195-アルミナ様と私

「そろそろよろしいのでは? 必要ならば私が精霊王様直参高位精霊獣直弟子の地位において願いますが」


 息が詰まりそうな舞台みたいな空間。

 多分、30分以上は経過していた。

 ありがとうございます、寿右衛門さん。


「ご配慮を誠にありがとうございます。第三王子殿下、よろしいでしょうか」


 目線を合わせずアルミナ様に言われたので、お願いですから普通に楽に、の本心を出さない様に注意しながら、


「謝罪は受け入れよう。故に、とにかく楽に。これはコヨミ王国第三王子ニッケル・フォン・ベリリウム・コヨミの言葉である」

 ……言えた! 良かった!

「「「ありがとうございます」」」


「では、アルミナ様。どうぞこちらに」

 ありがとうございます、ライオネア様。


 何と、アルミナ様のお手を取ると同時に清浄魔法を掛けていらして、まあ、絵になる事!


「取り急ぎ、こちらを」

 寿右衛門さんが最高のタイミングで提供したのは、ハーブティーかな。良い香り。

 

「コッパー侯爵、副団長殿とご令息には辺境区にて多少の労働をお願いしましょう。騎士団団長殿には許諾を得ております。無論、その後は侯爵のご随意に」

「高位精霊獣殿、ご配慮を有難く頂戴いたします。二人とも、現地では第三王子殿下の召喚獣殿並びに聖女候補嬢のお母君、ネオジム博士に従う事と心に留めなさい。着替え等、必要な品は後から送ります。アタカマは後日、辺境伯閣下に必ずご挨拶を。連絡は両日中に私がしておきますので。スズオミは多少あちらで過ごしても試合までは1、2週間は猶予がありますから色々学んでいらっしゃい。……では、お願い申し上げます」


「ええ、失礼ながら後はお任せ申し上げます。すぐに戻ります故。ああ、私の事は次からは茶色、と。主殿、皆様方、行って参ります」

「「行って参ります、第三王子殿下」」


「……ええと」


「ニッケル様、この度の拙宅での茶会は、マンガン伯爵令息に関わっておりました貴族の女性の方々、子女達に私から忠告をしました私、侯爵家当主へのご褒美となっております。よろしくお願いしますね。元聖女候補、現在は聖教会聖魔法専任講師資格保持者アルミナ・フォン・コッパーに存じます」


 え。

「まさか、あの、専任講師アル殿ですか? 論文集、拝読しました! 自費で購入もしてます! 署名を頂きたい……のですが、名前を記すのはダメですよね?」


「大丈夫ですよ、あくまでも書物の飾りとしてのみ記しますので。……あら、素敵な皮鞄の魔道具さん、ありがとうございます」


 あ、皮鞄バージョンリュックさん、『聖教会聖魔法論文集-専任講師アル編(1)-』と、筆ペンのこちらバージョンをスッ、と。さすが!


「ええと、私の職と名を記せば良いでしょうか」

「あ、ニッケル君へ、も可能でしたら。うわ、美しい文字! あ、これ……良いのですか?」

 宛名はさすがにニッケル様へ、だった。でも嬉しい。お名前と聖教会本部でのご職業と、あと聖魔法の術式?


「ニッケル様のみ使用可能な制限付聖魔法ですわ。後で解析なさって下さい。使用許可は解析と同時に貴方様に。……それに、貴方がいらっしゃるから大丈夫ですね?」

 あ、視線が腕の黒白に。絶対色々バレてる。

 でも、やっぱり感激! ありがとうございます!


 これは分かり易くて為になると有名な聖魔法集。

 発行は40年程前なのに、まだ毎年印刷されているくらいの人気本。


 私は寿右衛門さんの許可をもらって大書店支配人さんから初版本を購入しました!嬉しい! って、あれ?


「ああ、聖魔力所有者にはよくございます事です。私は今年、70歳になりますわ」


「アルミナ様は本当に、自分よりもお若いご様子であられます」

「ライオネア様、それは大切なご友人方以外の女性には言ってはダメよ? あとは、お母様だけにしなさいね」

「はい、勿論です。……ああ、第三王子殿下、お茶菓子の給仕でしたら自分がしますのに」


 我が家最強、らしい事をスズオミ君が前に言っていたなあ、と思いながら私はライオネア様と自分のお茶、皆さんのお茶菓子の準備。


 ほぼ完璧な寿右衛門さんの下準備に従っているだけ。


 ライオネア様がこう言っているけれど、譲りませんよ。


 多分私、獅子騎士様自らの給仕、眩しすぎて耐えられませんので。


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