幕間-2  チュン右衛門と申します。

 まとい様が現世の日本から異世界コヨミ王国へ旅立たれてから、こちらの世界では数日が経過しました。


 名乗りもせずに失礼致しました。


 私は雀のチュン右衛門えもんと申します。こよみまとい様と姉君に名付けて頂きました。

 この国の法律上、雀を飼って頂く訳には参りませんから、必要に応じて通わせて頂いております。


 私は、こちらの世界の高位精霊様の協力鳥としてコヨミ王国初代国王陛下を異世界にお連れすることに尽力しました初代の協力鳥、寿右衛門じゅえもんから、代々暦家の方々をお守りする役目を告げられた雀の一族のものでございます。


 暦家のご実家には一族の他の雀がおりまして、私はまとい様と姉君のお住まいを日々見回りしておりました。


 そこへ、異世界コヨミ王国への転生者候補を探されていた異世界の精霊界の白き高位精霊獣殿から、


『体を貸しては貰えぬか、茶色いものよ』というご依頼があり、名誉なことと快諾しましたが、今またそのご依頼がございました。


 白き獣殿は本体は白き鳥のお姿ですが、四つ足の獣の仮の姿をお持ちです。

 その仮のお姿を乙女ゲーム(私はこの国の文化事情を多少は存じております)まとい様はカッコいいと絶賛されていましたが、こちらの世界のシマエナガに似ておられる真のお姿もぜひともご覧頂きたいです。


 そして、もしも異世界に私達雀に似た鳥の精霊獣がいるならば、まとい様にお仕えしてほしいですね。


 そうそう、私の体をお貸しする件ですが、勿論、まとい様が無事に魂の異世界転生をなされたことをご報告できるのは嬉しいことです。


 しかしながら、転生した先が乙女ゲームでまぬけ王子と言われた第三王子殿下であるため、まとい様のお体に転生するのがその方であることを、なんと殿下のこちらの世界への魂の転生とほぼ同時に説明されるとは……大丈夫なのでしょうか。


 姉君は本日、連休明けの仕事の日々を終えられ、明日は待ちに待たれたお休みです。


 毎日こよみ様のお体を気遣われております。

「体がきれいなままなのは不思議だけど、これも雀さんの力かな、チュン右衛門さん」


 そう言われましたので、チュンチュンそうですよ。とお答えしたら、喜んで頂けました。

 雀さんとは、わたくしに移られていた際の白き高位精霊獣殿のことでございます。

 意識を共有させて頂いたので、私も状況は理解しております。


 常々、身命を賭するつもりで励んでおります故、この体を白き高位精霊獣殿にもう一度お貸しすることは一向に構いませんが、まとい様のお体に転生されるのが第三王子殿下であることについて、姉君がどう思われるかまでは分かりません。


 私にできますことは、せめて、第三王子殿下が乙女ゲーム『キミミチ』のような方でないことを祈るのみでございます。


 あ、そうでした。もう一つ私にもできることがございました。


 ……あの方。姉君の大切なもう一人のお方にいらして頂けたら、姉君のお気持ちも少しは落ちつかれるのではないでしょうか。


 善は急げです。さっそく私もできることをいたしましょう。

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