Marriage.
「あがった……」
ほこほこと湯気を立てて俺が戻るとアマちゃんはPCに向かって仕事を再開していた。
「アマちゃん。ごはん食べた?」
「ん」
「何を食べた?」
「ジュース飲んだ」
「待って。何のジュース? もしかしてエナドリ?」
俺は一直線に戸棚へ向かい勢い良く開け放つ。
そこには俺が入れたのと寸分違わぬ状態でエナドリが並んでいた。
と言う事は。
「アマちゃん。新しいエナドリ買ったんだ」
「あっ……。ユウ、ごめん。新しい味が。洋梨」
俺はアマちゃんの仕事デスクへ向かって空の缶を回収して後で家探しします宣言をした。
アマちゃんは俺の頭に抱き着いて「それはやめて欲しい。ワタシにもプライバシーがあったりなかったりするわ」と頬擦りしてきた。
「どの口が言うのか。俺の部屋に自由に出入りする癖に」
「だって、好きな男子の部屋は面白い訳だし」
「まあ、アマちゃんだから許してるんだけどな。他のヤツが入ったら……」
「あら? ワタシって愛されてる?」
「愛してますよー」
「なら丁度良い。一筆書いてくれない?」
デスクから1枚の紙を取り出しぴらぴらと振った。
「一筆? 何を?」
「婚姻届」
「……ぱーどん?」
「どうせバレたんだから結婚するわよ。ユウ」
「いや、それなら俺しっかりと働かないと駄目じゃね?」
「大丈夫、ワタシが養ってあげる。と言うか現状維持でオッケーよ?」
「現状維持って……、俺、ヒモじゃねーか?」
「契約、契約よ。ワタシは仕事する、お金稼ぐ。ユウは家で家事をして働く。そういう契約」
「まあ、もうどうにでもなーれだから良いけどさあ。挨拶とかしなくていいのか?」
「ウチの両親? 良いの良いの。どうせ勘当されてる身よ」
「まあ、俺も逃げ出した男だからなあ」
「そう言う者同士結婚しない? じゃないわね。するわよ。結婚」
「アマちゃんの中では決定事項なのね」
「勿論。ワタシを、ありのままのワタシを見て押し退けない好物件だから。あとお料理美味しい」
「まあ、あれは驚いたけどそう言う人も居るんだなーってすとんと落ちたんだよ。なんでか解らないけど」
「そうやって普通に接してくれる人って少ないのよ」
「そうなんだ。別に人間には変わらないのにねえ」
「だって、立像みたいな人間が居るなんて普通は考えないでしょ?」
「でも、人間だし話せば通じるんだ。見た目ってだけで話さないのは損しているね」
「ユウが言える事では無いわよ」
「ははっ、そうだな。でも実際の所、俺はアマちゃんと寝起きを共にしている訳だし意思疎通もしっかり出来ている。あれかな? 気が合う的な?」
「前向きなユウは珍しいわね。シャワーを浴びたからかしら」
俺は「眠いからかも」と言ってくわっと欠伸をした。
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