126-王立学院魔道具品評会三日目の私(2)

『主殿、これで仮登録は大丈夫でしょう』


 法務局仮出張所に飛んでくれた寿右衛門さんのお陰で、担当官が素早くコベリン君の出品場所まで書類を持って来訪してくれた。


 第三王子殿下の御為に、と言うよりはむしろ法務大臣閣下のご令嬢のご婚約者の為に、という感じだったけれど、私的にはその方が良い。

まあ、第三王子殿下も好意的に見られてはいるみたいだからそれは良かった。


 ギベオンさん曰く、

『今は第三王子殿下の昔日のお姿は技巧であられたと感じている者が大勢かと。むしろ、嘗ての貴方様を悪し様に申していた連中が戦々恐々としていて、面白いですよ。この品評会で姿を確認しましたら、この様に念話でお伝えしますね』

 だそうです。

楽しそうでしたよ、ギベオンさん。


 そう言えば、コベリン君も、「一般寮の大恩人の第三王子殿下にお目にかかれまして本当に感激です!」と言ってくれてたなあ。


 まぬけ王子、この表現が既に懐かしい。

あと、ニッケル君の良さを分かっている人、例えばカルサイト君とかもだけれど、意外と多いんだよね、実は。


「え、開発案の提出者名には緑様のお名前は外せません!」


『いや、これはコベリン君の案に決まってるだろうが! 俺は何もしてねえ!』

 うーん、向こうで微笑ましい言い争いが。ここは、出来る伝令鳥さんに出て頂こう。


『畏まりました』


 早速、二人と法務局の担当官の間に割って入る寿右衛門さん。


 ……あ、すごい、さすが。

あっという間に担当官さんがコベリン君にサインをしてもらってこちらに一礼して書類を携えて戻って行った。


『権利一切を頂かず、あの冷蔵魔道具のみ頂戴する事にいたしました。勿論、これからの開発に必要ならばそれ以降で良しとして。更に、今後の魔道具の試作品と市場に出す品を優先的に適切な値段で用意して頂く事、いずれ開発に伴い雇用が生じる際には多様な地域から募る事を入れて頂きました。宜しいでしょうか』

 まだ訂正は可能です、と言う寿右衛門さんに、ありがとうと伝えた。


コベリン君的には少しだけ納得がいかないみたいだけれど、一応了承してもらえたから良かった。


 特に、最後の雇用面。

コベリン君の会社の関係者だけに利権が集中、又は開発品に真っ先に目を付けた連中だけが儲かるとかはいけないからね。

さすがは寿右衛門さん。第三王子殿下としても謝意を伝えたい。


『こういった若い活力が三の工業区、四の商業区だけではない他の街々の発展の契機になっていけば良いですなあ』

 本当に、さすがの慧眼ですね寿右衛門さん。


「もう少しご覧になられますか、王子殿下。それから、次のご予定は何日目になられますでしょうか」

 感心していたらギベオンさんに尋ねられたので私はこう答えた。


「あ、はい。まだ見学したいし、会場周りの露店にもまた行きたいです。あと、次は六日目に伺います。……婚約者を同伴しても良いでしょうか。それから、最終日は朝からで良いんですよね」


「分かりました。六日目は私が、最終日は開発局局長がご案内いたしますのでよろしくお願い申し上げます。ご婚約者様のご同伴は勿論です。どうぞどうぞ」


『余計な連中が第三王子殿下に近付いてきましたら、私、そして最終日は局長にお任せ下さい』


『ありがとうございます。無論、我々もご協力いたしますので』

『ええ。』『うん』

『おう!』


 会話の穏やかさと、念話の不穏さの差がすごい。


 ええと、皆さん、お手柔らかに。


 あと、緑簾さんには主としてお疲れ様の意を込めて発表会前日と同様にまたたくさん奢りますよ! 皆も楽しんでね!


 ……ところで、特に六日目はナーハルテ様とのデート(一応)も兼ねてますから、そこはほら、よろしくね?













  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る