第五章

193-お茶会の王子様ではなく壁になりたい私

『主様、とにかく私がおります故』

 はい、お願いします、貴方が頼りです寿右衛門さん。


「王子殿下、本当に申し訳ない。自分も持ちうる力の全てを以て、全力でお守り申し上げます」


 はい、ありがとうございます。

 こちらは目に栄養、な超絶イケメンパワー。

 金色の獅子騎士様、ライオネア・フォン・ゴールド様。


「……本当に、どの様にお詫び申し上げたら良いのか。面目次第もございません」

 もう一人は、多分このまま私が何も言わずにいたら土下座でも始めるのではないかという様相の爽やか美青年、スズオミ・フォン・コッパー君。


 そして、私が異世界からの魂の転生者、暦まといこと現在は第三王子殿下ニッケル・フォン・ベリリウム・コヨミ。


 私達がいるのは、コッパー侯爵家のタウンハウス。

 皆揃いの王立学院制服姿。一応ライオネア様は女子学院生用のパンツ型なのだけれど、多分この中で一番イケメン。

 ただ、私達もかなりのものだと思う。多分うぬぼれてはいない。


 こちらのお二人、スズオミ君とライオネア様は婚約解消を前提とした試合を年度末に控えてはいるものの、友人としては気の置けない間柄。

 私ともすごく仲良し。特に問題なし。


 溢れる思いは前世から、な我が愛しの婚約者ナーハルテ様は現在辺境区で医療任務に従事中で、本件も連絡済み。

 しかも、今は頼れる魔道具、黒白と白黒で直接連絡が取れるのです!

 そもそも、伝令鳥たる高位精霊獣寿右衛門さんがいるから心配は無し! なのだけれどね。


「せめて、ナー姫がいてくれたら。自分にはどうも、あの方を抑えるのは正直、自信が無い」

 出ました、ライオネア様のナー姫呼び!


 たまにだけれど、本来はお二人だけの秘密の呼び方なこちらもして下さるんだよね、私の前でも。気の置けない存在と思って下さっているのだなあ、と状況的にはダメなのに内心では喜んでしまう。

 因みに私はナーハルテ様のことをナー、と呼びます。お忍びの時に。


 それにしても、自信が無い、と断言されるライオネア様はかなり希少だよね。


「ごめんよライオネア。ただ、ニッケル様を僕だけでお守りするのは難しいから、正直有難いよ。……全く、父上が勝手な事を……」


「まあまあ、スズオミ君。私も確かに君のお母様、侯爵家のご当主にはお会いしたかったから。ただ、突然すぎだよね。手土産も無しで良いのかな?」


「……正直申し上げまして、第三王子殿下を無理にお呼び立てしておりますから」


 そう。

 最近の私はカントリス君関係でナイカさんとカルサイト君、リチウムさんとはすごく頻繁に会っていたのだけれど、ライオネア様とスズオミ君には中々会えていなかったのだ。


 あと1週間でナーハルテ様達が、その2週間後にネオジムさんとセレンさんが戻ると予定が決まったので、私、ライオネア様、スズオミ君の三人で久々に会いたいねときちんとした形で予定を合わせたのである。


 そうしたら。


『まさか、騎士団副団長殿が奥方様にその話をされて、奥方様が私も殿下にお会いしたいわね。と仰って』


「父が騎士団団長殿に土下座して、ライオネアに話を伝えて、王子殿下には当日令息たる僕から伝えさせるとは……」


 あらら、スズオミ君、また悩み出した?

「やっぱり、今からでも!」


 席を立とうとするスズオミ君を取り敢えず魔法で止める。

 スズオミ君も転移陣なしの無詠唱での転移魔法、割と使いこなせてるんだよね。すごいけど、今はよくないよ。


 私が使ったのは、聖魔法の無害な拘束魔法。便利。

 百斎さん浅緋さん、私、寿右衛門さんのご指導の下、中々になってきたみたいですよ聖魔法。お二人からの参考文献も素晴らしかったです。


「さすがですわ、第三王子殿下。初代国王陛下と並ばれし非属性に連なられたる美しき聖魔法。……ご尊顔を排せます栄誉に心より御礼申し上げます。コッパー侯爵家当主、アルミナ・フォン・コッパーに存じます」


 多分手編みであろうレース編みに縁取られた襟飾りの繊細さ。高級な生地のワンピース。

 どちらも、ご本人の品性と存在感、理知的なお美しさが無ければ、これ程落ち着いた印象にはならないだろう。


 正直、人によってはこの服装が本人よりも勝ってしまう、そんな品々。

 装飾品も落ち着いた真珠なのに、込められた魔力が違う。付ける人を選ぶ装飾品だ。


 つまり、それらの品々に許された方。


 正直、私はお茶会の王子様でいるより、壁になりたい。

 ご当主とライオネア様とのやり取りを静かに見守っていたい、そんな感じ。


 王宮で母上、女王陛下にお目にかかったあのお茶会よりも緊張していますよ。


 いや、さすがにそんなことは言えないし言わないけどね!

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