51-出発の筈だった私達
『では、参るとするか。』
朝の出発。
今更だけど聖教会本部正面入口初代大司教様銅像前に朝10時、って普通の待ち合わせ場所じゃないよね。
見送りも、聖魔法大導師様お一人のみ。
「行ってらっしゃいませ。あのものにもよーく伝えてございます。……おや。どうなさいますか白様」
『うーむ、まあよいかあやつらならば。
「畏まりました」
「あ、はい」
聖教会の特別な馬車、使われている素材も一流の魔術加工品で、車体自体が博物館級という高級な特製魔馬車を引く気満々で、あの模様がないユキヒョウにそっくりなかーっこいい白い猫属の仮のお姿になっていた白様(肉球とお鼻がね、ピンク色! もう、私は朝からテンション急上昇!)が、魔馬車に乗るナーハルテ様のエスコートをしようとした私に、少し待つように言われた。
ナーハルテ様のエスコートを早くしたいのに、とかは言いませんよ。
今日は召喚用のパンツスタイルでお揃いだからね!
それに、白様のピンク色肉球、『斯様な部位も自由にできるのじゃぞ! ん? 良いぞ』って、ぷにぷにさせて頂いたんだ!もうね、ぷにぷにのぷにぷにだった!
大猫白様に騎乗してお出になられたナーハルテ様の凛々しさ、
「おはようございます、マトイ様」って私に微笑まれた可愛らしいお顔も網膜に焼き付いてるし!
ナーハルテ様は肉球ぷにぷに、「恐れ多いことに存じます」ってご遠慮されてた。そういうところも好きです。
『主殿、てん、いえ、テンションが』
すみません、寿右衛門さん。突っ込みありがとうございます。
そう、私は王子様です。あと、あのものさんもちょっと気になる。
『ナーハルテ様はこちらを』
「ありがとうございます、じゅったん様」
寿右衛門さんがナーハルテ様をエスコート。
私の背中のリュックさんが息のあった連携で木の椅子(折り畳み)を出してくれた。
あ、これ100均の折り畳み椅子?
お姉ちゃん、貴方どこまで最高なの? リュックさんも。と思っていたら私の分も。
うわ、座りやすい!
『使用者に合わせて質感が変化する魔法が掛けられております』
「リュック様、と仰るのですか。わたくしはナーハルテ・フォン・プラティウム。筆頭公爵令嬢にして第三王子殿下の婚約者でございます。この旅の間、宜しくお願い申し上げます」
ナーハルテ様のお膝に寿右衛門さん、私の膝(背中から下ろして置いた)にリュックさん。そのリュックさんに丁寧なご挨拶をするナーハルテ様はやっぱり素敵。そう。婚約者、ですよ!
『主殿、リュック殿を閉めて差し上げた後にお開けなさいませ』
え、リュックさん、また自動開閉しないの?
閉めて、開けてみたら、出てきましたリュックさん白バージョン。シマエナガさんぽいかわいいロゴマークも一緒。
え、え?
『良かったのうナーハルテ。そこに我の羽をいれなさい。これで其方の行く所にあわせて形状も変化するからの』
「分かりました、白様。あ、それではわたくしの元々のマジックバッグもこちらに」
ナーハルテ様が白様の羽とベルトポーチタイプのマジックバッグをリュックちゃん(でいいよね?)に入れた。
すると、代わりにその手に木のコップ。と、焼き菓子。
「まあ、ありがとうございます」
ナーハルテ様はそのままお茶(香りからしてミントのハーブ系かな。お好みの味だって!)とお菓子を頂きながら、リュックちゃんの使用説明をする寿右衛門さんの話を聞いている。
理解がお早い所も素敵。
あ、リュックさんとリュックちゃんには聖魔法大導師様が祝福の聖魔法を掛けて下さいました。中身にも。ますます強靭になるね。中に入ってるハイパーも。
そうこうしていたら。
『ほう、来たか』
えーと、二の都市(学院の方)の方角から誰か走って来るね。
……と思っていたら、あっという間に騎士団の行動服姿の方が二人、騎士の礼をしてくれた。急いで椅子から立ち上がる。
『この場でしたらお先に名乗られても大丈夫です』
あ、そうなの。事情をご存じな方達なんだ。っていう事は、騎士団の団長副団長コンビさん!
またまた大物登場。もう驚かないよ。
「コヨミ王国第三王子、ニッケル・フォン・ベリリウム・コヨミ。騎士団団長、副団長。見送り大義である」
「「ありがたく存じます」」
イケメンだけど肉体がっちりしっかり、いかにも団長さん、て感じの方と、細面の美形副官さん、な感じの方が見えた。
髪の毛の色と目の色はご令嬢ご子息とは違うけれど、どちらがどちらのお父様か分かりやすいね。
「いやあ、本当にコヨミ初代国王陛下の末裔殿にお会いできるとは! 嬉しい、嬉しいですぞ!」
え、イケメンだけどとにかく長身、筋肉の団長さん。近い。近いです。あと、ゴツい。
「副団長閣下。第三王子殿下が戸惑われておられますよ」
既に起立されていたナーハルテ様が助け船を出してくれた。え、こちらの、って近い! 迫力考えて! の方が副団長閣下?
「……父上、
「父上、だから申し上げましたでしょう。団長らしさを出すからコヨミ様の末裔殿には必ずお分かり頂ける! と自信満々でいらしたのに。また母上に笑われますよ?」
ぜえぜえ言いながら走ってやって来たスズオミ君と、ほとんど息が上がっていない涼しげなライオネア様。
「……アタカマ・フォン・コッパー侯爵。父です。騎士団副団長を務めております」
「
「名乗らずに申し訳ございません。
赤褐色の髪と黄色の瞳、線の細い感じの美形さん。
でも、気配で分かる。めちゃくちゃ強い方だ。……と言うことは、ライオネア様、本当に本物の獅子騎士様の血族さんなんだ!
「ほう、金ちゃんの強さがお分かりになるとは、さすがです! アタカマ・フォン・コッパー。騎士団副団長を務めております。コッパー侯爵家当主は愛しき妻にございます。マトイ殿、ではなかった第三王子殿下、この度は、愚息の婚約解消にご尽力頂きまして、感謝の念に堪えませぬ」
暗緑色の髪の毛と瞳、がっしりしっかり体型だけど、やっぱりイケメンはイケメンですね、副団長閣下。
……は、今何て?
聞き返そうとしたら、
「「アタカマ! 父上! 副団長閣下!」」
三方向から突っ込みが入った。
白様、聖魔法大導師様、寿右衛門さんが揃ってはあ、とため息。
ナーハルテ様はほんの少しだけ困惑顔。
どうやら、出発まではもう少しかかりそうですね。
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