幕間-12 獅子騎士様と小さな鳥達
「おや、かわいらしいお客様だね」
修練から帰ると、窓に小さな来訪者達が。
学院同様、自分が暮らす高級学院生寮にも外敵に対する防御魔法は多重掛けされている。
噂に聞く聖教会本部の宿舎と比肩する程とも言われているが、それを物ともしないこの子達はやはり精霊獣殿なのだろうと思う。
『『『『こんにち
惜しいな、は、だったら完璧だったのだが。
この子達は自分、ライオネア・フォン・ゴールドの心の姫君にして最高の友、ナーハルテ・フォン・プラティウムの伝令鳥であられる高位精霊獣朱色殿の血族の紅と赤の鳥達。
代表的存在だった紅殿は聖女候補セレン嬢の伝令鳥となり、実にかわいらしく活動をされている。
ヒヨコ軍団の残る赤鳥四鳥達は修業の傍らこの様に朱色殿のお手伝いをしているらしい。
自分もナー姫に頼んで会いに来てもらった事がある程、精霊界との移動は上手だ。
「今日はどんなご用件かな」
全身に清浄魔法を掛けてから窓を開けて中に入ってもらう。
自分も一応は選抜クラスに在籍する者であるから、多数の魔法付与がされた窓を魔力で開閉する事も可能だ。
『お使いでちゅ。お手紙をどうぞ』
『朱色ちゃまのご主人ちゃまからでちゅ』
『あちらの王子様からでちゅ』
『ご覧下さいライオネアちゃま』
皆、少しずつだが言葉が達者になっている。
差し出された書状を受け取る。
「ありがとう。どうぞ召し上がれ」
卓上の菓子入れを空中に浮遊させ、胡桃や様々な品をお礼として皆に。
『『『『ありがとうございまちゅ、頂きまちゅ!』』』』
……かわいらしいな。おや、王子様とは、こちらのではなく本当にあちらの王子様だったのか。
『あれ、ライオネアちゃまは聖魔法をお使いなのでちゅか』
「いや、内々に魔法の指導を頂いている方が聖魔力を有しておられるから、風魔法による応用をご教示頂いたのだよ」
さすがは精霊獣殿。
ペーパーナイフよりも美しい切り口の開封魔法をご存知だったとは。
軽く内容を確認したら、少し前までのあの王子様とは比べものにならないくらいに謙虚な、且つ、生き生きとした様子が窺えた。
筆跡も伸びやかだ。
この方であれば、恐縮ながら友として剣を打ち合いたいものだとさえ思う。
そしてやはり、文面からは
そうか。風魔法に気付いたこの子には見覚えがある。
皆かわいらしいヒヨコちゃんだと思っていたが、以前の茶会で自分の所に来てくれたのもひょっとしたらこの鳥殿なのだろうか。
「……自分も君達に使いをお願いしても良いかな。」
『『『『良いでちゅ!』』』』
皆声を揃え、元気にお返事をしてくれた。
身体の修練については自信があるが、魔法の鍛錬は疎かにしているという自覚が自分にはある。
年度末の試合の相手は、剣だけでは倒せないかも知れない。
そう、遠い場所から友人の事を思っておられる方が自分への文を書いて下さっている。
自分もまた、鍛錬の監督をお願いせねばなるまい。
……我が師匠に。
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