169-コバルト家の皆さんと私
『あら、茶色殿。この魔力を感じていらしたのね、ようこそ。お茶は玉露、かりがね、煎茶、ほうじ茶、どれにいたしましょう?温冷どちらもご用意できましてよ。それとも紅茶かコーヒーにいたしましょうか。紅茶とコーヒーでしたらお好みを仰ってね』
え。かりがねって茎茶の事だよね? そんなに種類が?
多分、リュックさんの中にまだあるよね、あちらのお茶っ葉。後で探してカクレイさんとお茶の品評会をしたいな。
って、違う! いや、品評会はしたいけど!
確かに、医療大臣閣下の執務室内にはかなりの高魔力が存在する。
でも、コバルト家の皆さんにはお会いした事があるし、皆さん強力な魔力保持者だから、分かるはずなんだけど。
お母様のネオジムさんも割と高めでいらしたよね。
ハンダさん、カバンシさん、セレンさんに。
え、どちら様?
「ご無沙汰しております、ネオジム-コバルトに存じます。本日は斯様な姿で失礼申し上げます。先般は仮の姿で第三王子殿下並びに伝令鳥様にお目もじ致しました事、平にご容赦下さいます様にお願い申し上げます」
ピシッと伸びた背筋、綺麗な礼とこの声。確かに既視感が。
だけど、ネオジムさん? なの?
相変わらず良い仕事をしてくれるニッケル君の王子様素養のお陰で動揺を表に出さずに済んだけれど。
これ、驚いて良い所だよね?
「……高祖母が医療、財務両大臣閣下と同郷のエルフ族でございまして。所謂先祖返りかと。厳密には異なりますが、ハーフエルフの方達のように捉えて頂ければと存じます。もしも第三王子殿下のご許可を頂けましたら、医療行為の技術向上の為、任務にはこの姿で参りたいと考えております。不可という事にございましたら、先般の姿に即座に戻りますので。如何でございましょう?」
まあ、ネオジムさんの言われる事に問題はないと思う。
兄上、バナジウム第二王子殿下には寿右衛門さんから伝えてもらえば良いだろう。
今回は辺境伯とのやり取りも殿下の水晶通信のみの筈だから、特にご挨拶もいらないよね。
「ほら、言った通りだろう。誰も気にしないぞ、と」
カバンシさん。いえ、多分普通は驚きますよ?
私は自分の存在の方がこちらの世界ではかなり稀だって知っているからこんな感じなだけで。
『主殿、それではこちらも。あ、カクレイ殿、玉露の冷茶を人数分お願い致します。誓約魔法その他は私が行います故』
「分かりましたわ。茶色殿とカバンシ殿と私と第三王子殿下ご本人がおられますから、問題はありませんね。聖女候補セレン-コバルトさん、第三王子殿下に関わる秘匿事項を貴女のご両親にお伝えします。宜しいかしら」
「……畏まりました。お父
え、これって、あれかな。私の話?
『それ以外に何のお話ですか、コヨミンさん』
皆が集中している中、リュックさんだけがツッコむ。
カバンシさんは、
「ハンダは取り敢えずセレンの指示通りに姿勢を正せ。様呼びに戸惑うな。ああ、ネオジム殿はその姿のままの方が良い。内容が内容だから」と、まあこうなるだろうと思っていた、みたいな対応。
私は取り敢えず、姿勢を益々正しくされたネオジムさんに
『是非そのお姿でいらして下さい。辺境区の方々をお一人でも多く助けて頂けます様に。第三王子としてお願い致します』
念話を送ってみたら、案の定、ほっとされていた。
やっぱりだ。セレンさんの念話術式にも対応できている。ネオジムさんの魔力の量はかなりのものだ。
これなら、
多分。
ハンダさん? はまあ、大丈夫でしょう!
ハンダさんだからね!
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