幕間-21 朱色様とあたし
『紫色ちゃん、これでいい?』
「はい、ありがとうございます、朱色様」
あたしは聖女候補筆頭(らしい。けど聖女候補には序列が存在しないからあくまでも大司教様と聖魔法大導師様が内々に言われているだけ)、セレン-コバルト。
今あたしはお世話になっている聖教会本部の宿舎の個室内で、筆頭公爵令嬢ナーハルテ様の伝令鳥であられる鳥の高位精霊獣殿と直接会話をさせて頂いている。すごい。
聖教会の紋章が彫られたテーブル(これは備品)の上には高品質の映像水晶。水晶の台座にはやっぱり聖教会の紋章。
普通だったらどんなに大金を積んでも個人が貸与可能な物ではないが、特例として大司教様と聖魔法大導師様からの許可付の貸与と言う形を取らせて頂けたのだ。
何で? と思われるよね。それが当たり前。
あたしもそう思うから。
実は、朱色様がお二人に掛け合って下さったの。
それと言うのも、あたしの召喚鳥になってくれた鳥の精霊獣、かわいいかわいいヒヨコの紅ちゃんが一人前になった時、その凛々しい姿にあたしが衝撃を受けた事を慮ってくれて、健気な事にまたヒヨコの姿に自在に変化できる様に修業を決意してくれて。
その為、朱色様は精霊界での紅ちゃんの修業の様子を映像水晶を通じてあたしに見せて下さるという。
精霊界の景色等は秘匿事項だから無し。当然だ。
それでも、紅ちゃんが紅さんから紅ちゃんに変化する為に特訓している様子を見せて頂けるなんて、有難くて仕方が無い。
紅ちゃんは元々朱色様の血統の子で、かわいいヒヨコ軍団のリーダーポジションだったのだけれど、何故かあたしの事を気に入ってくれたの。
なんでも、ご先祖様は聖霊獣殿の血統であられるらしくてあたしの聖魔力と波長が合ったみたい。
思い出すのもムカつくフード野郎、求者に怒り心頭になったあたしの聖魔力を吸収してくれて、あたしを冷静(微妙なのは自覚あり。気を付けます)にしてくれた紅ちゃんに、あたしは馬鹿正直にかわいい紅ちゃんが良い、と言ってしまって。
あれはもしかしたら、伝令鳥の契約を破棄されても仕方ない行為だったのでは。
朱色様にその事を伺ったら、
『精霊獣は素直な感情を吐露される事はむしろ喜びよ。内に秘めるほうが毒になるわね。紅色殿は貴女を望んだのだから、進んで修行をしているわ。たまにあたくしが近況を知らせて差し上げるわよ』
と言って頂けたのだ。
そうしてこうなった。
有難くてまた涙が出た。
凛々しい紅ちゃんは鷲か鷹か、といった美形の鳥さんで、絶対召喚鳥にしたい!って人が列を成しかねないくらいに素敵なの。
でも、あたしはあのヒヨコの紅ちゃんのぽてぽてころりん、な感じが大好きなんだ。
口調がすらすらで、舌足らずじゃないよ! とはさすがのあたしも言わない様にするからね、紅ちゃん。
あと、次に会えたらあの姿の紅ちゃん(さん)の格好良さをちゃんと褒めてあげるんだって決めている。
その前に、一つ朱色様にご相談したい事があった。
せっかく魔道具を通じてお互いの精霊獣さん同士でいつでもお話ができるのに、第三王子殿下とナーハルテ様はあんまり通信をしていないらしいのだ。
お互い、やるべき事があるからそちらを優先、ってすごくご立派でさすが! という感じだけれど、正直言うとあのお二人にはもう少しお互いの為の時間を過ごして頂きたいと多分あたしだけではなくて他の方達、精霊獣さん、魔道具さん達も思っている筈。
その為にはどうしたら良いか、とあたしはたくさん考えた。そうしたら、いい考えが浮かんだ。
異世界の遊具の悪趣味なドレス女子、あたしに似てると認めたくないあいつの行動からヒントを得たのがしゃくに障るけれど、良い考えだとは思うから。
ドレス女子は何故か貴重品の映像水晶ペンダントを用いて、個人で映像水晶を使用できる立場の攻略対象者(だったよね確か)達と割と密な会話をしていたのだ。
だったら、確実に通話ができるお二人の魔道具さん同士ならこの方法が使えるんじゃないかな、って閃いた事があって。
今現在、あたしはたまにナーハルテ様と一緒に聖魔力の座学と実践を同席させて頂いている。
そこで何回かお茶や食事も、という事があったから伺ってみたら、驚いていらしたけど確かに喜んで下さったと言う手応えがあった。だから、多分いける。
そう確信したので、この機会に名案(自称)を朱色様に提案してみたのだ。
『……いいわねそれ。紫色ちゃん、その提案頂くわ』
「よろしくお願いします!」
良かった、朱色様は賛同して下さった。
漸くあたしはお二人の仲の更なるイチャイチャの為に、少しだけでもご協力できるのかも知れない。
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