」
本当の本当に、いよいよだ!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます