133-王立学院魔道具品評会最終日の私(1)
一夜明けて、今日は王立学院魔道具品評会最終日。
本日は参加者も完全自由行動が認められている。
勿論、自分の開発した魔道具の所にいても構わない。
ナイカさんとカルサイト君には予定を空けてもらえた。
ナイカさん的にはむしろ願ったり、という感じだったらしい。
「ありがとうございます、第三王子殿下。審査員にカルサイトの魔道具の素晴らしさをアピールできるかも知れません」
実は、審査員の一人はここにいますが。
まあ、それは置いておこう。
最終日ともなれば解説受付も無く、参加者が他者の開発した魔道具をじっくり見て回れる様に、という魔道具開発局と王立学院からの計らいの日、という感じ。
逆に、自作以外の魔道具に興味を持たない、持てないような視野の狭さは柔軟性に欠けるとしてそれで評価が下がる場合もあるそうだ。
「我が娘ナイカとも親しくして頂き、助言まで頂戴しましたそうでありがとうございます、第三王子殿下」
「いえ、本当に素晴らしいご令嬢、そして魔道具でした」
「聖女候補セレン-コバルトさん。聖教会本部での努力、聖魔法大導師殿から聞いていますよ」
「ありがとうございます、魔道具開発局局長様。これからも誠心誠意、励みたいです」
本日は、魔道具開発局局長ジンクさん自らお出まし。
実はジンクさん作魔道具なイケメン秘書、ギベオンさんも。
ナーハルテ様にも昨日に続いていらして頂けた。嬉しい。
聖女候補らしいセレンさんのご挨拶の後、気になっていた事をジンクさんに聞いてみた。
「ジンクさん、この品評会の成果の為に、魔道具開発局の予算を増やすにはどうしたら良いのでしょうか」
「ありがとうございます、第三王子殿下。中々に難しい問題ですが、若い才能を多数見られるのは実に有難いですから検討しませんとな」
「まだ新年度は始まっていませんから、申請自体は提出可能ですわね、開発局局長専属秘書殿」
本日のナーハルテ様の傍仕えは、男装執事人型朱々さん。
人型白様の秘書である朱紅さんだと品評会には魅了が甚だしいので。
「そうですな、朱色殿。ただ、開発局には元々予算が多い為、他の局との調整が難しいのですよ」
調整。
うわ、面倒くさ! と言ったらダメなんだよね。
そう、いくら雇用や色々を生み出す可能性が高くても、企業ではなくて国なのだから。
でも、そこを何とかできないかなあ。
確か、コベリン君の冷蔵魔道具の開発資金は、魔道具開発に限らないコヨミ王国の若手開発者育成資金から出ているんだったよね。
「……横から失礼とは存じますがよろしいでしょうか。王立学院学院生の魔道具開発振興の為、でしたらいかがでしょう」
え、ナーハルテ様、すごい。
それ、良い!
「素晴らしい案です、ナーハルテ様! あ、私、学院長先生の所に紅ちゃんを飛ばしましょうか?」
ナイカさんカルサイト君の恋愛模様は見逃せませんとセレンさんも同行。
『キミミチ』のあの自滅系聖女候補は何処へやら、だ。
『マトイ様、あの女とあたしを一緒にするの、やめて下さい……。またあの断罪パーティーのダサダサの紫色ドレス、思い出しちゃった』
『あ、ごめん。でもマトイ様はやめて』
『あ、それはすみません』
「それは妙案です。とりあえず、持ち帰り、局内で相談いたします。ナーハルテ嬢、良い案をありがとう」
「ご息女には普段からとても良くして頂いておりますから。お役に立てましたら嬉しいです」
そんな会話をしていたら、すぐにカルサイト君の魔道具の設置場所に着いてしまった。
「……第三王子殿下、昨日はありがとうございました。ナイカ……嬢も、差し入れをありがとう。局長様、秘書殿もご無沙汰しております。ナーハルテ様、ご足労頂きましてありがとうございます。セレン嬢もありがとう」
「私の秘書、ギベオンとは面識があったね。こちらはナーハルテ嬢の鳥の召喚獣、朱色殿だ。精霊獣、その上高位精霊獣であられる故、礼を尽くす様に」
「……高位精霊獣殿!知らぬとは言え、失礼を!」
めちゃくちゃ丁寧な礼のカルサイト君に、朱々さんは優しい。
「大丈夫よ。それだけあたくしの人型が素晴らしいって事ですもの。美人な執事に見えたって事でしょう? ナーハルテのお付き扱いでもよろしくてよ?」
「めっそうもございません! あ、輝くばかりのお美しさには感嘆いたしましたが!」
うん、朱々さん楽しんでますね。
そもそも、カルサイト君は決して美人執事さんを軽んじていたとかではない事は私にも気配で分かったから、多分朱々さん、カルサイト君が可愛らしいからお気に召されたんじゃないかなあ。
『やだ、この子かわいい……』
聞こえてます。きっと、セレンさんにも。
『分かります! 美人さんがかわいい子をかわいいって思うのはとっても素敵な事です!』
……っておいおい、セレンさん?
「改めて見させてもらうね。ところで、ナイカさんの髪飾りを磨いたのもこの魔道具だよね、カルサイト君?」
よし、第三王子殿下としてというよりはカルサイト君の友人として助け船を出そう。
カルサイト君のこの魔道具は、あちらだったら眼鏡販売店さんでは良く見られる超音波洗浄機に酷似している物。
一輪准教授は小型の物を購入して研究室にも置いていた。
「は、はい! そうです! ナイカ、嬢のお気に入りの髪飾りを洗浄機に掛けさせて頂いたのです!」
「失礼ながら第三王子殿下、私が是非何か私物を洗浄させて欲しいと申し出たのです。安全に、短時間で綺麗に洗浄されて、感動しました!」
「ありがとう、ナイカ、嬢」
うんうん、やっぱりこの二人、いい感じ。
後はセレンさんが言う所のきっかけ作り。
上手く出来るといいのだけれど。
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