The only star I've ever wanted.
Increasing Faces.
時間を追うごとにひとつずつ同じ顔が増えるなんて普通の人からしたら恐怖体験なのだろうか。
俺にとってはこれは日常の事だったが。
チカから連絡があり、あれよあれよと言う間に予定が組まれ(チカのやつはいつの間にか俺と彼女のマネージャーと連絡先を交換していた)俺は彼女を助手席に置いて車を運転していた。
「キイくん。そこ右ッス」
「うぃ」
前方を視界に収めながら横目で彼女を確認する。
マスクとサングラスをしていても判るアイドル感。
これ、いっそ外した方が撮影と思われるのか? とか考えたけどプライベートまでファンサービスする必要は無いかと自己解決をした。
番組で共演して以来、ウマが合ったのでちょくちょく食事をしていたらいつの間にか互いの事務所からカップル認定されていた俺と彼女。
しかもそれをチカ経由で聞かされるってどういう事だよ。
「キイくん。そろそろ着くッスよ」
おっと、しっかり前を向いて運転しねーと。
「りょーかい。ウタは
「ッス」
我が彼女ながらなんでこんなに言動が硬派っぽいんだろうな。
一応(見た目は)アイドルなんだけどな……。
駅前のロータリーに予定時間の15分前に到着し車を下りカギをかけた。
かけておかねーと何するかわからん。
「ふたり共電車で来るって言ってたよな」
俺は腕時計とホームを交互に見た。
上り電車が停車し人がばらばらと降りてくる。
「割と下りるんだな。無人駅の癖に」
「俺も驚きだよ」
声がした方を向くとチカがいた。
隣にはピンク色の髪をツインテールに縛った女の子がいた。
「やあ、キイ」
「やあ、じゃねーよ。どこからさらってきた?」
俺の問いにチカは首を横に倒した。
あごを動かして女の子を指すと「あ、大丈夫。成人してるから」とあっけらかんと言い放った。
「紹介するね。俺の彼女」
「はじめまして、チカちゃんの彼女をしてます。セイ・シユです」
頭を下げたら地面にツインテールが付きそうだった。
「どーも、俺はチカの弟のキイ。彼女は車の中。後で紹介する」
「先に乗っていても?」
セイさんはそう言っててててと音がしそうな歩き方で車に寄っていった。
「いい、のか?」
「いいんじゃない? 女同士話す事があるって意味じゃないかな?」
チカがそう言うなら、まあいいか。
「えっと、セイさん。あんまり彼女を刺激しないでください」
俺はそれだけ言って車のカギを開けた。
セイさんは乗り込みながら「シユでいいですよ」と残していった。
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