197-アルミナ様とライオネア様と私

「私の友人でもあるカントリスの問題にご対応頂き本当にありがとうございます。第二王子殿下、私の兄がご当主のご令息の事を懸念されていた事は存じておりましたが、全てをまとめて対処して頂けるとは」


「良いのですよ。それよりも、第三王子殿下とライオネア様と息子との集まりにお邪魔をしてしまいましたね。よろしければお二人でお話になられては? 人払いもしてありますし、私は別の居室に参りますよ」


 あ、いえ、正直ライオネア様と二人きりは緊張しますので。寿右衛門さん、今いませんし。

 それに元聖女候補、現在は聖教会聖魔法専任講師資格保持者であられるアルミナ・フォン・コッパー様とも聖魔法のお話をしたいです。


 ライオネア様はどうなのかな? 緊張されていたよね。


『アルミナ様は本当にお強い方であられるので緊張しますが、敬仰の念は有して余りある方です。茶会と言うことならば是非に。無論、殿下のご意志のままになさって下さい』

 うーん、超絶イケメンなお顔と念話。

 語彙もだね! それじゃあ私が決めちゃいますよ!


「それではアルミナ様、ご予定がよろしければご同席下さい。私達もお話を伺いたいので」

「まあ、嬉しいですわ。よろしければ口調も自然になさって下さい。息子のご友人として。ご心配ならば宣誓もいたしますので」

「あ、嬉しい。楽な口調助かります。宣誓はいりません。ありがとうございます」


「では、次のお茶は私が。それから私が経営権を有しているからという理由ではなく、真にお勧めの店の焼き菓子です。よろしければ」

 こういうのをそのまま言われるのは、本当に楽にして良い、って事だよね。


 栗とサツマイモだ、これ。

 お城の形の焼き菓子、美味しい!


 あ、コヨミ王国ではお城とかの意匠は余程の物でなければ申請があれば使用可能です。

 例えばケーキ、クッキー、塗り絵とかも大丈夫。本当に余程じゃなければ。


「では、自分も。、ご無沙汰しております」


 へ。

「殿下には自分の魔法をほぼお見せしていませんでしたね。アルミナ様は自分に諜報の伝令鳥、の作成や身体の治癒魔法を教えて頂いた方なのです。弟子希望者が多い方であられる為、弟子として頂いた事は公にしてはおられないのですが。勿論、ナーハルテは存じております。師匠、ご婚約者でもあられますし、殿下でしたらよろしいですよね」


「勿論よ。私はいくら希望されても、自分で選んだ人しか弟子にはしないのよ。金紅ちゃんとアタカマ君も元々はお弟子さんみたいなものなの。王立学院や士官学校で教えていたのよ」


 金紅騎士団団長閣下と旦那様副団長閣下アタカマさん。

 成程、アタカマさん、それは頭が上がらない筈だ。


「あ、じゃあもしかして、千斎さんとかはお知り合いですか?」

「ええ。私は百斎様に師事していましたから。あの方も漸く上級大将になられましたわね。殿下のお陰です。本当は騎士団団長に、と周囲から言われ続けていらっしゃったのですよ? 邪竜封じの褒章も有り余っておられますのに。しかも、上級大将位すら拒否されていて」

 あ、それなら、もしかしたら邪竜封じの事も伺えたりするのかな。


「殿下、それは落ち着かれましたら是非大書店でお調べ下さい。貴方様でしたら千斎様もお許しになるでしょう。正面から訊かれたら許諾はされない方ですから、もし何かございましたら私の名前をお出しになれば宜しいですよ」

 え。読心術だ、これ!


「ありがとうございます。心強いです」

 うーん、すごい読心術。


 多分、読心対象が伝えたくない事には制限を掛けてあるのだろう。私が考えた内容、全部アル様にお訊きしたい事ばかりだもの。


『ご明察です。ですが、対象を裁く場合等は強制的に、ですよ』

 凄すぎて、もう何も言えません。


 そもそも、専任講師アル様は聖魔法界では高名なお方。

 何となく、素敵なおばあちゃま的な方を想像していたからね、私。

 いつか聖教会本部に講義にいらして頂けたらなあ、とか思ってたんだよね。

 いや、ご本人穏やかな雰囲気の素敵な方ですよ?


「実際、結構な年齢ですものね。殿下がよろしければ、聖魔法の手ほどきもいたしますわよ。師匠に許可を得ましょうか? ナーハルテ様とあの聖女候補さんも、中々見所があるようですね」

 またまた驚愕。


「嬉しいです。けど、論文で憧れていた方にいきなり直接教えを、とは正直現実味が。寿右衛門さんと相談させて下さい」


「それが良いですね。マンガン伯爵令息関連の情報につきましては茶色殿が辺境区から戻られましたら共有させて頂きますので後からお訊きになって下さい。茶色殿には、筆頭公爵家マキ殿からの情報、ライオネアの母君からの内外社交界からの機密事項も共にお伝えします」


 またすごい面々ですね?

 お礼はどうしよう。寿右衛門さんが戻ったら、かな。


「そうですわ、茶色殿がご用意下さったお茶菓子のうち、市場に出す事をお許し頂けますものを無論権利等は殿下の物といたしました上で私の権利下にございます店他に販売させて頂くというのは如何でしょう。勿論、茶色殿が帰られてからのお話ですが」


「あ、いえ、お煎餅もクッキーも全部こちらで作れるお茶菓子しか出されていませんから良いと思いますけど、それ、お礼になりますか?」


「「え」」

 え。

 久々に私、やっちゃった……?


「ライオネア、今は師として敬称を略させて頂くけれど。……殿下は、いつもであられるの?」


「……はい、師匠。然しながら、婚約者のみならず国民に害を為す者に対しては勇を以て対され、何事にも真摯に取り組まれる努力家であられます事は僭越ながら自分が保証申し上げます」


「……そうね、婚約者を大切に、そして民も。それは恐れながら王家とそして筆頭公爵家からも伺っておりますし、魔力や魔法の存在しない世界から来られたとは考えられない魔力とそのご活躍。……分かります、分かりますよ。……良いです、これは茶色殿とご相談申し上げましょう」


「お願い申し上げます、師匠」


『『茶色殿、早く来て下さい』』


 黒白達まで? え、やっぱりそうなの?


 寿右衛門さん、いつもいつもお世話をお掛けします。


 そして、ごめんなさい。

 やっぱり、今回も皆で貴方をお待ちしてしまう結果になってしまいました。


※アルミナ様の聖女候補時代のお話は異世界短編『聖女候補は婚約破棄調査員です!』に書いております。

名前は明記しておりませんが、アルミナ様の若き頃、聖女候補時代でございます。よろしければご一読下さい。


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