146-王立学院魔道具品評会結果発表日の私達(3)
「……以上、奨励賞の皆への表彰を終了いたします」
ジンクさんの言葉に会場から激しい拍手が起こる。
壇上に上がってもらった面々の中には涙ぐんでいる学院生もいた。
学院長先生と眼前の精霊珠殿、大司教様ときて第三王子殿下の握手に意味はあるのかなあと思っていたら、意外に感激してくれている様で安心した。
『いや、だから第三王子殿下、断罪の王子様って特に平民の学院生から大人気なんですよ!』と念話を飛ばしてくれたセレンさん、ありがとう。
不在のコベリン君とフカミルさんには精霊珠殿が一時的に通話を可能にされたという事にして、黒白と白黒を通じて連絡をした。
緑簾さんとめちゃくちゃ馴染んでるコベリン君のご両親と力自慢の社員の皆さんの歓声は凄かった。
多分コベリン君、胴上げとかされるんじゃないだろうか。
両親と叔父に伝えたいというフカミルさんの言葉には少し心が痛んだが、これは魔法局副局長が罪を償いながら姪御さんであるフカミルさんと向き合うべき事なので、踏み込む訳にもいかない。
意外とこういう時に頼りになる緑簾さんがいてくれるのは救いだ。
状況は緑簾さんにだけは先に念話で伝えてある。
ギベオンさんにはジンクさんから伝えられている筈。もしも緑簾さんが感情的になり過ぎたら上手く修正してくれるだろう。
また、奨励賞の皆には次年度の優先参加権と希望者には若手開発者の育成プログラムへの参加が認められる。
既にコベリン君とフカミルさんは参加しているという形になっているものだ。
第三王子への不敬的な発言だけであればコヨミ王国では逮捕、起訴といった事はない。
しかしながら、筆頭公爵家への侵入を依頼した件は看過できない。
目を覚ました副局長達はメイド服の巻絹さんに悪態をついていたらしいが、魔法を悪事に用いていた連中から得た証拠物件と、巻絹さんの爵位を聞き、大人しくなった様だった。
副局長の手下達が依頼をした者達の中には、嘗てはそれなりの立場だった者もいた為にただの荒くれ者達とは異なり、もしもの場合に備えて依頼を受けた人物に付いて音声その他をきちんと残していたらしい。
ただし、受けた依頼をこなせない場合は自害もと考える様に仕事に対しては矜持を持つ連中だったが故に巻絹さんとセイジさんが
再教育に関しては訊かない方が良さそうだし、お二人が爵位を持っている事には特に驚きもなかった。
とにかく、筆頭公爵家への侵入、しかもナーハルテ様の寝室への侵入依頼等、言語道断だ。
副局長達にとってみれば、むしろ、私や朱々さんが手を下すよりはマシだったのかも知れないとさえ思う。
そんな事を回想していたら、優秀者の表彰式が始まろうとしていた。
魔法局副局長達と念の為、第三王子に対する穏やかではない発言を行っていた者達は別の場所で聴取を受けているので安心してほしいという軍服さんの説明に観客の多くは安堵し、聖女候補の受賞の為に駆けつけた(という事にした)大司教様は皆の拍手と歓声で迎えられた。
今は審査員席に着席され、隣に軍服さんが直立している。
ナイカさんとカルサイト君には内々の軽い説明で済まさせてもらったが、一応納得してもらえて進行は滞りなく進められている。
カルサイト君には副賞として上クラスへの編入試験合格、セレンさんは紅ちゃんを召喚した事と併せて選抜クラスの編入試験合格、という事にして進められた。ナイカさんには開発への支援。
勿論、三名共に次年度の優先参加権は授与された。
2位の方が最優秀者の副賞よりも上だという点については、紅ちゃんの凜々しさのお陰で野次の一つすら飛ばなかった。
むしろ、あたたかい拍手が舞った程。
そこに、ジンクさんの声が響く。
「皆さん、暖かい拍手をありがとう。これで、今年度の王立学院魔道具品評会は閉幕となるが、これからこの場にて聖教会本部大司教様が重大な報告をされるので、是非聞いて頂きたい。聖女候補セレン-コバルト、そして筆頭公爵家令嬢ナーハルテ・フォン・プラティウム、こちらへ」
さあ、いよいよだ。
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