150-王立学院魔道具品評会結果発表日の私達(7)

「私は忘れない、属性に目覚めた今も。照明の魔道具を付ける際に、自身の魔力でともる灯りに、この明るさでは魔石を増やすべきかと悩んだあの日々を。もしここに、嘗ての私の様に魔力が少ない事に懊悩する者がいるならば、この国ならば大丈夫だと伝えよう。思い出して欲しい。初代国王陛下が何故なにゆえに魔道具開発局を中心に据えた魔法機構を我が国に置かれたかを。魔石があれば、魔力を持つ隣人がいれば、魔道具ならば誰でも用いる事が可能であるからだ。そして、魔法局は魔道具開発局の下に在るのではない。共に歩むべき組織である。我がコヨミ王国は、そういう国だ。私はこの国の王族に在る者の一人、この国の民の一人として、ここに誓う。私はここで、婚約者、引いては私の家族となってくれる人と共に、この国を支えて行く事を。願わくば、皆にもそれを助けてもらいたい」


 ……言えた。ニッケル君の分まで。


 まだだ。まだこのまま緊張感を持たないと。


 会場は、静かだった。


 泣いている? 人も見えた。


 どうだろう、私の声は、届いたのかな?


『まとい様。お聞きになって』


 ナーハルテ様の念話。


 聞こえた。

 そうか、話に集中し過ぎて、私には聞こえていなかったんだ。


 最初は、パラパラとした拍手だったらしい。


 それが今は、音の洪水。


「第三王子殿下、万歳!」


「筆頭公爵令嬢様とお幸せに!」


「わ、わたしはっ、魔法局に所属する者として、誇りを持ち、心より御礼申し上げますっ!」


 拍手の中、そんな声が聞こえた。

 この喧騒の中で? と思ったけれど、多分セレンさんか誰かが音を拾える魔法を掛けてくれたのではないだろうか。


『その通り! ナーハルテ様もいらっしゃいますからね! ほら、最後の大仕事ですよ!』


 やっぱりセレンさん。ナーハルテ様も。


 ……そうだった!


『白様、緑簾さん。来て下さい。私の国の皆さんの姿を見て下さい』


『勿論じゃ』『おうよ!』


『マトイ様、ご準備を』


 白様、緑簾さん、黒白。


「ありがとう、皆。実は、精霊王様の直参であられる高位精霊獣殿と、私の召喚獣殿に来て頂ける事になった。皆でお迎えしよう」


 拍手の渦の中現れたのは。


『待たせたかの?』『現れ出でたる鬼の美少年! っすよ』


 凛々しい大型の純白の豹に似た猫属白様と、紺のスーツ姿の緑簾さん?


 冗談抜きで本当に美少年なんですけど!


 この間のかわいいおチビ鬼さんが、緑の美少年鬼さんに。ちゃんと二本角。


『え、緑さん? 嘘! か、かわいいっ!』

 うん、セレンさん、そうなるよね。


『まあこれはこれで良かろう? それよりも、皆に我らを』


 あ、はい。白様。


「……こちらの精霊王様の直参の白き精霊獣殿については知る者もいるかと思う。また、映像水晶で召喚大会の小さき鬼殿を見た者もいるだろう。この小さき鬼殿は今は私の召喚獣となって下さっている。そして、こちらの伝令鳥殿は直参精霊獣殿の直弟子であられる。そして、私の召喚獣殿として控えてくれている」


 人々を見ると、白様の凜々しさに感嘆する人がいた。


 緑簾さんについては、

「あんなにお可愛らしかったか?」「いや、第三王子殿下の魔力の高まりで変化されたのでは?」と囁かれていて笑いそうになってしまった。


 寿右衛門さんはふわふわ! かわいい!と、年齢性別問わず安定の人気ぶり。


『其方の婚約者と友人の聖女候補。あちらの両名と両召喚獣も呼ぶと良い。三人とそれぞれの召喚獣が並ぶと壮観じゃろうて』


 白様に促され、ナーハルテ様とセレンさん、朱々さんと紅ちゃんにも中心に来てもらった。


 三人で手を振る。


 すると、また更に拍手と歓声が起こる。


 本当に、この国に来られて良かった。


 しみじみとしていたら、どこからか、あの方の声がした。


『ありがとう。貴方、この国の方になられたのですね』


 そうです、コヨミさん。


 今なら、こうして断言できます。


 私、私が今在る所。


 この国が、大好きです。













  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る