192-寿右衛門さんと私達
『……ただ今戻りましてございます。黒白殿は魔力の安定の為、あちらにお預けしております。……お二方への対処はお任せ下さい』
待ってました!
あ、寿右衛門さん人型だ。うん、やっぱり素敵紳士。
ほんの少しだけ垂れ目な所も良い。そして、ツイードのジャケットが激しくお似合い。紳士でお茶目な秘書様か執事様かって感じ。とにかくイケオジ!
「あ、あの寿右衛門さん、また辺境区に戻るならイットリウム君に手紙を書いて良いかな? 勿論必要なら内容は確認してね。封をお任せするから」
人型寿右衛門さんは私に対しては如才ない、優雅な動作。
「畏まりました。あ、お土産もございますのでまた後ほど。さて、お二方、お覚悟は?」
私との会話の後でお二人に向き合う寿右衛門さん。
あ、お二人の内のもうお一人は世界一の聖魔法使い(仮だけどほぼ確定的)、聖魔法大導師であられるお方、浅緋さん。お話をすれば聴衆は涙に震え、魔法を用いれば感動の嵐、なもうお一方。
ただし、今は人型の高位精霊獣殿によるお説教開始間近です。
「あ、待って茶色殿。私はあくまでもコヨミ様のご提案の素晴らしさをお伝えしたくて!悪いのは浅緋の方!」
「何を言うか! 茶色殿に留守の間をお守りする役を頼まれたのは同じであるのに百斎、先に転移しおって!」
「……次回のコヨミ様を偲ぶ会にはお二人への誘いは無しと。それから、主殿と行く大書店ツアーもお二人は不参加です」
「「そんなあ!」」
「主殿が気に病まれるといけませんから、大書店からお二人への書物を受け取る役目は負いましょう。希望書、または希望系統を記しておいて下さい」
主殿と行く、って何?
あくまでも目的はナーハルテ様との大書店デートで付き添いの千斎さん百斎さんと魔馬インディゴとセレンさん達いつものメンバーでお買い物、じゃなかったの?
でも多分、ここ訊いたら面倒くさい事になるパターンだ。
『そうそう。余計な事は言わぬが花。はいお手紙セット』
いつの間にか準々貴賓室内に備わっていたライティングデスクはモノトーン調で格好いい。
その上に封筒、便箋、ペガサス郵便切手まで揃えてくれたのはリュックさん。
木目調のこの部屋にもアクセントみたいに馴染んでて、何故かあちらで一輪先生が好んでいたデザインブランドの雰囲気に似ているのは……まさか、リュックさん作ってくれたのかな? とはまだ訊けていない。
でも、机も手紙セットも有難く使わせてもらいます。
そう、実は文用の、って言えば良いのかな? 載せられたトレイも揃いなんだよね。
私のあちらでの愛用品も、きちんとこの世界の仕様に変化して収納されている。嬉しい。ハイパー専用の素敵なブックスタンドもあるよ。本とかを増やすのは構わないみたい。
「それではしばし、御前を失礼申し上げます。……空間は確かに掴みましてございます!お二人とも、百斎殿の執務室に転移しますよ!」
「「はい……」」
多分、浅緋さんの転移する秘密の執務室と同じで大司教様の秘書官さんも知らない亜空間の執務室だ。
さすがは寿右衛門さん、今日の転移座標を指示無しで自身で見付けてしまうなんて。
「いってらっしゃーい」
あっという間に寿右衛門さんとお二人は転移。
『あ、お茶を新しいのにして下さってますよ』
『うん』
え。あ、本当。良い香り。お花のお茶だ! 底の方で白い花が揺れている。
辺境区名物の焼き菓子も添えられている。すごいなあ、寿右衛門さん。
「手紙が書けたらゆっくり頂くね」
『うん』『はい』
平和だなあ。
やっぱり、寿右衛門さんがいてくれると安心感が違うよね!
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