Two-dimensional wife.
前からチカが、後ろからキイが。
がっちりと固められた包囲網からは逃げられない。
俺が飛び出す前から模様替えのされていないリビングに連れて行かれ何も言葉を交わさず当たり前の様に定位置に座らされる。
それから始まったのはもう、尋問だ。
俺はしどろもどろだった。
なるべく情報を出さない様に言葉を選んだが兄弟の察する能力が高過ぎて俺はどうしたら良いのか判らなくなった。
夕食を作るのに両親が抜けたのを皮切りにチカとキイの質問が苛烈になった。
流石と言うかなんと言うか俺の事をよく解っている。
質問が的確だし1つの質問から幾つもの回答が引っ張り出される。
夕飯が始まる頃には俺はもうヌケガラだった。
久々の実家の料理だったのだがやけに味の無い夕食だった。
それでも食わねば戦い抜けない。
無理矢理に腹に詰め込み食事を終えたら第3ラウンドだ。
もうやだ、と思ってもトイレに離れる事さえ許してくれない。
諦めた俺は端末を取り出し同居人氏の画像を見せた。
「これが、俺の同居人、以上。もう終わり。俺は帰る」
それだけ言って俺は席を立とうとした。
が、両肩を掴まれて椅子に引き戻された。
「ユウ。まだ2次元の嫁と結婚出来る法律は無いぞ?」
「お前らしいけど、犯罪だけは起こすなよ?」
チカとキイは俺を慰めるかの様に溜息交じりに言った。
「うーむ、この感じ。どのケモミミが似合うか。迷うな」
「凄い格好良い子じゃない。ユウちゃん!」
オヤジの基準は相変わらずケモミミだった。
オフクロはどうしても俺を嫁に仕立て上げたいらしい。
「それにしても勘が鈍ったかな?」
「それな。まさか2次元の嫁であそこまで設定を詰めてくるとは」
俺はその言葉を聞いていくらか安堵した。
その安堵感を掴まれたのだろうかチカとキイが俺の方へ同時に顔を向けた。
「チカ。こいつ、安堵したぞ」
「だなあ。まだ何か隠しているな」
「な、何も隠していない。もう全部言ったから。言った。じゃあ帰る。また、またね」
慌てて立ち上がり荷物を纏めると俺は実家を飛び出した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます