217-魔法局副局長執務室内亜空間の『キミミチ』と私達
「ナーハルテ公爵令嬢、聖女候補に対する平民差別とは、我が国における最大級の愚劣なる行い! ここで第三王子たる僕との婚約破棄を……」
あー、うん。
やっぱりこれだよね一番衝撃的な場面。
ゲーム画面内キャラクター絵のニッケル君はやっぱりイケメンだなあ。さすがは1番の攻略対象者。
でも絶対
これは自画自賛。
寿右衛門さんの相変わらずの立て板に水の私の魂の転生に関する秘匿事項の解説。
そして、何処から聞いてもイケボ。
万が一に備えて聞いてはいけない人には聞こえないという制限魔法付与済だから、驚嘆しつつもしっかり背筋を伸ばしていたカントリス君はやっぱり資格を得たんだね、という事で、百聞は一見に如かずとばかりに『キミミチ』の上映開始。
私の腕から離れて映像水晶の代役をこなす黒白も偉いぞ。
多分、リュックさんを通じてスマホさん(名称未定)の力を借りてるんだろうな。勿論、黒白の地力があってこそだ。
ジンクさんが亜空間の屈折を利用して光魔法で作成した反射幕代わりの照射壁も美しく映像を捉えている。
寿右衛門さんと合わせたら聖魔法以外全て使用可能ってこういう事だったんだなあと感動。
「え、何で僕達、セレン嬢の隣にいるの……ですか? あと、リチウムは? 何処にいるのですか!」
ああ、うんそうか、そこなんだね、カントリス君的に許せない所は。
カルサイト君が分かるよ、みたいな感じでカントリス君の肩をポンポンした。
確かに
懐かしい。
ええと、確かイットリウム君攻略なら辺境区の医療活動ボランティアの際に聖魔法による絶大な治癒魔法の効果を示す、カントリス君攻略は計算大会(算盤大会とも言う)優勝だったかな。
カントリス君は算盤使用者相手に暗算で対決してたんだよね。あんまり深く考えていなかったけど、現実だと凄い計算能力だ。
そんな人が間違える……何故、と思えば繋がるけれど、逆に気付かないとそのままな今回の発見。
求者が狙ったのもそこだったのかな。
まさか、私の近くに優秀な人材を置きたい、とか?
断定は出来ないけどね。
あ、そうだ、計算能力と言えばセレンさん(こちらの)がそんな感じの事を言ってたなあ。
八の街でセレンさんと付き合いたい人を倒して諦めさせる為の手段、お母さんのネオジムさん相手だと計算勝負だったらしいけど、エルフ族の真価を発揮した今のネオジムさんだともう一般の人は勝負にすらならないんじゃ?
まあ、これから爵位を、とかになったらまた別の意味で色々あるのかも知れないけれど。
そうか、こういった部分は全然、どころかセレンさんの親御さんとか大好きな故郷とか、セレンさんにとっての大切な存在って『キミミチ』には描かれていなかった。
当然、強すぎる薬師さんも伝説の邪竜斬りさん(どちらもハンダさん)もいない。
元邪竜の肉体派にして知性派美形カバンシさんも。
本当に、『キミミチ』は誰がどんな風に制作会社さんに伝えたのだろう。
カントリス君の事も踏まえて、求者が『キミミチ』を知っているらしいことはやっぱり気になるよね。
異世界の高位精霊殿が、開発者さん達に夢の中で断片的に伝えたというこちらの世界の色々。
それが『キミミチ』なのだけれど。
あ、そうか。
コヨミさんもこちらの世界の情報を何らかの形で得ていたんだよね。
あちらで生きていた協力獣さんの頃の寿右衛門さん達だけではなくて高位精霊殿達とか、もしかしたら、劇とか本とか?
コヨミさんの時代ってまだテレビは無かったよねきっと。あっても時代劇とかニュースくらい?
ラジオかな、主流は。
『主殿、今はその件は置いておいて頂けますでしょうか。いつか必ずお話を。取り急ぎ、私はギベオン殿の所へ向かいます。羽殿とジンク殿とリュック殿と黒白殿がおられます故。すぐに戻ります』
ああそうか、そうだね寿右衛門さん。
今はまだ、なんだね。
じゃあ、きっと、鳥さんとか、色々も、なのかな。
『……はい。ご配慮に、深く御礼を』
そうか、そうだよね。
今、しなければならないこと。
それは、私のこちらでの大切な友人にあちらでの私と私が見てきた物語を知ってもらうことだ。
『時が参りましたら、求者に関しても出来る限りの範囲内にてご説明いたしまする。今は、これで。断罪劇場が終わる迄には戻ります。……それでは暫し』
うん、寿右衛門さん。
分かったよ。
今はそれで良いよ。時が来るまで、なんだね。
そして。
待っているから、断罪劇場が終了するまでには戻って来てね。
今、すべきことの為に、だよね。
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