幕間-45 ダンスとあたしと心意気
「おい、黙って聞いてりゃあカバンシ、ネオジム。お前達はどうなんだよ、ダンスは?」
兄ちゃんの長い首の上で器用に叫ぶお父さん。
さすがは国内にただ一人の現役ダイヤモンド階級冒険者。体幹がすごい。
「え、私達は公の場で恥ずかしくはない程度なら。ね、カバンシさん?」
お母さんは少し浮遊してるし。
エルフ族の魔力って……。
一応あたし、多分国内最大級の聖魔力保持者の筈なんだけど、まだまだ適わないなあ。
『ああ。その通り。知っての通り俺達は長い年月を経ているからな。踊りの経験は多少は積んでいる。礼儀作法も言わずもがなだ』
「ずりい、ずりい! 何でだよ! ネオジムはともかく、カバンシは人型、人生だったらそんなに長くは経験してねえだろ!」
「長くはないその間でもカバンシさんは研鑽を積まれたという事でしょう? 練習は付き合ってあげるわよ。勿論パートナーも。何ならカバンシさんも如何?」
『そうだな。最近女性の人型変化はしてなかったから良いかもな。ハンダ、俺は人型の鍛錬の一環でダンスも嗜んだんだよ』
お父さん、ずりい、って……。
それより、女性化?
何それ、カバンシ兄ちゃん! あたし聞いてない!
「兄ちゃん、女の人? にも変化できるの?見たい! 男性型だと賢くて格好いいお父さんだから、今の頭脳明晰容姿端麗なお母さんよりもすごくなるの? え、どうしよう今までのお母さんと今のお母さんと両方とも、とか?」
『慌てるな、セレン。今俺が変化したら全員落ちるぞ。因みにネオジム殿の姿を借りる事は可能だ。まあ、お前に変化しても良いのだがな。そうだ、お前は練習時のパートナーを用意して頂けるのでは? ほら、聖教会本部からの公式伝令鳥が飛んできてくれたぞ』
カバンシ兄ちゃんがそう言うと、聖教会本部の公式伝令鳥である白鳥さんが。
特別な時のとっておきさんらしくて、精霊獣さんじゃなくて訓練を受けた選抜鳥さん達なんだって。
あたしも初めて見た! 感動!
黒鳥さんもいるらしいからそちらもいつかぜひ!
それにしても、竜の魔力を全開にした兄ちゃんすごいな。一瞬で聖教会本部に念話を送ったの?
『そうですよ、聖女候補セレン殿。貴女のお相手は最高の方々の内のお一人と言えるでしょう』
「本当ですか伝令鳥さん! もしかしたら聖教会本部のダンスの先生かな。うわ、緊張する! あ、でも先生、厳しいけど優しいし……」
『いえ、……殿です。あちらのご予定もありますので全ての練習でお相手をという訳ではございませんが、数日はご予定を空けて頂けます。そして、貴女が戻られたら練習自体は開始出来ます様にと大司教様、聖魔法大導師様が日程を組んでおられます』
え。……殿です。って!
「セ、セレン! 意識、意識ある?……ああ、大丈夫だわ。聖教会の聖女候補への保護魔法のおかげね」
ごめんなさいお母さん、心配かけて。
でも、驚きと嬉しさと色々が錯綜しただけだから。
意識はちゃんとあるから安心して!
とにかく、あたしは決意した。
戻ったら今回の任務の報告をバリバリこなす。
何なら聖魔法全開で! それから体調整えてダンスの自主練習!
絶対、絶対、ぜええったい、あの方の前でみっともないダンスは踊れないんだから!
もしも、あの方の長くて素敵なおみ足を蹴ったり踏んだりなんかしたりしたら、多分あたし、自分を許せない。
きっと……じゃない、絶対!
だから、頑張る!
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