171-聖教会本部の魔馬さんと私(1)
「さっき茶色殿が言われた通りで、ジジイ曰く、あの例の指輪とかの力で偽装してたギルド所属のエセ冒険者共は大体処罰できたんだけど、辺境区域にはいくらジジイとは言えすぐには人をやれなくて困ってたらしい。その中で最近のポコポコ出て来た指輪とかだろ?それなら俺らが行ってやるか、って緑ちゃんとも話してたんだよ。ほら、この間。黒白には世話になったなあ、ありがとよ」
「そこに、騎士団魔法隊と魔道具開発局が内々に話し合われた結果、辺境伯閣下からのご依頼という形になった様です。この件については医療大臣閣下にも間に入って頂きました。辺境伯閣下は準伯爵位をお認めになる程にハンダを評価しておられますから」
「そうね。医療チームの派遣は年間の恒例でこそないものの、大切な活動ですし、大々的に行えるのは良い事です。そこに、第三王子殿下のご活躍に心酔したり勘繰ったりといった騒がしい連中への牽制を込めて第二王子殿下が赴かれて……」
「夫の爵位授与に伴う娘の婚約等に関する牽制も行えれば、といった所でしょうか。この父故たるこの娘、不肖この私も妻として母として、そしてカバンシさんの家族として、我が家族が一丸となった所をお見せいたします」
「お母さん、いつもキリッとして素敵だったけど益々素敵! て言うか、あ、じゃない、私も婚約者さんとか本当に必要になるんですか? 確か恩賞の爵位って一代じゃ?」
聖教会本部の魔馬さんの所に移動するのは一瞬なので、取り敢えずもう隠す必要もない事は、と少し作戦会議。
ハンダさんカバンシさんカクレイさんネオジムさんと、皆さん的を射た発言の中、セレンさんの一言。
ハンダさんとカバンシさんと緑簾さんのお話はハンダさんが謝意を示して下さった通り、黒白もお手伝いしていたあれですね。
私の魔道具、相変わらずの大活躍。嬉しい。
『この場合は辺境伯閣下ないしは辺境伯爵家がお認めになる限りは続く特別な爵位となるかと存じます。ハンダ殿が爵位を望まれれば、授与も通常よりは早くに行われるかと』
そこにさすがの寿右衛門さん。
私はリュックさんにお茶菓子を出してもらって、冷茶のお代わりを皆さんに注ぐ。
懐かしいな、この感じ。あちらの秘書時代を思い出す。
「貴族位を俺に……すっげー嫌なんだけどな! そもそも貴族とか俺に全く! 似合わねえし。けどまあ、その求者? ってのとか、セレンの聖魔力を狙ってる連中に対する圧にはなるかもな。でも、なんかその求者は、セレンのことをどうこう、ってバカ共とは違うみてえだけど。あと爵位授与から逃げたのに延期? 猶予? か。にして下さった王宮の方々と諸々認めて下さった辺境伯閣下には俺も敬意を持ってるからな、一応。セレン、婚約者はどうしても嫌ならカバンシか緑ちゃんにしとけや。お前が誰かを選ぶのが嫌なら仕方ない、って言ってくれるさ。なあ、カバンシ?」
「ハンダよ、婚約の話は今でなくとも構わぬだろう? それよりもお前は特例として辺境伯閣下への自由なお目通りと辺境区内への無許可での転移陣使用が認められていたな。折角だからこの機会にご挨拶に伺え」
求者! と、ムキー、としかけたセレンさんをなだめながら、カバンシさんが言う。
「……第二王子殿下でさえ通信なのにか?」
「辺境伯閣下は王宮への拝謁さえ余程の時以外は免除されている方だから、許可がある貴方が第二王子殿下を置いてご挨拶に伺うのは問題ないと思いますよ」
カバンシさん、ハンダさん、カクレイさんがこう言われる辺境伯閣下。
四大公爵の一角でありながら、誇りを持って代々辺境を守護されている方。
いつかお会いする事ができるのだろうか。
『主殿、実は初代辺境伯殿が偲ぶ会を主催されたのですよ』
え、そうなの? 初代様が?
あ、この念話はカクレイさんにしか聞こえていないやつだね。カクレイさんだけが頷いた。
『そう。初代辺境伯閣下は偲ぶ会を作られた方でいらっしゃるの。お仕えした者達が悲しむ様を異世界と空とからコヨミ様が嘆かれぬ様に、と。だから第三王子殿下がお会いになりたいと望めば当代様はお喜びになると思いますよ。ただ、お話は白様がされると言われていたから、まだ難しいですわね』
カクレイさんも制限付きの念話で教えてくれた。
確かに、白様は今、ナーハルテ様の長姉様の嫁がれる予定の大国で大事なお仕事の最中ですからね。
お伝えする内容は同様でも友好国とは言え外国の大国と国内の辺境伯閣下では差異が生じるのは無理もない。
ただ、いつかは辺境伯にもお会いできそう。期待大。
「まあ、こんな所か?」
「それじゃあ出発? 第三王子殿下、お見送りをして下さるんですよね? 一緒に
セレンさんはもう求者! ではなかった。良かった。
月白。月の色を感じさせる白の中に薄い青みを帯びた色、だったかな。
神秘的な感じなのかな? ちゃん、って事はインディゴとはまた違った魅力のある魔馬さんなのだろうか。
インディゴの様なワイルドな感じでちゃん、だったら、またそれはそれで惹かれるのだけれど。
とにかく、楽しみです!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます