121-魔道具品評会開催の通知と私(2)
『ただ今帰りました。……主殿?』
「起きてるよ、配達ありがとうね。……あとこれ、寿右衛門さん宛」
寿右衛門さんがたった今配達してきてくれたあのスズオミ君宛の手紙の下に優先順位の高位順に揃えて渡してくれた葉書の内、やっぱりこれからだよな、と思った一番上の一枚に魔力を加えてみた。
すると、あちらで言うなら圧着されていた葉書を剥がした時みたいな感じでぺらりと二枚に分かれて中からカードが出現したのだった。
それが今寿右衛門さんに渡したそれ。
宛名は茶色様へ、とされたカード。
以前頂いたのと同じ、テラヘルツ家の家紋入りだから差出人と同じ方からの物で間違いないだろう。
『ありがとうございます、頂戴いたします。……ジンク・フォン・テラヘルツ魔道具開発局局長殿から私にですか』
羽で受け取ったカードに寿右衛門さんが魔力を流すと、文面が現れたらしい。
「どんな内容か聞いても良い?」
『無論にございます。個数計測器と保存袋、そして腕時計の構造に関する特許に関して。……無事に特許申請が通りました様です。有難い事ですな』
ああ、あの計測器と保存袋と、あと腕時計も?
まあ、自由にして頂いて良いのだけれども。あれ、有難いの?
『はい。主殿の御名の特許申請にございますから』
え。
いや、私じゃなくてこの国の機関の名前でご自由に、のつもりだったのだけれど。
『ええ。ですから魔道具開発局並びに騎士団魔法隊は主殿がお認めになりました故に自由な商品開発等が可能です。然しながら、他の機関は必ず魔道具開発局又は騎士団魔法隊隊長の許諾が必要になります。そして、特許出願の際の代表特許申請者が主殿の個人名なのでございます。正に随意に従って行われた処理に存じます』
「うーん、それって、魔道具開発局と騎士団魔法隊の為になるのかな。私個人が得をしたり、利益を得る事にならない?」
『……魔道具開発局局長殿は、主殿がそう言われる事を想定しておられます。主殿とリュック殿に頂戴しました物を参考に自由な開発をさせて頂けますからとても助かります故どうか本件につきましてはご納得頂けます様にお伝え下さいとも書かれておりますよ』
……そう? ならいいのだけれど。
あ、開いた方には私宛の文面があるみたい。
「ええと。……魔道具品評会審査員にご依頼をいたしたく……って」
ええ?
『名誉な事ですな。是非お引き受けなさいませ』
『たくさんの魔道具、拝見したいです』
『うん』
寿右衛門さん、黒白、リュックさん、乗り気だね。
『キミミチ』だと審査員、シルエットモブだったなあ、確か。
カルサイト君攻略ルートだと、ナイカさんがセレンさんの魔道具を認めるか認めないかがメインで、最優秀開発者(第一位)は必ずナイカさんだったからなあ。
そんなシナリオだからイケメン令嬢攻略ゲーム、って呼ばれていたんだよね。
いや、『キミミチ』大好きだけどね!
まあ、魔道具開発局局長令嬢さんナイカさんの魔道具が『キミミチ』と同じなのかどうか、とか、ナイカさんとカルサイト君の仲とか、気になる事はあるし魔道具も直に見たい。
『お二人からの葉書は主殿が魔力を流されると文面が浮かぶ様ですな』
あ、うん。
二枚同時に魔力を流したら、どちらからも是非ご覧頂きたいですと書かれていて、ナイカさんの方には是非ナーハルテ(様)と共にご来場下さいと嬉しい一言が添えられていた。
あ、そうか。ナーハルテ様とのお出掛け。
居酒屋関山に行くのはライオネア様とスズオミ君それから二人のお父上同士の対決の後になるかなあ、とか思っていたのだけれど。もしかしたらこれって。
『お誘いは理由がなくともなさって良いのですよ。ご婚約者なのですから』
いや、だから寿右衛門さん、読んでないのに私の心を読み過ぎ。
まあ、でもきっかけがある方がお誘いはしやすいんですよ、やっぱり。
少なくとも私の場合は、ね。
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