231-合流の私達
「よっしゃ着いたあ! こいつら置いとく所は……ああ、あそこか。分かった!」
土煙から現れた最初の人影がハンダさんだった。
寿右衛門さんが方向を示して魔法で鍵を開けた倉庫と呼ばれる檻の中にほいっ、と連中を入れている。
「あいよっ、と!」
続いて緑簾さんが雑に残りを蹴り入れてから自分の魔力で鍵を掛けていた。
「はい、終了、っと。ありがとな、緑ちゃん。……ところで殿下。何であれ、あんな高い所にいるんだ?」
ハンダさんにこう訊かれた。
何故だ? の表情で、見上げながら。
確かに、何だろうと思うよね。
「ああ、まあ色々あって。……朱色殿、そろそろ降ろしてもらってよろしいですか?」
「ええ、第二王子殿下に感謝をなさいね。それから、分かってると思うけれど、今度こそ目測を誤るから、迂闊な事は言わない様に」
「……は、はい!」
うわ、スーツ幹部は涙目だ。
土にまみれて気絶したお仲間達を直に見たのも作用しているのかも。
あと、現れた元邪竜斬りさんと第三王子殿下の召喚獣の鬼さん。
お二人とも、間近で見たら迫力あるよね。
「遅くなったか? 申し訳ない」
それから、カバンシさんが丁寧に運んで来た六人とアタカマさんが大切に抱えていた七人とスズオミ君が注意深く運んでいた二人。
こちらの方達はリュックちゃんが出してくれた毛布の上にそっと寝かせる。
何と、枕代わりのクッションまで!
素晴らしい気配り。
更にナーハルテ様とセレンさんが浄化魔法と魔法と物理の防御魔法を掛けて、完璧ですね。
前者が土付き幹部他で後者が獣人さん達。
明白な扱いの差、だ。
「ありがとう、皆さん。こちらは漸く話をしてくれる事になったよ」
「父上、あからさまに落胆しないで下さい。王子殿下と茶色殿に対して不敬ですよ」
「うむ。……失礼いたしました」
『うふふ、副団長はフワフワでモフモフな茶色殿にお会いしたかったのね』
何故か気落ちしていたアタカマさん、どうしたのかな、と思ったら。
ああ、そういう事かと合点がいった。
ふわっふわの雀さんの筈だった寿右衛門さんがタキシード姿のイケオジだったからだね。気持ちは分かりますよ、うん。
まあ、どちらの寿右衛門さんも魅力的だから仕方ないよね!
教えてくれてありがとうございます、朱々さん。
「では、殿下。改めましてお願い申し上げます」
はい、始めますね、ナーハルテ様。
賢く冷静な第二王子殿下らしく、と。
「今救助されたここにいる獣人達、この人達がさっき言った特級品なのかな?」
「そう……だが、違う、ます」
「じゃあ、まだ獣人さんがいるって事だね。それはこの空間内?」
「……そうだ、です」
かなり答える気になったみたいだ。
「ネクタイピン、と首輪。これはここで作ったの?」
「はい……いいえ」
「……おい、殿下が訊いてらっしゃるのに、何だそりゃ。頭上に落雷落としてスッキリするか?」
「お父さ、ハンダ殿、落とすならあた、私も!」
「違う、……ます! ネクタイピンはここで、首輪は……頂きました! まとめ役に!」
そうか、本当の事を言っていたんだ。
『確かにな。残りの獣人はここにいる。精霊達が教えてくれたよ』
そうなの、緑簾さん?
『ええ、主殿、取り敢えずこの者もあちらに入れましょう。精霊に伺えば残りの救助対象者は保護出来ますので』
はい、寿右衛門さん。
それなら、これが良いかな。
「罪の者達に眠りを」
できたかな、闇魔法。
闇は静かな眠りをもたらす存在でもあるから、それを罪人に限定して効果を発揮する術式。
大書店から購入済の『闇魔法読本』で勉強しました!
「素晴らしいわ、殿下。あっちの連中も良く寝てるわよ。残りの人達が居る所と怪しい魔道具の作成場所は同じ場所らしいわね。あたくしも精霊の声を聞く事が出来るから」
朱々さんがこう言ってくれている、という事は、結構上手くいったのかな。
「あとは、人員の振り分けですな。殿下と私とでご相談の上に決めさせて頂きたいのですが、それで皆様よろしいでしょうか」
頷く皆さん。
さすがは寿右衛門さん、良い提案。
雀の寿右衛門さんがいない事に衝撃を受けていたアタカマさんもぶんぶんと首を縦に振っている。
そう、雀さんでも人型でも、寿右衛門さんは常に場を引き締めてくれるんだよね。
繰り返しみたいだけど、どちらの姿でも変わらずに素敵な敏腕召喚獣さんなのです!
(そして、私はえっへん! と、主としてこっそり胸を張ったりしてしまうのです)
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