225-戦闘が説得な私達
「うらあ、もらった一番手! 喰らえ、雷パーンチ!」
もしもし、セレンさん?
聖女候補さんの、しかも聖教会の礼服を召された方の台詞として大丈夫なのそれ?
まあ、相変わらずハンダさん直伝の技、冴え渡ってますが。
「まあまあ殿下、今日は任務第一にいたしましょうよ」
うーん、朱々さんが言うなら良いのかなあ。寿右衛門さんも泰然自若だし。
「おい、ちょっと待て! お前ら曲がりなりにも王子様とか聖女候補とかだろう? こんなやり方で良いのか!」
ビカビカビカバリバリバリッ!
ドカボゴオン!
ボボボーン!
ゴオオオン!
うーん、音と威力が凄い。
あ、もう完全に戦意喪失させてるね。
あと、その叫びには私も同意します。
雷パンチ、パンチというか弾けた砲弾? みたいだったからねえ。
あと、私も起爆札、かなり起動させたし。
多分炎の渦が朱々さんで、竜巻みたいなのが寿右衛門さん。
彼らにとっては多分唯一の良心的存在なのだろう、今ツッコまれなかったナーハルテ様も実は皆の魔法の追加効果をめちゃくちゃ底上げしてくれているからなあ。
そうそう、兄上が配備していらした起爆札、万が一、救助対象者がいたら……いやでも兄上だからその辺は万全だよね、と思いつつ少し心配してたのだけれど。
『あ、大丈夫だよ。ニッケル、君は多分薄々気付いてるよね、その通り。爆破対象は生物以外に絞ってるから。対物質の振動術式だよ。でも、連中にはそんな事は分からないでしょう? せいぜい怯えさせたら良いよ!じゃあ今度こそ、健闘を祈る!』
っていう留守伝が私が試しに起爆した後に聞こえてきたよ……。
これ絶対、王宮私室で私抜きで打ち合わせてたよね! 寿右衛門さん、黒白!
「……とりあえず拘束対象を狙いましょう」
『そうそう』
寿右衛門さん、黒白、ごまかしてない?
「そうです、リュックちゃま、捕縛です! まずは奥から順に! 手首又は足首でお願いします! きつめに!」
『はい!』
居酒屋関山の時と同じく、元100均洗濯ロープが大活躍。
私ではなくナーハルテ様の的確な指示に合わせて、朱々さんの背中のリュックちゃんが、何本ものロープを放つ。
「援護しましょう、朱々様!」
「そうね、紫色ちゃん!」
朱々さんの血族である紅ちゃんのご主人様セレンさんとご本人朱々さんは息ぴったり。
豪快な所も合わせ易いのかもなあ。朱色様、じゃなくて、朱々様って呼んでるし。
あ、私もお助けしよう。
起爆札さん達、よろしく!
……ズガボオン!
あ、多分今、いかにもな人達の半分位気絶した。
風圧による一時的な意識喪失を促す風魔法かな。
確かに爆破はしてないから良いのかも。
さすがは兄上。いつか術式を教えて頂けるかな。
「おい、どうすんだよ? 指示とかねえのか? もう特級品見付かるのも時間の問題だ! こっちにも魔法使える奴、寄越せよ? おい!」
多分、あのタイピン、コヨミ王国魔道具開発局謹製のとは全然違う安物だな。
魔道具品評会でギベオンさんのネクタイを飾っていたタイピンは、魔力の高い魔貝で細工を施した超一級品だったから比較したら螺鈿細工に失礼だけど。
そうでなくてもコヨミ王国の正規品ならあんなに怒鳴る必要はない。
丸聞こえだよ? まあ、私は黒白のお陰で小声でも聞こえるのだけれど。
模造品かな。
もし組織で作っている品だったら?
音声収集ネクタイピンは開発局が大陸全土に通用する特許権取得済だから。
「罪状追加だね。……ねえ、スーツの人」
「あ、何だコラア!……ぶへえ!」
「我が……問いに答えなさい」
我が主、って言いそうになったんだね寿右衛門さん。
イケオジちょい照れボイスがかわいいからさっきの内緒の件は不問に付します。
風魔法で両手両足のそれぞれの足首の拘束。手枷足枷が小さな竜巻みたい。
そのままで、かなりの高位置まで浮かされてるから多分怖いと思う。
「……宿舎、って言うよりは倉庫だよねここ。もう人、獣人さんはいないのかな。あとそのタイピン、買ったの? 作ったの?」
一応、丸太小屋みたいな小屋が幾つかあるから宿舎とは言えなくはないのだけれど。
多分、そっちはスーツ達の住処じゃないのかな。
「いる訳ないだろ……痛え!」
だよねえ。
だてに非属性じゃないんだよね私。
意識に直接作用する聖魔法。虚偽には厳しい。神経性の痛みだから、地味に痛い筈。
実は教えて頂いたりしています。
あの方、アル様に。
まだまだ、色々聞かせてもらわないとね。
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