132-王立学院魔道具品評会六日目の私(6)
「じゃあ、私が認識阻害魔法を掛けますので、ナーハルテ様はリュックさんとリュックちゃんをお願いします」
「分かりました。ニッケル様、リュック様をお預かりしますね」
リュックさんをナーハルテ様に預ける。
カルサイト君の所に軽食を配達する為に、セレンさんに認識阻害魔法を掛けてもらう事にしたからだ。
「よろしくね」
配達分の飲食物を抜いた後のリュックさんはナーハルテ様の元に。
リュックちゃん収納の筆頭公爵家メイド長巻絹さんお手製サンドイッチ他と共に、是非皆さんに色々味わってもらいたい。
「良し、我ながら上出来。……あの配達の人イケメンじゃない? って振り返る人がたまにいる、くらいにイケメン度を抑えた感じになりましたよ! 服装も働いている人っぽい作業服です」
『ナーハルテ様の補助魔法、今は発動してません。やっぱり、ご自身が頑張って! って強く念じられた時限定みたいですね。この点は、ちゃんと報告します』
セレンさんの同時通話。
ふむ。
私の浄化活動、夢渡りで会ったニッケル君、写しを作るセレンさん。確かに。
『今すぐ何か、っていう訳ではないです。この事をマトイ様にお伝えする事が大事だっただけで』
『そういう事か。じゃあ、浅緋さんと百斎さんによろしくね』
じっと目を凝らしたら、セレンさんの認識阻害魔法を見る事が出来た。
作業服って、正にツナギだ。
学院の運動服はジャージっぽいし、その辺りは馴染み易くて本当に助かる。
……ありがとうございます、コヨミさん。
『私が主殿と共に参りますから、皆様は安心なさって下さい。無論、お先に始められても構いませんので』
「ニッケル様、行ってらっしゃいませ」
「行って来ます!」
いいなあ、この感じ。
ふふ、行ってらっしゃいませ、だって。行って来ますよ全力で。
『主殿、カルサイト殿の元に着く前にお顔をお戻し下さい』
……すいません、にやけてました。
『お早く現実になさればよろしいのですよ。まあ、お二人は共に出掛ける方が多くなるかと存じますが』
お早く。
早ければ卒業して数年後、とかかな。
ええと、それだと、あちらの私の年齢よりも若い? すごい。
『ほら、カルサイト殿が見えますぞ、お顔を』
はい、直します。
……本当、大盛況。
皆さん嬉しそう。
洗浄魔道具なのかな?
……そう言えば、さっきカルサイト君の開発した魔道具を絶賛していた時のナイカさんの頭の髪飾り、小さな映像魔道具。
あれもピカピカだったな。
もしかしたら。
『主殿、人だかりが一段落しましたぞ。急ぎましょう』
あ、はい。
「まいどー! 魔道具開発局局長令嬢様からのご依頼で、軽食をお届けに参りました!」
「え、ナイカが?……って、あ、第三……」
やっぱり、『キミミチ』よりも魔力高いよねカルサイト君。
認識阻害が阻害されていない。
「配達のお兄さん、って呼んで。あと、必要なら手洗いに行ってくると良いよ。番をしてるから」
「ありがとうございます! では、お言葉に甘えて。15分後に説明予定が入っておりますから大丈夫だとは思いますが、お願いいた、するね」
慌ただしく去って行くカルサイト君。
最後だけ言葉遣いが変わっていた。
留守を預かる間に見させてもらったカルサイト君の開発魔道具はやっぱり洗浄用の魔道具だった。
解説にもそう書かれている。
『ねえ、寿右衛門さん。これ、ナイカさんが絶賛するだけの事はあるよ』
『ほう』
まあ、確かに地味と言えば地味なのだけれど。
でも、この魔道具の凄さは、分かる人には分かるよ、絶対。
『カルサイト君、今日は忙しいんだよね』
『はい、ナイカ殿がそう言われていましたな』
だとしたら、明日の最終日だ。
この魔道具にはまだ、伝え切れていない良さがあるよ。
『寿右衛門さん、明日はナイカさんとカルサイト君に少しでも良いから時間を空けてもらおう』
『分かりました。主殿のお心のままに』
さすがは寿右衛門さん。
何かある、って瞬時に理解してくれた。
カルサイト君が戻ったら、休憩スペースで皆と休憩。その後はナイカさんとカルサイト君の予定の調整だ。
明日は最終日。
私も、審査員の本分を尽くさないとね!
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