｢ナーハルテ様……｣

　連休二日目。

　私は乙女ゲーム『君と歩む道筋』略してキミミチに夢中になっていた。

　今攻略しているのは大本命のナーハルテ・フォン・プラティウム筆頭公爵令嬢様!ではなくて婚約者のたわけ王子ことまぬけ王子……でもなくニッケル・フォン・ベリリウム・コヨミ第三王子殿下だ。

　私の名前が暦まといでコヨミとこよみだと、このゲームに巡り合わせてくれた恩人に言われたが、正直、攻略できるならナーハルテ様を攻略したい！

　他の攻略対象者は全員攻略済。(ノーマルエンドもベストエンドも)で、最後の一人。

　イケメン令嬢様達は本当に婚約者の攻略対象者達よりも美しかったり賢かったり強かったり色々で楽しかったし、一人につき一つの大活躍エピソードがあるのも良かった。

　例えば、騎士団団長令嬢様なら剣術大会の様に。

　ゲームソフトに付いていた薄い解説冊子にあった騎士団団長令嬢ライオネア・フォン・ゴールド様の別名、冷徹筋肉という渾名は最初どうかと思ったが、ノーマルエンドとベストエンドをクリアして、超豪華設定資料集を読んだら理解できた。

　要するに、婚約者に剣術大会でぼろ負けした負け惜しみだった。いくら何でも卑屈過ぎるので謝ろうとしたら冷静さや筋肉を褒めてくれてありがとうみたいなリアクションのライオネア様。獅子騎士様、イケメンが過ぎた。

　獅子騎士様とは、学院内の騎士団団長令嬢様応援会（ファンクラブ）が付けた呼び名。

　ファンクラブ的にはイケメン令嬢様達同士の交流は全て尊いもの扱いで、特にライオネア様とナーハルテ様のご交流は特に良いものとされているらしい。いいね、分かってるね！　とライオネア様編(騎士団副団長コッパー侯爵令息編とも言う)の一幕に興奮した。

　そんなこんなで今さっき、ナーハルテ様の一番の見せ場、精霊獣召喚大会をクリアしたところだ。余韻が残りまくり。いやー良かった！

　たわけ(まぬけ)王子が聖女候補（ヒロイン）に応援してもらって調子に乗って制御できない精霊獣を召喚してしまい、ナーハルテ様がすごく強くてカッコいいめちゃくちゃイケボで白くて豹みたいな精霊獣を召喚されて助けてもらえたけどナーハルテ様は気絶してしまわれ……ゲームしてた時は泣いたよ叫んだよ！

　ナーハルテ様以外のイケメン令嬢様達の婚約者達のルートを攻略していたから、攻略対象者は婚約者様達を尊敬しているが故に素直になれないのは分かっていたんだけど、第三王子は本当に素直じゃないんだよねナーハルテ様に対して！

　このゲーム、他の乙女ゲームと違って(乙女ゲームはやった事がなかったので一応調べてみた)、攻略対象者達が婚約者様達を断罪しても、婚約解消になるだけで皆さん普通に学院を卒業できるのだ。

　そもそも、イケメン令嬢の皆様とヒロインの接点ほとんど無いし。

　しかも、三年制の高等部二年目途中にヒロインが編入してその年の年度末に断罪するので、残り1年は晴れてラブラブになった攻略対象者との愛を深めてもいいし、聖女候補としての務めに励んでもいいという設定。

　実は、聖女候補がイケメン令嬢様達のご指導の下、優秀な聖女候補となり、卒業後はイケメン令嬢様達に見守られながら聖教会本部に戻る、というエンディングもあった。その時のヒロインは攻略対象者達に囲まれている時よりも輝いていた。

　とりあえず、今はナーハルテ様頑張りすぎ、もっと周りを頼って、っていうか私が貴女をお助けしたい！　みたいな感じで泣きながら叫びながらゲームをやっていたので腫れてしまった目を休ませつつ、水分と栄養を補給している。

　このあと多分ナーハルテ様が復活されて、ライオネア様大活躍の剣術大会が行われるのだろう。ナーハルテ様編(第三王子編とも言う)のノーマルエンドとベストエンドをクリアして、コンプリートエンド(全員攻略後見る事ができるらしい。

　超豪華設定資料集情報)を堪能したら、イケメン令嬢様達のサクセスストーリー編ディスクをやりまくるんだ！　楽しみ！

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