120-魔道具品評会開催の通知と私(1)

『ただ今戻りました。……休憩をありがとうございました。こちら、コッパー侯爵令息にお渡ししますニッケル様からのお手紙と、その下にはレターボックスにありました手紙等、優先順位が高いと思われます順にして重ねてございます。……それからこちらは市場の朝市に寄り、仕入れました差し入れにございます。無論、浄化並びに生鮮保持魔法は付与済です』

 大書店のお買い物の翌日。

 寿右衛門さんはお土産付で元気に帰宅。


 もしかしたら、と思って

「寿右衛門さん、たまには精霊界に戻って休んだ方が良いのかな」と訊いたら

『魔力が安定しておられますから体調的には主殿の傍にいる事が一番体を休める事になるのですよ』と返された。


「え、じゃあ昨日は本当に辛かったとか?リュックさんも黒白もスマホも何も言わなかったから、私めちゃくちゃ熟睡してたよ!」


 逆に心配になり思わず叫んだら、実は。

「いえ、皆が私の不調に気付かない事はあり得ませんのでどうかご心配なさらずに。実を申しますと、インディゴと夜の遠乗りに行っておりました。騎士団特別厩舎の近くに私が亜空間を作りまして」

 え。良いなあ!


 ……って、私がこうなるのを見越してこっそりと、だったのかな。

 まあ、私がいたら騒いでしまって、ひたすら疾走するという深夜のお楽しみが半減してしまうかも知れないね。


「申し訳ございません。……その様な塩梅でインディゴの分体を騎士団特別厩舎に置きまして、夜の疾走を楽しみつつ、夜明け前に本体共々もどりまして、先刻まで共に休んでおりました。本日はインディゴも休暇ですから」

 分かりました。


 たまには秘密のお休みを楽しんでもらうのも良い事だね。秘密ではなくなっしまったけれども、それはそれで。


 ……とまあ、先日の大書店への来訪後はこんな感じでめでたしめでたし、となったのでした。


 そんな感じであの大書店への来訪から数日が過ぎました。


 現在の私は、寿右衛門さんが渡してくれた手紙の内、返事が必要な物についてどうしようかなあ、と考え中です。それから、手紙を手書きで量産した為、絶賛書き疲れ中でもあります。

 聖魔法の自動書記機能魔法が私にもあればなあ、という気分です。


 あ、騎士団特別厩舎から戻った寿右衛門さんには早速、預かってくれていたスズオミ君への手紙と大書店のお土産の配達をお願いした。


 それから、セレンさんへの念話のコツのお礼の相談の手紙(あとスズオミ君の分と一緒に受け取ってきてくれたニッケル君からセレンさんへの手紙も。さすがは寿右衛門さん!)の配達も。


 それが済んだら私への日々の生活のアドバイス等をしてくれて、寿右衛門さんには色々と、本当に色々と助けてもらえて、本当に有難いなあと改めて感じたのでした。


 あ、寿右衛門さんの適切な指示で筆頭公爵家宛のカードをきちんと書いていた事もリュックさん、黒白とそれから書いた私、皆でまとめて褒めてもらいました。嬉しい。


 嬉しいけど、あれは寿右衛門さんの指示が素晴らしかったからだよ、と言ってはみたものの、寿右衛門さんは私達の成長を喜んでくれていたみたいだったなあ。


 そんな感じで、寿右衛門さんが増やしてくれた飲食差し入れを堪能した後は、まずは寿右衛門さんへの報告その他諸々、次にはレターボックスに入れられていたという手紙等への対応をする事になりまして。


『優先順位が高いと思われるこちらは、必ずご覧になって下さい。こちらで対応できるものは致します。……リュック殿、黒白殿、仕分けを頼めますか』

『うん』『はい』


 リュックさんと黒白、手紙の仕分け、できるんだ……。


 まだまだうちの魔道具には驚かされそうだなあ、とひたすら感心。


『そして、これも大切なお役目。禁地に赴かれた皆様に書状をお出ししましょう』


 そう。これもさすがのお手並み寿右衛門さん、だった。


 浅緋さんとか皆様にも、親しき仲にも礼儀あり、という訳できちんとした物をお渡しできる様に、封筒や便箋の選び方から助言をしてくれたのだから。


 騎士団魔法隊の皆さんの個人の名前や役職も教えてくれて、まとめて千斎さんには手紙、皆さんには個々人にカード。

 文面も一つ一つ、微妙に変えて。ハンダさん、カバンシさん、緑簾さんにはお酒も添えた。

 一大事業を終えられ、体を清められ、居酒屋関山でお疲れ様の飲食をされた後、団体で戻って来られつつある皆さんに、良いタイミングで手紙等をお届けできそう。


『主殿、禁地へ赴かれた皆様への手紙等を良くしたためられましたね。配達はお任せ下さい』

 ……という訳で、禁地に行かれた皆さんへの手紙、カードを気合いを入れて書きました。


 そして頂きました、寿右衛門さんからの賞賛!

 あ、あちらで愛用していたペンポーチの中の文具一同にも感謝してます。

 勿論、ペンポーチにも。


 こちらの主流の筆記用具である万年筆は格好いいけど、やっぱり愛用のボールペン、最強。


 材質がこちらの世界の物に変化していながら、書き心地、インクの乾き具合、やっぱり良い。とりあえず持って行く事ができるならあれもこれもとリュックさんに突っ込んでくれたお姉ちゃんに感謝。


 ……手が痛い。


『……はい、今筋肉をほぐす術式を掛けましたので、少し楽になさっていて下さい。横になられて手紙を読まれても構いませんよ』

 ありがとう、寿右衛門さん。


 でも、寿右衛門さんが優先順位高位の書状としてニッケル君からのスズオミ君への手紙の下に揃えて渡してくれた葉書、全て同じ書状なんだよね。


 コヨミ王国王立学院公式の印章付の葉書。


 コヨミ王国王立学院魔道具品評会開催のお知らせ。そして開催日時の記載。


 優先順位は上から

 ジンク・フォン・テラヘルツ。

 魔道具開発局局長さん。侯爵さん。

 ナイカ・フォン・テラヘルツ。

 魔道具開発局局長令嬢さん。侯爵令嬢さん。イケメン令嬢のお一人。

 カルサイト・フォン・ウレックス。

 魔道具開発局副局長令息君。侯爵令息君。ナイカさんの婚約者君。


 ……多分、それぞれ術式を施してあるんだろうなあ、という雰囲気の葉書。


『主殿、私が戻りましてから真の内容をご確認なさると良いかと存じます。……少しお休みなさいませ』


 やっぱり、寿右衛門さんも何かを感じてるんだね。


 うん、じゃあそうさせてもらおうかな。


 頭と体が落ち着いてから、きちんと読ませてもらうね。


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