184-リュックさんとの飲み会と私
うーフンフン……。
『……はい、どうぞ』
あちらの義務教育で一度は耳にするであろう海を題材にした歌を鼻歌で歌っていたら、リュックさんがビール瓶と多種おつまみを取り揃えて出してくれた。
栓抜きその他諸々も併せて。
寿右衛門さんと黒白は私が作ったナーハルテ様への差し入れ(卵焼きのハート型は寿右衛門さんに訊いてからにしたよ? 一つなら良いでしょう、やり過ぎはなりませんよ、って言われたからちゃんと従ったよ!)と皆さんへの差し入れを持って雀便としてお使いに行ってくれた。
何でも辺境区域には海(良いなあ!)があるらしくて、黒白に海を見せたいと寿右衛門さんに言われたので快諾した。
だから、今聖教会本部準々貴賓室には私とリュックさんとハイパーだけ。
部屋が広い。
改めて見ると、葉と花が組み合わされた柱の文様とかの細工が精緻だなあ、さすがは準々とは言え貴賓室だよなあ。とか、海、いいなあ、とだらだらしていたら、『付き合うからどうぞ』と色々出してくれたリュックさんは優しい。
ハイパーも付き合ってくれるの?
書棚から飛んで来てくれた。ありがとう。
『このくらいならいいと思う』
そうか、リュックさん、あちらのマンションの鞄掛けから私とお姉ちゃんの飲み会見てたから酒量も大体分かってるんだね。
『チェイサーの水も』
ミネラルウォーターの瓶。重ね重ねありがとう。
『ユーザーコヨミンはたまには『キミミチ』をやりたいのでは?』
あ、びっくりした。ハイパー?
私の事ユーザー、って。
あ、そうか。元は超豪華設定資料集だから。
こういう時ならユーザーは無しでも良いからね。そもそもハイパー達の念話って限られた人にしか聞こえないし。
あと私、『キミミチ』をやっていた時、名前変えないでセレンのままだったから、それもあってユーザーなのかな。
『その辺りは修行中のスマさん殿? とも相談してます』
『よろしく』
ああ、スマホ……スマさん(仮)と。
って、私を置いて、リュックさんとハイパーが仲良し。
まあいいや、スマさん(仮)もリュックさんの中で頑張ってるみたいだから。
ビールも美味しい。
あちらとこちらの瓶が混在しているのも飲み比べみたいで楽しい。
『……少しだけ、繋がったみたい』
へ?
リュックさん、今日の色はイメージチェンジの白。
シンボルのシマエナガさん似マークが光ってる?
少しですが繋がりましたな。
やったあ、あたし凄い!勿論ナーハルテ様の補助魔法もの凄い!
……?
これ、寿右衛門さんとセレンさん? 音声なの?
ほら、ナーハルテ、何か!
あ、はい。……第三王子殿下、ナーハルテです。
朱々さんと……ナーハルテ様。
いいなあ、楽しそう。
『何かお返事』
「え、「君の瞳に乾杯」……とか?」
ビール瓶を掲げて、光るリュックさんを見たら
『……茶色殿、フォローよろしくお願いします。説明はしておきます』
……え、これは念話? 何。何か間違えた?
リュックさんが言うと、分かりました、こちらは大丈夫ですよ、むしろ、好印象です。と寿右衛門さんの声。
『……良かったね、コヨミンさん』
『……
お姉ちゃんもチュン右衛門さんに憑依してた白様に感じていた感想みたいだけど、理系人間には難しいからねその表現!
居酒屋関山の時の雅量とかもだよ。
あ、開いた所に書いてあるね。教えてくれるんだ、ハイパー。優しい!
落花流水の情、男女が互いに慕い合う気持ちを持っている事の例え。
成程……え、まさか、あの乾杯、って辺境区に通じてたの?
リュックさんが既存録音からの音声サービスをしてくれたとかじゃなくて、本物だったの?
『……大丈夫。映像水晶劇場で多分あちらの映画をご覧になっているからご存知』
え、映像水晶の画像って名作劇場、あるの?
あちらのホームシアターみたいな感じ?
凄いね!
じゃなくて! もっとなんか、本当に繋がってたなら婚約者の王子殿下らしい事言いたかった!
『え、王子コヨミンさんらしかったよ』
『うん』
ああそうですか、そうですね。どうせ格好よくはいきませんよ!
良いです、もう、飲みます!
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