148-王立学院魔道具品評会結果発表日の私達(5)
「皆、ありがとう。それでは、第三王子殿下、こちらへ」
大司教様の声で拍手が止まり、ついに私の出番。
そして、大司教様と学院長先生が場所を交代する。私はその近くに控える。
あ、でも、あの方は結局見えなかったな。
『いえいえ』『私もおりますよ』
『……少しだけ閃光が強くなります。お目にお気を付けて』
え、黒白? 目?
それは一瞬だった。
黒白がキラリと光り、私が目を
「大導師様……」
会場の呟きが、全てを示していた。
『マトイ様の大事ですから』『どこぞの大司教様に一張羅を奪われてたいへんでした』
私の有事には最も現れそうで現れずにいらしたその方は。
『ぼ、私がいればここは足りますよ。何故』
ため息を隠す大司教様と双璧を成す聖教会本部、聖魔法大導師様。その実態は。
コヨミさんの鬼の召喚獣でいらした事もある高位精霊獣、
そしてもうお一人、軍服さんと交代で大司教様の傍らに立つのは息子さんでもある王国騎士団上級大将閣下、魔法隊隊長さん、千斎さん。
「此度の第三王子殿下に関する精霊珠殿のお話は、私、王立学院学院長が念話を伺って口頭で皆に示す。魔力の少ない者が、精霊珠殿のお言葉を聞き逃す事の無きようにとのご配慮である」
『揃いも揃って。それぞれの本来在るべき場に万が一があれば如何するつもりだ?』
学院長先生のモノクルが少しだけ震えている。
多分、全てが終わったらお説教だな、これは。
『まあまあ、学院長先生。黒曜石ちゃんの晴れ舞台を皆見たかったんだよ。でも茶色ちゃん、緑ちゃんは呼ばなくていいの?』
そう、緑簾さん。
寿右衛門さんは凛々しくてかわいい素敵な鳥の精霊獣だけど、雀さんだから、朱々さんや紅ちゃんみたいに迫力で圧倒、って感じではないから緑簾さんを呼ぶのかなと思っていたんだよね。
勿論、本気の寿右衛門さんは緑簾さんが引くレベルなんだけど。
すると、私の肩の上、寿右衛門さんが一言。
『いえ、精霊珠殿に主殿、このままで』
そうなんだ。
まあ、寿右衛門さんがそう言うなら。
フカミルさん達の護衛の件もあるからね。
『では、始めようか』
はい、学院長先生。
『
『断罪劇場も良かったですけど、あれより素敵にキメて下さい!』
『やっちゃってね!』
『応援します!』
『皆、ありがとう』
壇の上、少しだけ離れた所にナーハルテ様とセレンさん、朱々さんと紅ちゃんがいてくれるのも心強い。
「先程、大司教殿からお話があった通り、コヨミ王国ニッケル・フォン・ベリリウム・コヨミ第三王子の魔法属性がここ数ヵ月の間に出現した。それは紛う方なき、非属性。何ものにも属さぬが故に、全てを使える属性である。これは、異世界より精霊王様が招かれた存在、初代国王と同じものである。異世界の出身たる初代殿の属性が赤い石により魔力を継いだ現王家の者に現れた事は実に喜ばしい。よって、私精霊珠は、双珠共に、ニッケル・フォン・ベリリウム・コヨミに我らの仮名を創る権利を与える事とした」
ここで、渦の様な歓声と拍手。
「……皆の者、まだ話は続く。これからは王立学院学院長として私が語ろう。この中には学院入学当初、第三王子が私の怒りを受けた事、聖女候補と親しくし、誤解を招いた事、召喚大会に於いて精霊王様の直参精霊獣殿にご迷惑をお掛けした事等を知る者もあろう。そして、それ故に平民差別という愚かしい行いをした者達の断罪に始まる綺羅星の如き殿下の様変わりを驚きと感嘆を持って見ていた者もいる事と思う。それは当然の事であり、殿下の真の姿を知る事が出来なかったと恥じ入る必要はない。不出来な過去も、全て殿下の属性の発動には必要な経験であったのだ。魔力の少なさを嘆き、無様な様子を示しつつ、それでも自己研鑽を重ね、そして花開いた殿下の真のお姿を私は教育者として誇らしく感じている。そして、殿下を支えた筆頭公爵令嬢ナーハルテ・フォン・プラティウム。この者も、十分に称えられるべきであろう」
ええと、いや、大体こんな感じになるよ、とは事前に聞いていましたが。やっぱり、何だかこそばゆい。
精霊珠殿に仮名を、って大仰な雰囲気になってるけど、あれ、そもそも、
『いいなあ、名前。僕達にも! 10年以内に付けてね!』みたいなのから始まってますから!
いや、ナーハルテ様がまぬけ王子に愛想を尽かさず婚約者でいて下さった事は評価されて然るべきですけどね。
これ大事。さすがは学院長先生!
あとやっぱり多くの人が殿下に失礼な事を……とか済まなかった……とか思ってるんだね。
それ仕方ないって! 安心して! ニッケル君も許してくれるよきっと!
そもそも私自身が『キミミチ』のまぬけ王子とニッケル君を重ね合わせて誤解していた内の一人だし。
『あたしもです。最初の頃は正直、ダメダメ王子様、って思ってました』
だよね、セレンさんに激しく同意。
……そしてごめんね、ニッケル君。
「また、殿下の普通クラス入学に合わせた同世代の者達についても、今回のカルサイト・フォン・ウレックスの魔道具品評会、学院剣術大会でのスズオミ・フォン・コッパーの奮闘と、本来の実力が発揮されている事が認められる。他の者達の今後にも注視してもらいたい」
学院長先生が貴賓席に視線を送る。
最優秀開発者としてテントに移動していたカルサイト君が、ぴしりと直立した。
隣にはナイカさん。この二人は本当に安泰だ。
ここにはいないけれど、スズオミ君も年度末に向けて努力している。
残る二人の攻略対象者には少々気が引けるけれど、これはもう、何とかしてもらうしかない。
あの二人も、セレンさん、スズオミ君、カルサイト君から聞く限りでは『キミミチ』よりはまともな筈。
あんまり面識ないのだけれどセレンさん達がそう言うなら、という気がする。
『まとい様、いよいよです』『主殿』
あ、はい。そろそろ私も壇の中心に行かないと。
それから、今だけは皆
ありがとう、凄く励まされているよ。
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