Junction 2.
殆どが闇に染まる病院を出て俺は背伸びをした。
そんな俺を見てシユはくすっと笑った。
「チカちゃんって弟思い」
「そうかな?」
「下に居ないからどう言う気持ちなのか気になる」
「ただのお節介だよ」
「そう言うもの?」
「そう言うもの」
難しい顔をするシユの頭に手を置いて優しく撫でる。
「シユ、今日はどうやって来たの?」
「もちろん、タクシー」
そう言いながら小さい身体を張った。
ピンク色のツインテールが揺れる、かわいい。
「原付はどうしたの?」
「何度も職質を受けるから緊急時は使えない」
「そう。送ろうか?」
「うん、ありがと」
「それにしても、染め直し大変じゃない?」
ツインテールの先端を触りながら聞くと「そこは、慣れ?」と首を傾けた。
「髪が痛むだろうに」
「そこは愛と想いでカバーする」
「ふっ、そうだね。シユなら、いや……、”マジカルウィッチ☆とりっかむ”なら、そうだよね」
「まだ魔法で治せないけれど何時かは治せる様に。今はせめて形だけ。あの子も同じ様な感じ? と言うよりもあの子は男の人?」
「ん、気が付くか。流石シユ」
「これでも医療従事者」
「そうだね。あの子は、彼女は元男だよ。アマさんって呼んであげるといい。本名は男っぽいからね」
「彼女は何を求めて?
「真っ白な穢れの無い白い肌と髪とそして、彫の深い顔と身体。彼女が求めたのはミロのヴィーナスだよ。シユと同じ、人形になりたかったんだ」
「そう……」
「俺ら三つ子は3人3様の姿や暮らしをしているが根本は同じモノを追い求めているのかもね」
「人形?」
「端的に言えばそうかもね。もしかしたらそう言うナニカを元々持っているのかも」
「ピグマリオニズムと言う性癖がある。人形や彫刻への性的嗜好」
「人形への性的嗜好、か」
俺らに備わった元来の性質、嗜好。
その単語を、意味を聞いて俺の胸に何かがすとんと嵌った気がした。
考え込む俺に抱き着きシユは優しい声で言った。
「チカちゃん。ぼくはあなたに会わなかったら今を生きていないかもしれない。それは多分あなたたち三つ子全員の彼女が言うと思う」
「かもしれないね。なにせ、同じ卵から産まれた訳だし」
キイの彼女もある意味でお人形さんな訳だし、多分同じ様な思いを抱えているのだろう。
彼女たちを会わせてあげたい、デートは絶対成功させたい、そういう思いが更に大きくなった。
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