119-ニッケル君からの手紙と私
本当に、色々あったなあ。
部屋のベッドの上で昨日の事を回想してみる。
大書店ではコヨミさんとの対話、支配人さん
そうだ、巻絹さんの雰囲気は寿右衛門さんに似ている所もあって、話が弾んでいたのが印象的だったなあ。
『
そうだね。
白黒はコヨミさんに助けられた文献達の集合体である大書店の支配人さん達の代表的存在さんが作成した黒白の複製物(みたいな魔道具)にしてナーハルテ様専用の腕時計(勿論特別付与加工済で今後成長の可能性大)。
そして、私とお揃い(嬉しい)。
黒白もコヨミさんの意思に触れて、本人(?)曰く、精神の浄化を受けた気分だと言う。
インディゴの御者として筆頭公爵家にナーハルテ様達をお送りした寿右衛門さんは騎士団特別厩舎にインディゴを連れて行き、そのまま少し休憩を取っている。
スズオミ君宛の手紙はきちんと巻絹さんから預かってくれたらしい。さすが。
それでもいくら寿右衛門さんとは言え飛び回りまくりで疲労が蓄積したのだろう、連絡の念話をもらった私は黒白もリュックさんもいるから、と騎士団特級騎士舎のいつもの部屋で寿右衛門さんを待つ事にしたのだった。
最近は聖教会準々貴賓室に滞在する事が多かった
秘密は多いけれどとにかく色々な意味で頼りがいがある支配人さんに案内してもらって、肉、野菜、海産物の焼き串や瓶ビール、具材沢山のサンドイッチ、サラダその他諸々を大量購入して(支配人さんは鮮度を保つ保持魔法も掛けてくれた)騎士団特級騎士舎に持ち込んだ。
そして、入浴後に多分オーダーメイドのニッケル君の私服から部屋着に着替えてとりあえず昨日は終了。
即睡眠。
一応少し飲食した残りはリュックさん預かりだったから更に新鮮安全状態。
爽やかな目覚めで、今朝はまず、ニッケル君からの直筆の手紙を拝見する事にした。
私専用のレターボックスの手紙等も確認しないといけないのだけれど、それについては寿右衛門さんが昼くらいに戻りがてら持参してくれる事でしょう。
椅子を引いたら、机の上にニッケル君からの手紙。
ありがとう、まだトート型のままだったリュックさん。
手元用の灯り魔道具を点灯させて、と。
「ええと、ペーパーナイフ。……あれ?」
ペーパーナイフを取ろうとしたら、綺麗に封が開いていた。
不思議だけれど、おかしな気配もないから普通に便箋を取り出す。
……やっぱりこれ、私が向こうでお姉ちゃんと二人で私が選んだ物だ。
まとい殿へ、で始まる手紙は、私の字で書かれたニッケル君からの直筆。
この手紙の封はしぜんに開いただろうか、という問いかけから始まって、私の魔力を流したら封が開く術式を作成したので試してみたというもの。
あとは、ニッケル君とチュン右衛門さんとの念話は相変わらず順調らしい事。
室内灯に灯りを
私以外のゼミ生希望者が一輪先生に追い返されたり、お姉ちゃんとチュン右衛門さんが相変わらずだったり、『キミミチ』のニッケル君達の扱いが酷すぎて、あれではまとい殿が最初から
「そうか、術式。……ジンクさんに相談してみようかな」
魔道具開発局局長さん、ジンク・フォン・テラヘルツ侯爵。
この間お会いした時、術式とか魔道具構築とか、そういった相談はいくらでもして頂いて構わないと言って下さったのだ。
食料は十分だし、寿右衛門さんが戻るまでは昨日の戦利品を読もうかな。
楽しみだなあ。
『……いえ、筆頭公爵家にお出しするカードに署名をなさって下さい』
へ?
あ、そうか!
『寿右衛門様が雛型を用意して下さっていますから、私が少し文章を変えました。ナーハルテ様に何か一言お足し下さい』
有難い。
備え万全の執事雀さんとできる魔道具腕時計に感謝、だ。
筆頭公爵家様宛は充実した時間を二人で過ごせた事と婚約者ナーハルテ様を少し遅く帰宅させた事へのお詫び。
見習いたいくらいにとても流麗な内容だ。
丁寧に署名を、と。
ナーハルテ様には定型文に続けてお目にかかれて嬉しかった事とまた行きましょうね、のご挨拶。
本当は今すぐにでも、とか書きたいけれど我慢。
これもやっぱり丁寧に署名。
『はい、入れて』
リュックさん(まだトート型)が待機してくれていた。
ええと、これはリュックちゃんに転送してくれるって事かな。
『そう。リュックちゃんが転移場所を融通してくれるから安心して下さい』
助かる!
本当、出来る魔道具に囲まれて、私は幸せ者だよ。
ニッケル君への手紙の返事は勿論メールでも送るけれど、私も書いてみようかな。
いつか、届くかも知れない直筆の手紙。
今書いたらきっと、寿右衛門さんやリュックさんや黒白やスマホの事を自慢しまくりな内容を添える事になるだろうね。
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