167-真の姿と私
「ええと、あのね、ハンダ。私、結婚してほしいって言われた時、年の差が大きすぎるから、って言ったわよね?」
「……言った。え、でも何で今更? しかも、今か?」
全く、ご尤もだ。
これから任務、という時に訊く事ではない。
「いいから。あの、幾つくらいの差だと思ってたんだっけ?」
よくはない。でも、押し切る。
「あ、俺が多分20歳って言ったら、若いわ! って言った後、俺がめちゃくちゃ粘って、確か29くらいだって教えてくれなかったか? んで1年で俺が薬師資格を取ったから多分30くらいで結婚できて、次の年に生まれたセレンが今年19だから多分ネオジムが50くらい、俺は41歳くらいじゃねえの? 誤差だわこんなん! カバンシ、何笑ってんだ? 俺、計算間違ったか?」
「お母さん本当にお姉さんにしか見えないけどね! あたしも良く間違えられた! ナンパしてくる人もいたから、最後にはお母さん魔法でやっつけて格好よかった! て言うか昨日も外歩いてたらあったよね、ナンパ! 一瞬の炎魔法、で鮮やかだった!」
どうしよう、カバンシさんとカクレイさん、笑ってる。
て言うかセレン、カクレイさんの前であたし、はやめて欲しいしナンパの件は内緒、って言ったのに! ハンダの顔、少しだけ引きつってるし!
まあ、今はツッコむのはやめよう。
少しだけ補足させて頂くと、この国に限らず、魔法を主流とする国では誕生日という存在から様々な術(祝福等だけではなく悪いもの、例えば呪い等も含まれる。)に発展する可能性がある為、生まれた季節程度の把握が当たり前になっていて、学校や職場に提出する年齢も概算で構わないとされている。
国民皆の誕生を祝うのは、年に一月のみ。七の月だ。
初代国王陛下が決められた、祝いの月。
空の、年に一度だけ会える夫婦の祈念の日が異世界に存在したのが由来だという。
王立学院の様にきちんとした場では必要な年数を生きているかを水晶や魔法で確認される事はままある。
それも、5歳が15歳と偽らない様に等、極端な事を禁じるといった様なものである。
だから、ハンダが私との年齢差を誤差と呼ぶのはこの大陸では正しい事なのだ。
だが。
「……それね、違うの。本当は100歳足さないと!……取り敢えず、見て!」
もうどうにでもなれ、と言うよりは正直、私の家族は受け入れてくれる、そう確信していたので耳飾りを外した。
あと、ナンパの件をハンダにこれ以上取り上げられたくない。
「……紫だな。セレンの色より宝石っぽい紫色。ナンパが増えそうなのがムカつくが、まあ、ありっちゃありか。ネオジムなら何でもいいけどな」
「……お母さん、綺麗! いつもの賢い感じも素敵だけど、これも良いね! エルフさんだったんだ! あれ、でも大臣さんよりお耳が短いから、ハーフエルフさんなの?」
……あれ?
私の夫と娘の感想、何だかおかしくない?
「……だから言ったろう。ハンダは全く気にしないと。正直、セレンについても私はあまり心配していなかった」
「そうよね、良かったわねえ、その姿の貴女
……カバンシさん、カクレイさん。
はい、仰る通りです。
20年以上私が悩んでいた問題は、一瞬で氷解いたしました。
大好きな、家族のお陰で。
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