第2話 突然の来訪者
(・・・・何でオレ、こんなん買っちまったんだっ?!)
テーブルの上の、先ほど購入したばかりの宝くじを眺め、希一は大きく息を吐き出す。
(確かに、買わなきゃ当たらねぇぞ?でも、買ったって、当たる確率なんて・・・・あーもうっ!この金があったら、他のモン買えたじゃねぇかよっ、オレのばかっ!)
『お祈りメール』を目にし、気弱になってつい買ってしまった宝くじだが、冷静になった今、希一は猛烈に後悔をしていた。
だいたい、宝くじなど、希一は生まれてこの方一度も買ったことが無いのだ。
宝くじに比べれば、パチンコや競馬の方が、金額に差はあるものの、当たる確率としてはよっぽど高い。
加えて言えば、今の希一には本来、そんなものにお金を費やすほどの余裕がある訳でも無いのだ。
(はぁ・・・・腹減った・・・・)
情けない表情を浮かべ、財布の中身を確認する。
なんとか今月の食材くらいは買えるだろうが、少しの贅沢もできないくらいのギリギリの金額しか残ってはいない。
(今月も厳しいなぁ・・・・)
ガックリと肩を落とした希一だったが。
ピーンポーン
来訪者を告げる音に顔をあげ、首を傾げた。
(誰だ?いったい)
ドアスコープから覗いてみると、そこには2人の女の子の姿が。
背の高い美形女子と、背の低い地味女子の2人組。
ただ、どちらも希一には覚えのない顔だった。
(勧誘かなにか、か?)
一瞬そんな考えも頭をよぎったのだが。
同年代くらいの女の子が自分のアパートを訪問するなど、初めての事。
しかも、いっぺんに2人もなんて、この先もあるかどうかも分からない。
・・・・どちらかと言えば、無い確率の方が高いだろう。
(少し話をするくらいなら、な。せっかく寒い中来てくれたんだし。・・・・可愛い女の子だしな。つーか、美形ちゃん、オレの好みどストライクだし!)
などという微かな下心もあり、とりあえずドアを少しだけ開けて、希一は顔を覗かせた。
「なんですか?」
と。
美形女子がドアを思い切り開き、部屋の中に飛び込んできた。
「あー暖かいっ!お姉ちゃんも早く入りなよ!」
「えっ・・・・ええ。では、お邪魔します」
驚きでポカンと口を開ける希一の前で、申し訳無さそうに一礼すると、地味女子も続いて部屋の中へと入ってくる。
「ほらほら、こっち暖かいよ、お姉ちゃん」
「そう?あら、本当ね、暖かい」
(・・・・なんだ、こいつら?)
呆気に取られたままとりあえずドアを閉め、希一は戸口に立って部屋の中へと視線を向けた。
お世辞にも広いとは言えない部屋の中では、先ほど入って来た見知らぬ女子2人組が、ウロウロと歩き回っている。
(ここ、オレのアパートだよな?んで、オレ、独り暮らし、だよな?)
希一の視線の先で、女子2人組は希一に構う事なく、あちこちを勝手に覗いてはキャッキャと声を上げている。
・・・・主に、キャッキャと声を上げているのは、背の高い美形女子の方だったが。
(うん。やっぱこの状況、おかしいよな?オレがおかしいんじゃ、ないよな?)
徐々に冷静さを取り戻した希一は、未だ部屋の中を物色している女子2人組に声をかけた。
「つーか、あんたら、誰?」
希一の言葉に、2人はようやく物色の手を止め、顔を見合わせて微笑み合い、手を繋ぐ。
すると。
一瞬強い光に包まれた後、2人はどこぞの国のお姫様か?とでも言いたくなるような煌びやかな衣装に身を包んだ状態で、希一の目の前に浮かんでいた。
「私たちは、貧乏神と福の神です。あなたの願いを叶えるために参りました。私たちは、それぞれふたつずつ、あなたの願いを叶えることができます。でも、あなたが選べるのは1人だけです。さあ、どちらを選びますか?」
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