第六章

223-転生したら大好きな悪役令嬢と大切な仲間達と共に悪逆非道な組織を壊滅するために突入する王子になった私

「第二王子? また来やがったのか! 何だその鼻眼鏡! それに今度の警護役は何か? はぁ、女とおっさんかよ? 英雄と邪竜はどうした? 見限られたか!」


 いや、人型寿右衛門さんはおっさんじゃなくておじ様! それも素敵なイ・ケ・オ・ジ!このタキシード姿が目に入らないの? 


 失礼だなこいつ。

 あと、ハンダさんは英雄で合ってるけどカバンシさんは邪竜じゃないから!

 それにこのフィンチ型眼鏡はイットリウム君が貸してくれた特別な物なんだけど?


 こんにちは、目下周辺国の獣人密売組織の倉庫(の筈)に転移して怒り心頭気味なバナジウム・フォン・カルノー・コヨミ第二王子殿下です。


 いや、実は認識阻害魔法を掛けたニッケル・フォン・ベリリウム・コヨミ第三王子なのですが。


 本当は第三王子のままで任務に就かせたいと考えておられた兄上だったのだけれど、変化による任務への参加、実は私が提案しました。


 それはつまり、あの王宮私室での打ち合わせで気になっていたことで。


「あの、この作戦の人員さん達だと、もしかしたら第三王子殿下が面と向かって連中にバカにされたりしたら、問答無用! 全員殲滅! とかになりませんか?」

 と兄上達にお話したのだ。なんだか、想像できてしまって。


 そうしたら、なんと寿右衛門さん自らが

『否定しがたいですな……』と。


 兄上も、

「確かに、僕も遠距離から局地的転移座標を構築して超特大魔法をぶつけてしまうかも」

 と考え込まれてしまい、結果こうなりました、という今のこの現状なのです。


 私的には、この変化作戦とても嬉しいんだよね。


 今も、それどころではないのだけれど、兄上と凄く近くなれた感じがしている。


 外見は兄上のご聡明さが溢れたそれをお借りしているけれど、薄墨色の髪と目に変化させた要素は魔力がかなりある人ならよく見たら分かるまとい由来のメッシュの黒髪なので通常のものよりもかなり深い認識阻害魔法になっているらしい。


 因みにナーハルテ様とセレンさんには第三王子に見えてるって。

 寿右衛門さんと朱々さんは認識阻害魔法を掛けるのを手伝ってくれたから当然だけど。

 黒白に確認したら他人からはばっちり兄上に見えてるって。


 まあ、この通り私は今第二王子殿下なんだけど。


 そうそう、現在進行形でこいつら皆さんの事を女、ってこれまた失礼千万。


 賢く凛々しく美しい我が最愛の婚約者ナーハルテ様と朗らかかわいい聖女候補セレンさんとしなやかなセクシー美人人型朱々さんだぞ?

 あと、朱々さんの背中にはリュックちゃん。この子も女性。誰が何と言っても。


 ナーハルテ様とセレンさんは聖教会の行動用礼服(パンツ型で自在に動ける高級品!)、朱々さんは執事服姿。 

 リュックちゃんは黒皮のリュック仕様。寿右衛門さんはタキシード!


 私?兄上から贈られたスリーピース(三つ揃え)のスーツです。

 寿右衛門さんに「完璧です」セレンさんからは「めちゃくちゃ王子様です! 最高!」と賞賛されてナーハルテ様には「お似合いでいらっしやいます」と笑顔を頂いたから絶対に素敵な王子様な筈だ。


「第二王子とおっさんと姉ちゃんの多分執事二人組と聖女候補が二人で多分一人は第三王子の婚約者だな、あの噂の筆頭公爵令嬢! 信じらんねえくれえにキレイだから間違いねえ! ああ、そうだよあのまぬけ王子の! あ? 今来てんのはあの賢い第二王子だよ運のねえ事に! おい、聞こえたか? どうすんだよ? 商品持って逃げるにも人数が足らねえぞ?」


 うーん、どこかに情報伝達してるのがあからさま過ぎ。

 組織として良いのかこれ?


 賢い王子様に聞かせたらダメじゃないかなあ。

 名乗らなくてもいいみたいだね。


 だったらこのまま進めよう。

 周辺国にもナーハルテ様の美貌や聖女候補セレンさんの噂や嘗てのニッケル君の事は知られてるんだなあ。


 ん、何だか周囲の空気が。


 魔力の……渦?


『『『『まぬけ王子……((ですか))?』』』』

 え、皆さんそこなの?


 いや、いいよ無視して!


 ねえ、こうならない為の私の変化ですよ?

 あいつが何処の誰と通信してるのか、とか確認しないといけないんじゃない?


 まあ多分、ハンダさん達が侵攻してる組織幹部連中の所だろうけど。

 あいつが一応は着込んでるスーツのネクタイピン、結構高度な通信魔道具だよね。


『あー、ダメだね。はい、せーの』

 え、黒白、留守伝? 兄上の声だ。


『はい、腹に据えかねる時に鳴らしてね、と殿下は仰せられました』


 バボコン!


 ドカン、なんてもんじゃない、轟音が。


『さすが、コヨミン様の兄上様。すごい魔法のお札』

 あ、もしかしたら起爆札?


 ええと、あの、扉が開いて空っぽらしい倉庫に何枚も張り付いてるやつかな?


 兄上、何を仕込んでらっしゃるの?

『前回は簡易宿舎というか、倉庫しか調べられなかったからね。第二王子殿下の確認の印として幾つも貼らせてもらったよ。かなりの魔力がないと剥がれないものだから。今回はそれこそ隅々まで、地下だろうが何処だろうが探れるから、活用してね。一度起爆したら、あとは殿の意思で起動可能だよ! 良い報告を待ってるね! これくらいは良いでしょ? 変化作戦を認可したのだから!』


 兄上、ノリノリの留守伝ですね。

 そして、殿下って言われました、よね?


 じゃあ私も起動させられるの?


『試しに、奥の倉庫に貼られているお札、起動して!』


 試してみたら。


 バボゴオン‼


 うわ、本当だ。


「何だどうした何しやがった!」


 うわあ、お約束にも程がある。


 ワラワラと現れた連中はいかにも、を絵に描いたみたいな感じ。


 スーツ姿は他にはいないから、倉庫の監視役かな。


 前回はハンダさん達が視界に入った組織関連っぽい連中を全員ボコボコにした筈だから新しく雇われたのか、組織が手配したのか。


「情報を持ってるのは最初のスーツだけみたいですね。とりあえずあの辺のはぶちのめして良いですか殿下?」


 うーん、セレンさん? 台詞が。


「セレンさん、とにかく殺さないで。動きを封じる。但し、一番は自分達の身を守る。以上!」


『『『『了解((致しました))!』』』』


 え。皆さんやる気全開?


 話し合い、とか……いいの?


 私、兄上に変化した意味、あったんだよね? 





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