15-お守りと赤銅色の騎士候補様とあたし
「はいどうぞ」
ポカンとしてる。
かなりのイケメンなのにその表情はやばい。
あたしは一応聖女候補で生粋の平民、セレン-コバルト。
目の前で大口開けてる人は、本人は気付いていないけど最近はけっこうな数の女の子に注目されている赤銅色の髪と目のイケメンさんで、この国の騎士団副団長の息子さんな侯爵令息さん、スズオミ・フォン・コッパー君。
まあ、お口ポカンとしてても、普通クラスの人には気付かれない聖魔法、簡易結界の中なんだけどね。
普通クラスでこの気配を感じ取れるのはあたしとこの人くらい。
実はけっこうな魔力持ちなのに、高位貴族令息のくせに普通クラスなんて、と言われるのも気にせずにまぬけ王子(最近はややまぬけ位になってきた)さんこと第三王子殿下のお側にいるという変わった人だ。別に第三王子さんの為ではなく、自分が楽だかららしい。ますます変わった人だ。
侯爵令息さんには公爵令嬢さんで騎士団団長令嬢な学院内にファンクラブがある位めちゃめちゃ素敵なイケメン女子な婚約者さんがいるんだけど、最初の頃の超カッコいい獅子騎士様の婚約者君、て感じよりは大分男前さんになった気がする。
だからあたしは二人きりの時は騎士候補さん、て呼んでいる。普段はもちろん、スズオミ様かコッパー侯爵令息呼び。
ついうっかり、第三王子様達(皆自分よりも素敵でレベル超高の婚約者女性有)もいる時に騎士候補さん、と呼んでしまって、王子様に
「面白いな。俺もニッケルと呼んでもらおうかな」
と、王子様スマイルで言われたけどそれはさすがに、と勘弁してもらった。
ニッケル・フォン・ベリリウム・コヨミ第三王子殿下。
ニッケル様呼びはいくら何でも恐れ多い。聖女候補の「私」ではない庶民の「あたし」でもさすがにそれは理解できる。
だから二度とうっかりしない様に、騎士候補さんとは昼休憩を除いたら1番長い午前の休憩時間に廊下で待ち合わせ、と二人で決めた。
その為に、休憩時間直前に透明な伝令蝶でやり取りをするのだ。伝令蝶は伝令鳥とは違って、メッセージを送るのではなくて合図の様な物。どちらかが送って待ち合わせokなら自分も返し、noならそのまま。魔法関連の先生の授業の時には絶対に行わない。
こういう時は、普通クラスで良かったと思う。
それで、ポカンの理由はと言うと。お守りだ。赤銅色の袋に、聖魔法を込めた魔石が入っている。
「あ、もしかして、王子様みたいに張り切り過ぎちゃうおまじないとかが付与されていると思ってますか? 大丈夫、防御魔法の先生に用途と付与する魔法を確認してご了承頂きました! なんなら確認して下さい。確認取れるまでもらってくれなくてもいいですから!」
王子様、って言っちゃったのまずかったかな。
でも、召喚大会の後、王子様とナーハルテ様がお休みされてたの、あれ王子様はあたしが補助魔法掛け過ぎて頑張らさせ過ぎたからだよね絶対……。
詳しく説明されなかったけど対人の聖魔法の扱いについて厳重注意を受けたもの。
騎士候補さんは、何かあたしが知らない事を知ってるのかも。それで、こんなのもらったらどうなるか……って思ったんだね、きっと。
「いや、そういう事ではなくっ! 何故僕にお守りをくれようとするんだ? 女性なら、僕の婚約者君に渡したいものだろう?」
「あ、そういう事ですか。それならご心配なく。もう獅子騎士様の応援ボックスに特製お守りを入れてきました!」
そう、そうなの! 女の子は獅子騎士様の応援がしたいの! 分かってるねぇ、さすがは婚約者さん!
王立学院に存在する、女の子達が獅子騎士様の応援をする為の秘密兵器。
この時期……剣術大会の前に獅子騎士様ライオネア・フォン・ゴールド様宛の応援ボックス(生ものとか、傷む物、不適切な物を弾く魔法付与済み)が設置されて、
前にあたしが獅子騎士様にお守りを渡そうとしたら注意してくれた男爵令嬢さんが、わざわざ上クラスから普通クラスに来てくれて教えてくれたの。
「応援会にお入りになりたいのなら、いつでもお待ちしておりますわよ!」
って言って去っていった。
あの人、絶対いい人だ。できたらお友達になりたい。
勿論、お守りには適切な聖魔法付与をしたよ。やり過ぎはダメ。応援ボックスさんに弾かれちゃう。
「あ、ああそうか、そうなんだ……いやありがとう。ありがたく受け取らせてもらうよ。お返しは何がいいかな」
騎士候補さん、ちょっとガッカリ、でもホッとした表情。
何だろう、すごい無茶苦茶なお守りかと思われてたのかな。
ええと、でもお礼を頂けるのか。お世話になってるから特にいらないんだけどなあ。あ、
「ペガサス郵便の葉書を下さい!」
我ながらいい物を答えられた! と思ったら、またお口ポカン。
……なんで?
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