105-聖教会本部準々貴賓室の私達
「黒白が何とか落ち着いてくれて良かったよ。不安にもなるよね。もう大丈夫だね」
黒白は回復してくれた。
魔道具とは言っても感情がきちんと存在するのだから、立派な仲間。安心した。
ハーブティーに加えて、魔道具開発局局長さんが案内してくれたパティオの空気が良かったのも幸いしたのかも知れない。
鳥さん、はちょっとだけ気になるけど、もしかしたらこっそりと獣の死骸を埋葬していた、とかかも知れないよね。
今は聖教会本部の準々貴賓室にいる。
特級騎士舎の方が私は落ち着くのだけれど、黒白の体調を考えて寿右衛門さんの勧めで魔道具開発局を出た後、こちらに転移したのだ。
『もう、話すのも苦しくない……です。ハーブティーはすごい……です。』
黒白、話すのも上手になったねえ。
『精霊王様や他の方々が素晴らしいお方であられると改心できましたのも、最も身近な主殿のお陰でありましょう。良かったですなあ、黒白
『ありがとうございます。ただ、黒白でかまいませんよ。緊張してしまいます』
『ならば、臨機応変と』
『はい』
あ、寿右衛門さんの殿呼びだ。これで本当に黒白も仲間だね。
『さて、主殿。それではナーハルテ様をデートにお誘いする準備をいたしましょうか』
え、待って。何でそうなるの?
『何で、と申されましても。ご予定では魔道具開発局局長殿との面会よりも先の筈でしたが』
いや、そうだけど。
指輪とかそれ以外の装飾品が出現したとか、大変な事になってるし、それに、禁地で文字通り精魂込められている皆様を置いて、ナーハルテ様をお誘いとかできないって。
『それでは、皆様に確認して参りましょう。大書店ならば私もご案内できますから。予約も恐らくは』
「千斎さんの代わりに寿右衛門さんが案内してくれるの? 予約もなの? 心強いけど、皆さんが反対されたら延期にしようね」
『勿論です。ですが、そうはならないと思いますが。そうでした、主殿、皆様への差し入れをリュック殿から頂く許可を頂戴出来ますか?』
「それは良い考え! リュックさんと相談してどんどん持って行って!」
『ありがとうございます』
さすがは白様の直弟子、寿右衛門さん。
リュックさんが出してくれたかなりの量の荷物をマジックバッグ無しで自分の羽に収納している。
『ついでに、主殿が益々お健やかにお暮らしになれます様に備品も買い足して参ります。領収の書類がもらえる物は頂いてきますね』
あ、はい。領収書の概念があるのはすごいな、コヨミ王国。
こういうのは、財務大臣さんの管轄かな。
まだお会いできていない財務大臣さんとイケメン令嬢……大臣さんのご令嬢様もすごい方なんだろうな。
『キミミチ』の通りだと、医療大臣さんと医療大臣さんのご令嬢と一緒にお会いする事になるのだろうか。イケメン令嬢様、残るはあとお二人だ。
まあ、魔道具開発局局長さんとイケメン令嬢様、攻略対象者の婚約者君と会うまでもそれなりに時間が掛かったから、まだ先の話かな。
『では、行って参ります。リュック殿、黒白殿、頼みましたよ』
ユラユラ。
『はい』
「行ってらっしゃい」
さて、と。
この準々貴賓室は、豪奢な絨毯、麻の上掛け、絹の寝具等、特級騎士舎よりも全体的に豪華。
準貴賓室と違うのは傍仕えの人がいない事だけ。掃除、洗濯は準々貴賓室担当の方々がしてくれる。
さすがにキッチン設備は無いから、食事作りは出来ない。
ただし、魔道冷凍冷蔵庫と魔道湯沸器(電気ケトルみたいな感じ)や茶器、お皿やカトラリーは備え付けられていて、軽食は好きに楽しむ事ができる。
聖教会本部の食堂も使えるし、持ち込みも自由。
本当は宿舎住まいになったセレンさんと待ち合わせて食事をしたりもしたいのだけれど、第三王子殿下と今一番聖女様に近い(かも知れない)聖女候補さんというお互いの立場上それも難しい。
「あ、そうだ。お礼状。スコレスさんに皆で書こうか?」
パタパタ。
『賛成です』
一応、きちんとした書状の書き方は前世の知識とニッケル君の知識でマスターできているから、あとはリュックさんと黒白からのお礼の気持ちを伝えれば良いと思うんだ。
リュックさんは、スコレスさんのお好みに合いそうなもの、黒白は念話でハーブティーのお礼を伝えてくれたから手紙に書き加えた。
あとは、一応寿右衛門さんに内容を精査してもらってから封をしよう。
まだ一日の終わりには早いけれど、今日は中々充実していたんじゃないかな。
『少しお休みなさいませ。寿右衛門殿が在室でしたら、キットそう言われましたよ』
何だか、黒白がミニ寿右衛門さんみたいだ。
私、初対面の時はあんなに恐れられてたのに不思議だね。
意思を持つ全ての魔道具と仲良くなるとかは無理なのだろうけど、黒白みたいな魔道具が少しでもいてくれたらいいなあ。
そんな事を考えながら、寿右衛門さんが戻るまで、遠慮せずに横にならせてもらう事にしたのだった。
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