122-通知へのお返事とお誘いの私

 王立学院魔道具品評会。

 品評会前日に主催者並びに審査員が集まり、下見をした後、品評会終了日に投票。翌日が結果発表。品評会の日程は約1週間。


 ……以上、『キミミチ』の基礎知識とハイパーの品評会の項目から。


「……ええと、魔道具開発局局長さんへの審査員受諾の件は、寿右衛門さんにお任せしていいのかな。あと、特許関係のお礼も」

『はい、大丈夫です。お誘い頂いた開発局局長令嬢並びに副局長令息へのお返事は日付を明記せずに、品評会に伺う旨があれば宜しいかと。審査員就任の件は終了日迄の秘匿事項ですからな』


 結局、私が直接対応する手紙や葉書はあの三枚の品評会の葉書だけだった。


 私宛の文書に関しては、王宮の文書専門部署に対応してもらえる物は全てそちらに行くように、騎士団特級騎士舎用と申請が通り常備できる様になった聖教会本部準々貴賓室用の第三王子殿下専用レターボックスとを併せて寿右衛門さんが更に調整した魔法を掛けてくれた物と交換、設置となるらしい。


『学院は個人的な文書に関して厳しい為、この様な事はないのですが、筆頭公爵家にも同様の物を進呈する方向でマキ殿と調整中です』

 そう。

 王立学院はそういうやり取りに厳しい、と言うか、精霊珠殿のお力で不可能。例えばそれが伝令鳥のやり取りでも、邪な場合はすぐに弾かれる。


 獅子騎士様応援会のライオネア様への応援の手紙、認定された差し入れへのカード等は正に特例だね。


「むしろ、寿右衛門さんと巻絹さんがそんなに警戒する様な手紙が寿右衛門さんの魔法防御に弾かれなかったのが意外だよ」


『……悪意や敵意ではなく、下心や曲がった誠意は弾けない場合がございまして。先般、マキ殿と話し合う機会がありましたから、双方で意見を交わしまして中々の物となりそうです』


「……主権限で無理矢理、とかではないのだけれど、手紙とかがどんな内容なのか聞いても良い?」

『お答えしますとも。主殿に釣書をお渡ししようとする物、自らを売り込もうとする物が多いですな。筆頭公爵家におかれましては、主殿の婚約者を辞退するべきという内容と、他の高貴な相手を紹介したいという物が多い様です』

 

 ……何それ。

「え、何それ! まだ私がナーハルテ様の婚約者に相応しくないとか言ってる人がいるの? 失礼だなあ、気持ちは分かるけど!」


『『お分かりになるのですか』』『なるんだ』

 寿右衛門さん、黒白、リュックさん、息ぴったり。


「いや、ね? ニッケル君はいい人だけれども、確かに心配だ、という方もいらしただろうと思うよ。私もね、そんな胸を張って、とかではまだないかも知れないよ。第三王子殿下の偉業、とか言われてるけど、皆が助けてくれてのものだし。だからと言って、失礼だよねえ。家と家の話での解消が可能になったとは言え、私達は婚約中で、しかも、……ね?」


『はい。主殿とナーハルテ様とは強い絆をお持ちですし、両家もこの婚約が婚姻になる事を強く望んでおられます』


 ありがとうございます、寿右衛門さん。

 私自身がそこまで断言できたら嬉しいのだけれどね。

 まあ、そんな感じ。


『茶色さん、相手の悪意は本当に感じなかったのですか?』

『ええ、残念ながら。本気で、主殿のご婚約者には自らの血縁が相応しいとで行っている様です。又は仕える立場の者等が。……それをも弾ける様に改良しております。その上で、今後の対応は王宮にお任せしたく存じます』


『リュックちゃんに……聞いてみる。……うん、第三王子殿下の真のお姿を皆が知った今、筆頭公爵家だけがその才を囲い込まれるのは国の民として糾弾せざるを得ない……とか色々。マキさんとご主人の執事長さん、「大書店で購入した本が早速活用できますね」って言ってるらしいよ』


 ねえ、皆で何を話してるのかな。

 さすがに高位精霊さんと優秀な魔道具さん達との内密の念話を聞く事ができる程、私は有能な念話使いではありませんから。


『王命ではない、更に王位継承権が格段に低いとは言え、王子である者と、その婚約者、しかも筆頭公爵令嬢を軽視していると言って良い。その様な輩は全て王宮に報告願う、との事でございましたのでお任せ申し上げます。関係ない、他者が行った事などと言う者が多いかも知れませぬが、抑止力にはなりますでしょう』


「とりあえず、私とナーハルテ様は、そういうのを受け取らない様にすれば良いのかな」


『はい。直接の対応につきましては私と白黒がそれぞれ弾きますからそれは心配ございません。しかしながら、証拠となりますから情報収集は必要です、と茶色殿とリュックさんと話しておりました』

『リュックちゃんに聞いたら、筆頭公爵家さんもそんな感じで対応してるしこれからもするって』


 そういう事か。

 すごいな、鉄壁の対応。


 あ、じゃあ私はナーハルテ様へのお誘いに一言足そうかな。


『……主殿、まさか、何だかお相手紹介みたいなのがあるみたいですが、私はナーハルテ様一筋です、を丁寧に書かれた……といった内容にはなさいませんよね?』


 あれ、寿右衛門さん、圧が。圧があるよ?

 ダメなの? ええと、勿論ニッケル君仕込の流麗な文章にするよ?


『『『普段が普段なのに手紙だけ大きく出るのはやめなさい(やめなよ)!』』』


 寿右衛門さん、黒白、リュックさん、ご尤もなツッコミありがとう。


「……そうだね。魔道具品評会へのお誘いと、いらないご紹介は皆が適切に処理してくれているからお互い惑わされない様に己を律していきましょう、みたいな感じでどうでしょう」


『『それならば』』『うん』


 無事に許可が頂けたので、この内容にします。


 ……品評会、色々な意味で楽しみです。

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