80-証明書と私

「他国に赴かれます際に、こちらが査証となる事もありましょう」


 皆が戻ったので、スコレスさんが禁書庫のカードに付与をしてくれた。

 これで、禁書庫のカードは銀階級取得冒険者の証明書を兼ねる事になった。


「王家の方? そんなの何とでも言える!って頭から疑う奴もいるからな。力が全て、みたいな連中にはこっちの方が利くぜ。潜入の時も便利だ。冒険者の若夫婦、揃って銀階級とか。色々使えるぞ」


 ハンダさんの言う事には一理あるなあ、と思う。

 新聞の知識くらいだったら、第三王子殿下だ、って言われても知らんがな、って人もいるよね。


 それにしても、若夫婦。潜入調査。

 ナーハルテ様、どう思われたかな。一応お互いにおめでとうございます、を言い合って、選抜クラス編入試験の合格も喜んで頂けたのだけれど。


「ハンダ様、潜入捜査、楽しそうですね。スコレス様、わたくしの証明書にもギルドマスター御自らの付与をありがとうございます」

 あ、良かった。普通に嬉しそう。


「いやいや。ナーハルテ様の証明書は召喚士資格証明書も兼ねておるでな。お二人共に、それぞれの魔力をしっかり受けておるから、悪用される事もない。おまけで自らの主の元への自動帰還機能も付与しておいたからの」


「「ありがとうございます」」

『おめでとう、ナーハルテ。第三王子殿下も、さすがはあたくしの主の婚約者様だわ』

 あ、朱々さん、ありがとうございます。


 今日は朱色の美しい孔雀さんバージョン。確かにあの素敵秘書さんバージョンだと、中央冒険者ギルドの冒険者さん達が騒ぎそう。


 あとは、リュックさんとリュックちゃんに魔道具スキルカードを見せてもらった。

 空間魔法、時魔法、保存機能並びに複製作成機能魔法等。何か、不明多数、ってあるけど。これはツッコミを禁ず、って事かな。

 リュックさんのカードには禁書庫の許可証の記載も。これは千斎さんの付与だね。


『我々も主殿の召喚獣として登録されましたので、安心して下さい』

『専任の召喚獣医師がいるのはいいな。中央冒険者ギルドの名前は伊達じゃねえ、って事か』

 寿右衛門さん、緑簾さん共に全くの健康体。良かった。

 朱々さんはあんまり乗り気じゃなかったらしいけど、ナーハルテ様に説得されてしぶしぶ健康診断を受けてくれたみたい。


『ここの召喚士、召喚獣が大好きみたいで。健康診断を受けるのは嫌ではなかったのだけれど、召喚士を外に出すのが大変だったわ』


「申し訳ない、朱色の召喚獣殿。あの者は召喚士としては有能なのじゃが。いらして頂いた事さえ僥倖であるのに。ギルドマスターとしてお詫びしよう。きちんと叱っておくでの」

『そうして下さる? でもまあ、筆記試験は確認の為、実力は申し分なし、ってナーハルテの力をきちんと理解していた事は評価できるから、余り叱ってあげないでね』

「ありがたいお言葉、痛み入りまする」


 ええと、あとは。


『ああ、主殿の王立学院高等部選抜クラス編入試験合格証明書ですね。それは私が』


 え。


「それじゃあ、俺らも」

「了解した。」 

「はい。」

「そうじゃの。ほれ、ナーハルテ様も」

「はい。この書状に名を連ねられます事、嬉しいですわ」


『それでは。』

 寿右衛門さんが羽を1枚落として、それに魔法を掛けた。

 すると、きれいな獣皮紙に変化した。


 鮮やかだなあ。……あれ。あと、何か聞き逃したらいけない事が聞こえた気がする。


『精霊王様直参高位精霊獣が直弟子、寿右衛門。確かに合格証明書に記名いたしました。主殿、私が、あとは魔法と召喚魔法の実践と申し上げました通りでございましたね。おめでとうございます』


「並びまして、コヨミ王国筆頭公爵令嬢ナーハルテ・フォン・プラティウム、首席学院生として、重ねて記名申し上げます」


 はい?


 ぽかーん、な私に、リュックさんがやれやれ、という感じで冊子を出してくれた。


『王立学院高等部選抜クラス編入試験の手引き』

 あ、これ。


 私が断罪のご褒美に私とセレンさんとスズオミ君の編入試験受験資格をお願いした時に学院長先生に頂いた物だ。

 試験は年度末なんだね、ふむふむ、って確認したままだったっけ。

 付箋が付いてる。

 紙が、こちらの世界の製造紙になっているけれど便利なのは変わらない。ありがたい。


 ええと。編入試験監査資格について。


 あくまでも一例。これらに加え、王立学院学院長の選任並びに精査が必要。以下、王国騎士団隊長格、大将格、冒険者ギルドギルドマスター、金階級冒険者以上の資格者、高位精霊獣、学院首席学生……。


「……すみませんでした。全く、読んでおりませんでした」


「「「「やっぱり」」」」

「『そうでしたか……』」

 スコレスさん、千斎さん、ハンダさん、カバンシさん。

 ナーハルテ様、寿右衛門さん、皆さんごめんなさい。


『いや、まあ、でもよう。結局銀階級も編入試験も合格したんだし』


『そうよ。終わり良ければ全て良し、って言うじゃない』


 緑簾さん、朱々さん! ありがとう!


 今度から、基本的事項の確認はきちんとします。


 まあ、でも。

 やっぱりナーハルテ様と同学年、同クラスで学べるのは嬉しいのです。ええ、そうですとも!


 ニッケル君、さとりお姉ちゃん、一輪先生、チュン右衛門さん。


 私、やったよ!





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