228-説得になるかも知れない私達
「そうですわ、双方での情報共有を……殿下、失礼申し上げます」
さあて、どうしようかなと思っていたら、ナーハルテ様がネクタイピンの集音と伝達を向上させる魔法を付与してくれた。
「ありがとう、良い対応です」
ついつい見惚れそうになるけど我慢して。
大丈夫かな、私。
取り敢えず、これでこっちのスーツ姿が捕縛された事が伝わる筈。
両方の戦意を削いで、残りの人達と特級品とやらについて訊かないとね。
すると、向こうから音声が聞こえてきた。
「……おい、じゃねえ、あのう、そうなりますと俺達は、邪……じゃなくて、竜様の下敷きになるのではないでしょうか……?」
「あいつ……!」
スーツ姿が動揺しているから、この声はきっと向こうの幹部または似たような存在だろう。
「……まあ、そうなるな。いや、でもこちらの騎士団副団長のご令息はお心が広くていらっしゃるから、お前達が誠意を見せたら、もしかしたら竜殿にお願いして下さるかもなあ?」
あ、ハンダさんだ。
セレンさんが少し震えてる。これ、笑いを堪えてる?
という事は、もうあっちはほぼ制圧完了なんだね。何かハンダさんの考えがあるんだろうな。セレンさんには分かるのかも。
「……副団長閣下に似てな……いえ、激似の賢そうなお坊ちゃま! お願いします、奴等、いえ、彼等……の首輪の従属は解除する、いえ、……いたしますから、この錬金術を解いて下……さい!」
錬金術?
スズオミ君、何したの?
まあ、あっちも拘束できてる、と。
そもそもあのメンバーだから元々時間の問題だったけど。
あと、ここが肝心。解放しないといけない人達がいるんだね。頑張ってもらわないと。
『スズオミ殿と解放すべき方々をカバンシ殿が竜に戻られて移動されるおつもりと敵方に申されたのでしょう。ハンダ殿達であれば竜化の衝撃等は微風のごときでしょうから』
さすがの分析、寿右衛門さん。
ああ、それで向こうの多分幹部は潰される……って怯えてるんだ。
じゃあ解放するべき人達は安全だ。良かった。
「八方ふさがりかよ……」
あ、こっちのスーツ姿も青くなってる。
「それならばまず、保身ではなく王子殿下達が対応されているお前の仲間に諦めさせるのが先だろう? 決定権はこちらに在るのを忘れてもらっては困るぞ。そして、やるべき事を終えた後に扉の外の彼等を解放しろ。……話はそれからだ」
悪役令息スズオミ君!
無理してるよねこれ、絶対。
『似合わない……』
いや、分かるけど。
セレンさん、笑うのは我慢して。多分スズオミ君、自分は悪役令息、って思いながら頑張って演じてるんだから。
『……まあ、確かに無理があるわよね。ところで殿下、小さい子ちゃんがあっちの声に聞き覚えがあるって。爪を剥がしたのも恐らくそいつよ。あたくしが転移して燃やして来て良いなら、許可を頂戴』
小さい子ちゃん。
猫獣人の美幼女アベリアちゃんの事ですね。まだ私対面してないけど。これはセレンさん情報です。
そう、実はアベリアちゃんもこの場に居る。
リュックちゃんの中から出ない事を約束してもらって、怖いであろうこの場にも付いて来てもらう事になったのだ。
約束ですわよ、ってナーハルテ様と指切りしたんだって! 羨ま……じゃないよ私!勇気を出してくれた子の気持ちを尊重しなきゃ。
あと朱々さん、燃焼はやめて下さいね。
アベリアちゃんに不安を与えます。
『……確かに、燃やしたらあっという間よね。もっと痛めつけないと。分かったわ』
『そうですね、さすが殿下!』
え、さすが
「……やべえよ……多分本気だこいつ……じゃなくてこの方達。俺以外の連中は壁に埋まってる。多分このままだと竜様に踏まれてぺしゃんこだ。そっちも言われた通りにした方が……あとリー……ぶへあ!」
「……おい、どうした、おい? おい!」
……え、本当にどうしたの?
リー、ってリーダー? まだいるの?
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