73-雅量?な私
「よっしゃあ、皆聞け! この度、俺こと元邪竜斬りのカーボン、今は薬師のハンダさん、その召喚竜カバンシ、第三王子ニッケル殿下、婚約者の筆頭公爵令嬢ナーハルテ様は中央冒険者ギルドに所属がほぼ決まった!前祝いだ! 第三王子殿下と筆頭侯爵令嬢様の太っ腹に感謝しておごって頂け! ただし、食事の追加は2回まで、酒は樽で用意したからこの5樽だけだぞ!」
ありがてえ! すげえよ第三王子殿下! やっぱりまぬけはデマだったんだなあ! 筆頭侯爵令嬢様と似合ってる! いいぞお!
そんな歓声が響き渡る。
「わたくしまで第三王子殿下と共に皆様にお食事やお酒を供したかの様になっておりますが、よろしいのでしょうか」
「いいんじゃないかな。ぼ、もう私でいいや。私もあんまり自分が奢りました、って感じじゃないので。それに、皆さん喜んでますよ。あと、さっきの変な人に言ってくれたお言葉、嬉しかったです。ありがとうございます」
どさくさに紛れて言えた。良かった。
「第三王子殿下の素晴らしさがご容姿だけの様な仰り方は許せませんでした。嬉しいと言って頂けて、わたくしも嬉しいです」
言えて良かった。
更に、嬉しいナーハルテ様を見る事ができるのが嬉しい。
『おーい、主様、いい感じの所悪いけどよう、あっちの樽も開けてやっていいか? 第三王子殿下にお聞きしてから、って冒険者って意外と義理堅いのな!』
はいはい、どうぞ。
雅量な私は鷹揚なのです。
要するに、雅量とは寛大な様子の事で、今の私は不快な思いをしたのにむしろ周りを気遣う素敵(?)な第三王子殿下になっている。
そうそう、それでもいいんだけど、予算はどこから? と聞いたら、薬師ハンダさん曰く、あのレベル食いマイコニドの必要な部分以外を売った金がたんまりだから、むしろ余りをもらって欲しいと言われてしまった。
協議の末、ここの支払いを引いた分の半分だけを寿右衛門さんが預かるという事になった。それでも取り分をどちらが
「あと、
俺達は何にもしてねえもん、浄化は聖魔法大導師様と殿下がしてくれたじゃねえかと言われたけれど、王都でハンダさんの分身体まで作って一人二役で聖教会本部その他との折衝なんかをしてくれたというカバンシさん。
それから、その間、大量の魔石を地竜硅や平野の生き物達とかき集めてくれたハンダさんが何もしてないって事はないでしょう!
あ、そう言えば。
筆頭公爵家様から護衛と送迎の依頼を受けたのは実はカバンシさんが作り出した分身体のハンダさんなんだって。
まだ邪竜斬りの冒険者復活は内密な話だから、内々にと依頼をされて、本物ハンダさんに遠距離念話で聞いたらナーハルテ様の為なら、と快諾だったけど、やっぱりハンダさんの周りには自分以外にも誰かいないと、と私にも声を掛けてくれた、と。
カバンシさんからの信頼が嬉しい。
ちなみに、魔石の件は、カバンシさんにもその通りだと釘を刺されてしまった。
そう言われても、魔石の件は、はいそうですか、とはいきません!
とりあえず、半分だけ中央冒険者ギルドで換金して、残りの魔石はお互いのマジックバッグ(私はリュックさんに)に入れるという事で何とかなったけど、多分ハンダさんもカバンシさんも納得してない。
換金の時にギルドマスタースコレスさんにも助けてもらおう。
そいだ、肝心のカンザンさんのお料理は、とても良いお味。
小魚は大きい骨は取ってあって、衣がパリパリ。ポテトもいい色。
野菜たっぷりスープはたくさんの種類の野菜がいい感じになっていて、クラッカーも添えてあった。
これがおいしくて、別売りしてもらえないか聞いてみたら、馴染みのお菓子屋さんのだという事で、店名と住所を教えて頂けた。絶対行く。て言うかこの居酒屋「
「またこのお店に来たいです。転移陣じゃなくて、インディゴに乗って来る事ができたら最高だなあ」
そう言ったら、
「おう、いいなあデートだな! お二人の護衛ならいつでもするからな」
『いや、ハンちゃん、俺がいるから大丈夫だって』
「いやいや、ハンダと緑よりも、私の方が良かろう。常識がある」
『確かに。主殿、私はインディゴの頭部に乗せてもらいます』
「デート……。姉が王太子殿下とさせて頂いた事があると聞きました。嬉しいです」
大国の王太子殿下とご婚約者様のデートってすごそう。
「もう少しだけ待って下さい。私の選抜クラスの試験結果が出ないと。再来月位かな」
「「「『再来月?』」」」
え、ハンダさん、カバンシさん、ナーハルテ様、寿右衛門さん、何?
え、年度末だから合ってる筈なんだけど。緑簾さんは全くリアクションなし。へー、って感じ。
いや、やっぱり知らねえのか?
そうなのか……。とか、新聞等は相当数お読みになられています、とか、想定外過ぎて、条項をご覧になっていないのかも知れませぬ、とか。
え、私、また何かやっちゃったのかな。
『いえ、主殿、私も説明が足りませんでしたので』
もしかしてニッケル君びいきの
「まあいいや! 良いことなんだからな! デートも良いことだ! それより殿下、あの辺のあいつらはかなりの実力者。国内はもちろん、外国にも遠征する様な奴らだ」
ハンダさんが食事やお酒を楽しんでいる一団を教えてくれた。
私が気付いていない事は、良い事だからいいらしい。まあ、いいか。皆もにこやかだし。
あ、実力者さん達、さっきの何故か私に声を掛けてきた変な男を笑っていた集団さんだ。やっぱり強い人達だったんだね。
手を振ってくれてる。ありがとう、カンザンさんのお店の物、おいしいよね。
たくさん食べて、飲んで、冒険者のお仕事頑張って下さい。
やっぱり、騎士団が回りきれない所に色々対応してくれるのはこういう人達だよね。
「さすがです。あの辺りが強者連と分かっておられたのですね。現役の時のハンダに全員でかかればもしかしたら、位の強さでしょうか。かなりのものです。真実の第三王子殿下のお姿、婚約者様と仲睦まじい様等も、ああした優秀な冒険者達から伝わると世間からの信憑性が違いますから。かれらに助けられた人々がまた更に真の第三王子殿下のお姿を方々に伝えましょう」
『まさに、主殿の雅量を示せましたな』
「後は午後の試験が残るのみ、だな。俺も何かやらされるのかねえ」
そうだ、試験内容!
そもそも私、何階級の試験を受けられるの?
「あ、ジジイん所に行けば分かるよ心配すんな。それより、さっきのあいつ、冒険者資格降格で済んでりゃいいけどな」
「いや、資格剥奪ではないのか?」
「青銅階級か、または鉄階級への降格でしょうか。とにかく、第三王子殿下にあの様な態度。わたくし、朱姫を呼びそうになりましたわ」
『さすがだなあ。でも、朱色殿が来たら、あいつ燃えてたんじゃねえか? 思い留まってもらえて良かったよ』
『確かに。カンザン殿のこの素晴らしい店が焦げますのは』
「ちげえねえ。まあ、二度と近寄らせねえからなあんなのは! いつもは、あの男の子が可愛い、とか言うだけだったんだが。本当にすみませんでした。王子殿下」
あ、はい。
カンザンさん、頭を上げて下さい。ところで、私は何階級を受けるの?
あ、リュックさん、本を出してくれたの?ありがとう。
『冒険者ギルドに初めて行く人の為に』
これ、職業ガイドだね。
嬉しいよ。冒険者ギルドに行くのは初めてではないけれどね。
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