145-王立学院魔道具品評会結果発表日の私達(2)

「学院長先生、編入試験合格って仰いましたよね、でもそれって試験に代わる場合、物凄い功績とか結果とか色々、でないと選抜クラスって合格できないんじゃないでしょうか?」


 セレンさん、偉い。

 私よりもちゃんと『コヨミ王国王立学院高等部編入試験の手引き』を読んでいた。


「念話と会話の同時進行の術式の素案構築、王立学院魔道具品評会2位。あとはいずれ高位と認められるであろう聖霊獣の血族でもあられる精霊獣殿との伝令鳥の契約。これならば誰からも疑問など呈される事もなかろう。因みに監査役は聖魔法大導師殿、大司教殿、魔道具開発局局長殿。何か不安や不満、質問は?」


 すごいなあ。

 多分、寿右衛門さんやナーハルテ様達も必要なら監査役として名乗り出るよね、これは。


「いえ、ありま、ございません! ありがとうございます!」


「既に合格証明書は大導師殿のお手元にあるので、後に頂戴する様に。大司教殿、宜しくお願い致します」


「承知いたしました。そしてセレン-コバルト、己の努力を誇り、更に邁進する様に」

『紫色ちゃん、おめでとう』

『大したものよ、おめでとう』

『セレン様、僕も励みますね』


「学院長殿から、あの魔道具は学術関連他の多岐に渡る書類作成の光明となる可能性があると言うお言葉を頂いている。是非、更なる開発に協力をお願いしたい。そして、おめでとう」

「次年度から共に学べます事、嬉しく存じます。きっと、ライオネアも喜びますよ」


『聖女候補殿、貴女の学問に対する真摯な姿勢は素晴らしいです。おめでとうございます』

『おめでとうございます』

『おめでと』『良かった!』

「おめでとうございます」

 大司教様、聖霊珠殿、朱々さん、紅ちゃん、ジンクさん、ナーハルテ様、寿右衛門さん、黒白、リュックさん、リュックちゃん、千斎さんの軍服さん。


 よく見たら、リュックちゃんはナーハルテ様のウエストポーチに変化中だ。

 貴賓席の時はリュックさんと同じくきちんとした革鞄になっていた筈だから、臨戦態勢だったんだね。

 今は一段落だけど、確かにこちらの方が移動には良さそう。


 私も、次のもしもの時はリュックさんにはサコッシュ型とかに変化してもらおう。

 あと、やっぱり軍服さん、話せるんだね。


 あ。

「遅ればせながら、おめでとう、セレンさん。一緒に学べるのが嬉しいよ」

 やっと言えた。心からのおめでとう。


「皆様、本当に有難く存じます。王立学院選抜クラス編入試験合格者並びに聖女候補の名に恥じぬ様に精進する所存です。ご指導ご鞭撻の程、宜しくお願い申し上げます」

 セレンさんの完璧な礼。 気品すら感じられる。

 そう言えば、今日はセレンさん、学院の制服もプリーツ型だった。


 セレンさん本人は嫌がるだろうけれど、さすがは『キミミチ』のヒロインだなあ、と思ってしまった。


 正確にはあの自滅系とは正反対の、乙女ゲームの正統派ヒロインみたいだ、と感心してしまったのだけれども。


 それを言ったら、ナーハルテ様だって悪役令嬢という名前の裏ヒロインで、セレンさんとは違った魅力溢れるお方。

『キミミチ』本編ですらイケメン令嬢の代表格だったんだから!


 ……って、あれ?

 待って、私今、何か。


 そうだ、あいつ、求者。確かに遊具って言っていた。


 フカミルさんの指輪からは既に魔力は消えていた。

 でも、確かに彼女は『キミミチ』の魔道具の幻を見て、品評会に出品した。

 求者は間違いなく、聖女を求めている。

 セレンさんとナーハルテ様、二人の聖女候補を喜んでいた。そして、私達を傷付けたくないと明言した。


 それって、つまり。


「『キミミチ』を上手く利用してる?」

 そうだ、正しくいいとこ取り。但し、ゲームとは全く違う展開。


 第1攻略者の私はナーハルテ様と相思相愛(なんですよ一応!)。


 第2攻略者のスズオミ君はライオネア様と円満な婚約解消(予定)。


 第3攻略者のカルサイト君は、魔道具品評会で見事最優秀者。そして、婚約者ナイカさんと結ばれた。


 第4、5攻略者は円満とは言わないまでも、イケメン令嬢様達と一緒に学んだり活動したりの交流がある。


 セレンさんは今の所、ライオネア様が一番だ。そして、私達に対する友情をめちゃくちゃ感じてくれている。


 この展開を、求者も喜んでいるの?


『そういう事だね、白金しろがね王子君』

 精霊珠殿の見解も同じだった。


『暫くはフードのものは現れないと思うよ。自分の求めている存在の成長を確認できたからね。どうやって知ったかはまだ分からないけれど、君の事も遊具の事も理解している様だ。そして、僕達を害する気はない。何故なら、聖女顕現に大いに役立つから。……まあ、本気でこの面々がかかればかなりのダメージは与えられたろうけれど、今はまだその時ではないのだろう』


「精霊珠殿。私だけは攻撃側には入れずに頂きたいのですが」

 ジンクさん、そうなの?


「いや、例えれば騎士団魔法隊の選抜部隊隊員数名分位です。然しながら、他の面々が些か常識外れなのでねえ」

 百斎さん、そうなんですか?


「大司教殿もそのお一人ですよ? お忘れ無き様に」

 そうだよね、ジンクさんの言う通りだ。


「……へえ、すごいなあ、みたいになさってますけれど、王子殿下もこっち側ですよ?」


「じゅったん様、第三王子殿下のお力を明確にはお伝えしておられないのですか?」


『うーん、それはむしろしない方が良くないかしら。ねえ、茶色殿』

『悩ましい所です』

『僕はセレン様のご友人として殿下の事を尊敬しております』

 セレンさん、ナーハルテ様、朱々さん、寿右衛門さん。

 そして、ありがとう、紅ちゃん。


「え、私の力ってナーハルテさ、の聖補助魔法とか、黒白とか、リュックさんの力で底上げされてるから凄いんじゃ?」


 いけない、素で話してしまった。

 そりゃ一応、一般よりは上、くらいの自覚はあるけれど。


 そもそも、平凡なら選抜クラスの編入試験に合格したり、元邪竜斬りのハンダさんと試合をしたりはできないだろう。


「まあ、私の咆哮にも怯まず、あの外敵とも遣り合えていたのだから、良いでしょう。それに、これも第三王子殿下の良さの一つです」


『確かに』

『うん』『そうね』『はい』『うん、そうね』


「成程」

 学院長先生、精霊珠殿、リュックさん、リュックちゃん、黒白、白黒? あと軍服さん。


 滅多にないリュックちゃんと白黒の両魔道具からのコメント付だ。


『うん、まあいい感じになったから、認識阻害他を解除して、品評会表彰式の続きといこう。白金王子君、白金はっきんちゃん、紫色ちゃん、出番だよ』


 あ、そうだった。 


 打ち合わせ通りとはいかなそうだけれど、まあ、あの断罪劇場よりは上手くやれるかな。




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る