147-王立学院魔道具品評会結果発表日の私達(4)
「皆、静粛に。今から大司教様からのお言葉を頂く」
ジンクさんに促され、百斎さん改め大司教様が壇上の中心に立つ。
会場はしん、となった。
「皆、ありがとう。まずはこの聖女候補、セレン-コバルトに付いてだが」
ジンクさんの傍にいたセレンさんがゆっくりと大司教様に歩み寄り、しっかりと聴衆の方を向き、優雅な礼をした。
「先程聴取対象とされた魔法局副局長達もそうであるが、この者を第一の聖女候補と捉え、聖女様になり得る存在とする向きがある様だが、我が国では聖女候補に優劣や序列を付ける事は
そして、紅ちゃんが羽をばさりと開く。
大司教様のお話は実に巧みだ。
セレンさんが聖女様に近い存在であるかどうかという事よりも、聖女候補として励む彼女に寄り添う美しい鳥の召喚獣殿がおられる、という事で皆に感動を与えた。
新聞記事や伝聞でも、ここにいない人達にもこの感動は確実に伝わると思う。
「……ありがとうございます、精霊獣殿。そして、続いてナーハルテ・フォン・プラティウム。こちらへ」
大司教様の呼びかけに、ナーハルテ様が中央へと移動する。
更に、美しい礼を一つ。
「皆が知る様に、こちらの筆頭公爵家令嬢ナーハルテ・フォン・プラティウムは第三王子殿下ニッケル・フォン・ベリリウム・コヨミ殿の婚約者である。殿下の過去のお姿に、ご令嬢のご婚約者としてはという見解を抱いた者もあろう。然しながら、昨今の殿下の真のお姿を直に見、情報として聞いた者達が謳う事こそ真実である。第三王子殿下は、その類い稀なるお力を示されている。そしてそれは、初代国王陛下と同じ魔力属性、非属性を持たれたという事。それをこの場にいる全ての者に伝えよう」
……成程、どの属性にも属さない、つまり生来の魔力が存在しない者に近い存在。
コヨミさんの場合は生命力と好奇心、それがこの世界で膨大な魔力の様な力へと変換された。
コヨミさんの様な属性の発動の理由を私が魂の転生人だからという真のそれではなく、コヨミさんに頂いた赤い石の力が結実した王族の末裔であるが故、という形にして下さったのか。
いや、この件については精霊珠殿が打ち合わせの時に、
「格好いい表現になるかも。驚かないでね!」と言われていたけれど、詳しく知らされてはいなかったので、正直私は驚きを表に出さない様にしている。
まあ、こう言ってもらえたら私の魔力についての検査や調査やおかしな噂等はされずに済むよね。
人々はざわざわとしてはいるが、大声を出したりはしていない。さすがは大司教様の演説だ。
「……静かに。第三王子殿下には改めてまたお話頂く。また、その際は精霊珠殿が付いて下さる為、安心してほしい。今は筆頭公爵令嬢についてだ。嘗ては微量の魔力保持者とされていた殿下を支えた彼女にも、現れたものが存在する。それは、聖魔力である。……大司教たる私がここに宣言する。ナーハルテ・フォン・プラティウムは、我が国初の、全属性所持者となり得た。聖女候補の名乗りは、特例として、本人の希望に応じる。第三王子殿下の婚約者、そして将来を誓う者としてこの者に並ぶ存在は無い。以降、二人の間に介入しようとする者は聖教会の全ての教義に反する行為と心得よ。……以上だ。最後に、彼女の召喚獣にお出で頂く。恐れ多くも、精霊王様の直参の高位精霊獣殿の血統の高位精霊獣殿であられる。皆、そのつもりで」
そして、わざと大仰に羽を開いて
その美しさは見慣れている私まで圧倒されるものだった。
水を打った様に静かになった空間で、ナーハルテ様に一礼をする朱々さん。
ナーハルテ様が軽く触れると、ふわりと柔らかい印象になった朱々さんが、高く、高く飛翔する。
そして、またナーハルテ様の元に戻って来た。
まるで、美しい絵か彫刻を見ているかの様なその姿。
「……皆がたった今、その目で見た通り、ナーハルテ・フォン・プラティウムは、精霊獣殿がお心を寄せた存在である。しかと心得てほしい。……ありがとうございました、精霊獣殿」
大司教様の言葉に頷く朱々さん。
背筋を伸ばし、毅然とした礼をするナーハルテ様。
いつしか、会場からは万雷の拍手が起きていた。
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