165-聖教会本部特別来客室の私達

『茶色殿と緑殿との内々のお話の事。コヨミン様のお腕から外れても宜しいでしょうか?』


 どうぞどうぞ。黒白、立派になったねえ。


 私の召喚獣さん同士の遠距離の念話の中継地点も兼ねる様になったんだもんね。あちらの簡易基地局みたいだ。


 驚きの贈答品、(時間の都合で中には入れなかったけれど)タウンハウスさんから聖教会本部の特別来客室へと医療大臣、財務大臣の両大臣お二人と共に転移して戻ったら、黒白が早速お仕事モードになっていた。


 リュックさんも、『一緒に仕事』と、お茶の支度がされていたサイドテーブルの傍に陣取った。


 そう言えば、割烹着を脱いだお二人はお揃いのモノトーンのワンピース。

 とてもじゃないけれどさっき来客室に皆でいた時には衣装までは落ち着いて拝見する余裕が無かったからなあ。


 チョコレート色のお肌のリラシナさんが白、透明感のあるお肌のカクレイさんが黒。お似合い。

 因みに私は無難な学院の制服。礼服に準ずる、学院で普段着用するよりは上等な物。あ、最上級の制服は以前壇上で着用した式典用の制服です。


「申し訳ございませんが、両閣下も宜しいでしょうか」

 あ、寿右衛門さん、まだ人型なんだ。


 まあ、魔道具開発局局長秘書ギベオンさんも本体は眼鏡の魔道具だし、事情を知らない開発局の方々には人型の方が良いのかも。

 何かと注目されやすい(らしい)第三王子殿下の伝令鳥さんよりは美中年執事さんの方が目立たないよね。


「どうぞどうぞ。私は寿右衛門さんが用意してくれたお茶とかを頂いてますから。必要なら、音声を遮断して下さいね」


「お気遣い有難く存じます」

 いえいえどういたしまして、カクレイさん。


 どうなるかと思ったけど、私、カクレイさんとリラシナさん、ご婦々とも仲良くなれたみたいで嬉しいな。


 コヨミ様を偲ぶ会のお話もいつか教えて頂けるかな。

 カクレイさんが室内に通信用の映像水晶を丁寧に運ばれたので、私は奥に移動する事にした。


 いや、この部屋かなり広いのだけれどね。気分的に。


「……お任せ下さい!」

 え。あのう、何故貴方が?

 気のせいか、浮いてません? あ、着地した。


「あら、丁度良かったわ、百斎殿。第三王子殿下に聖魔法をお教えしながら、コヨミ様を偲ぶ会のお話もして差し上げて下さいな」

 ってリラシナさん? この方、大司教様!


「大丈夫! 本当ならタウンハウスにくっついて行くつもりだったし。それよりは良いでしょう? ここなら聖教会本部の敷地内だし! 大書店に一緒に伺うのも先になりそうだから。あ、そうだ、聖女候補セレン-コバルトと、殿下の婚約者筆頭公爵令嬢については聖教会本部内又は聖教会関連施設内であれば何処でも殿下と1対1で会食等を行っても大丈夫だからね。大司教と大導師殿の許可済ですから! ほら、大事な用件だったでしょう?」

 あ、その許可は普通に嬉しいです、私が。

 有難く頂戴いたします。


 セレンさんと話すのは楽しいんだよね。あちらの友達との会話みたいな所もあって。


 ナーハルテ様? 話せなくても嬉しいに決まってますよ! 話せたらもっと楽しいです!


「えーと、殿下、聖魔法の講義の教材ってお渡ししても平気かな」

 はい。持ち運びならリュックさんもいますし。


「はい、それじゃあ取り敢えず。これはセレン-コバルトさんも筆頭公爵令嬢さんも習得済の物ばかりだから」

 えい、と百斎さんが軽く手を叩くと、広い部屋の空き空間に文机とかなりの冊数のの書物が現れた。


『聖魔法概要』『聖女様に関する一考察』。この二冊は私も読んでいる。

 大書店に行った時のお勧め本に入っていたから。

 でも、あとの十冊位は全然だ。頑張って読まないと。


「それでは本日は何でも良いですから質問を受け付けましょうか。既読の本があれば、それからでも良いですよ」

 え、本当に講義ですか? 良いんですか大司教様の個人講義!


「大丈夫です。今日の分の仕事は分体に頼んだから。第三王子殿下のお陰で大司教が聖教会本部にいる事が増えた、有難い! って評判だから、多少時間をいても平気! 目標は年度末までに聖女候補筆頭と筆頭同位の全属性取得者に追い付く事ですよ!あ、二人の筆頭呼びは内密にして下さい!」


 はい。分かりました。でもセレンさんとナーハルテ様、やっぱりすごいんだなあ。


 あと、百斎さんも魔道具開発局局長ジンクさんみたいに分体生成魔法は使われるんですね。

 それから、また知らない内に私の功績増えてませんか?


「あ、大丈夫。殿下の功績になりすぎない様に今、皆が打ち合わせしてくれてますから。安心して聖魔法の講義を受けて下さい!」


 百斎さんがそう言うと、文机が二人で学習するにはやや大きいくらいの面積に増えて、寛ぎ過ぎないけど学習には良い堅さの背もたれと座面の椅子も二脚出現した。筆記用具は馴染みの物が。


 リュックさん、いつの間に……。


「水分とかは適宜休憩するつもりだけれど、足りなかったら言って下さいね。じゃあ、始めましょう!」


 カクレイさん達は本格的に会議みたいになっていたし、せっかくの機会だからお言葉に甘える事にした。


 ただ、今更だけど、聖教会本部の特別来客室ってこういう使用方法でも良いのかなあ、とは思ったけれど、最高責任者のお一人が一緒だから、まあ、良いんだよね?


 うん、良い事にしておこう。









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