216-魔法局副局長執務室内亜空間の私達

『恐れながら第三王子殿下、茶色殿、発言をお許し願えますでしょうか』


 取りあえず、と寿右衛門さんと私とでこっそりとカントリス君の靴下と靴下の足跡全てに浄化魔法、感知されない程度の微量の浮遊魔法、リュックさんの力で貴族階級が履いても支障がない内履きに変化した100均スリッパを足下へ転送魔法と以上三点の魔法を行使していたら、恐縮した様子の羽殿に声を掛けられた。


「大丈夫、話して下さい」


『このカントリス・フォン・マンガン伯爵令息は今回の印章箱の発見に派生しました夢渡りを経まして多大なる魔力を体内にて循環させるに至りました。また、妖精たる私が形成いたしました亜空間への転移を一人で成し遂げました事もこの者の進路検討に就きましてはご承知置き頂けましたら幸いに存じます』


 うんうん、やっぱりカントリス君は成長していた。


 うーん、と。

 単独転移の事、教えてあげなくていいのかな。イットリウム君は多分気付いてるよね。


「そうか、羽殿が言われるのであれば真実だろう。そうだ、カルサイト・フォン・ウレックス侯爵令息、君への手紙を。我が召喚獣たる緑には私かこの高位精霊獣たる茶色が必ず渡す故、カントリス・フォン・マンガン伯爵令息には了解してもらえるだろうか?」


 よし、舌を噛みそうだけど、何とか一息で言えた!


『誠にありがたく存じます』「「ありがとうございます」」

 揃って返答してくれた羽殿と二人。


 この場を仕切る殿下っぽいかな。

 大丈夫かな。


 ええと多分、カントリス君の編入の一助としてご一考願えますでしょうか、って事ですよね羽殿。

 私は監査さんじゃないけれど、今回のカントリス君、かなりの高得点だよね? 寿右衛門さん。


『ええ。我が主殿のお言葉のままに。お預かりいたします』

 カルサイト君への手紙を寿右衛門さんが運ぶ。


 郵便寿右衛門さん、可愛らしくて大好き。


 カルサイト君とカントリス君が深い礼。


 あ、カントリス君足下に気付いた。狼狽うろたえないのが偉いぞ。

 単独転移もそうだけれども成長が素晴らしい。


編入合格については学院長殿とも相談せねばならぬでしょうから、またいずれ。然しながら、我が主に関わります秘匿事項においては伝えてもよろしいかと。魔道具開発局局長ジンク・フォン・テラヘルツ殿、如何でしょうか』


「茶色殿のご見解に同意申しあげます。殿下におかれましては?」

「私も異論は無いよ。……でも」


『主殿、どうかいたしましたでしょうか』

 ううん、多分寿右衛門さんが気に掛けている所じゃない点に私が引っかかっただけだから。


 どうぞどうぞ。


『黒白殿、映像水晶に代わる媒体になって頂いてもよろしいですかな』

『勿論です』

「では、反射幕代わりの照射壁は私が」


 あ、この流れ。


 うん、私としては楽しみなのだけれども。


 大丈夫かな。カントリス君、また気を失わないといいなあ……。








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