The Goddesses We Love.
初月・龍尖
Enclosed in the statue.
Same face.
玄関の扉を引くと目の前に自分と同じ顔が在るってのは一般人にとっては恐怖体験なのだろうか。
俺にとっては日常だったから別段恐怖とかそう言う概念は無い。
目の前にいる俺は俺じゃない、別の存在だ。
「ただいま」と声を掛ければ「やあ、おかえり」と返答をしてくれる。
オールバックに眼鏡をかけた自分と同じ顔を見ながら屋内に入ろうとした所で「おうい、玄関開けておいてくれー」と声を掛けられた。
後ろを振り向くとまた同じ顔が在った。
こっちの顔は茶髪にヒゲだ。
「おう、ユウ。やっと帰って来たのか」
「まあ、たま、にはな。買い出し?」
そうよ! と両手に持ったエコバッグを持ち上げたヒゲの生えた俺は弟のキイだ。
「それにしても、何年になる?」
「ナンネンカナー」
俺の肩を後ろから掴んだ眼鏡をかけた俺は兄のチカ。
俺たちは三つ子ちゃんだ。
ちゃんって歳じゃねえけど。
「いきなり帰って来るって事は彼女が出来たとか? どっかにいる?」
チカは俺の肩ごしに外を見やる。
「ユウならやりそうだからな」
「……、そんな訳は無い、よ。だた、家族が恋しくなっt」
俺の言葉を遮る様に前後から肩に手が置かれる。
「キイ、エコバック落ちた、ぞ?」
チカとキイが体を揺らしながら肩に置いた手の握力を強くしてゆく。
そして、ふたりは同時に目を大きく開いた。
「
「うっせえ! 大声出すな! つーか、何にも……」
俺が何とか弁解しようとおたおたしていると家の奥からどたどたと足音がして両親が現れた。
オヤジはウサミミのついたカチューシャを持って、オフクロはペンライトとウチワを持って。
「ユウ! ウサミミ!! ウサミミは似合うか?」
「ユウちゃんと釣り合う男役??」
「オヤジの今はウサミミ……。オフクロは相変わらずか……」
「おうよ! 推してる娘がウサミミでなあ。垂れ目で銀髪がs」
「それよりもユウちゃん。彼女さん居るの? 今居るの??」
「い、居ない。居ないってば。俺に彼女は居ない」
「うーん…。近くには居ないけどマジで
「そうだな。この感じ、割と前から
察し能力を解っていたつもりだったけどマジで厄介だな。
ここまで筒抜けとは……。
「じゃあ、俺はここで。顔見せるだけのつもりだったし」
俺は踵を返し逃げようとしたが外にはキイ、中にはチカ。
逃げられねえ……。
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