第16話 体を鍛えなくちゃ

どれどれ…


ナニコレ…。


ちょっと、ひどすぎるんじゃない?




名前 シンイチ・タムラ

性別 男

年齢 10歳

職業 なし


レベル 1


HP 1

MP 99


体力  G

魔力  G 

素早さ G

運   S


魔法 火    G

   水    G

   風    G

   土    G

   光    G

   闇    G 

   聖    G

   無    G

  *空間   S

  *重力   G

  *時間   G


スキル なし

 

加護 なし

称号 なし



------------------------------------------------------------------------------------



*万物創造[言語・鑑定のみ]

*境界管理[倉庫のみ]

*転移[思念体モード・魔力体モード]・帰還・ゲート展開

*転送[接触転送(単体)]






ちなみに、*印がついている項目は、基本的に、現地人?には見えないらしい。


【根源世界】の能力は、オレたちにしか見えないのは当然として…。

【空間・重力・時間】も、基本的には見えないようだ。


この三つは、けっこう抽象度が高いからな。

【異世界】では、まだ、一般的には認知されてないんだと思う。

だから、せいぜい、一部の知的エリートにしか見えないのかもしれない。


ただ、古代遺跡とかを【転移ゲート】として利用してる連中には、【空間魔法】の項目が見えてると思う。




いずれにしても。




【MP】が微妙で、【運】と【空間魔法】のみ、なぜか【S】。

あとは、すべて最低ってこと?



げんなりしてると、【導く者】さんの声が聞こえてきた。



『まず、【MP】は、【存在の器】に対応してますから、あなたなら、もっと高いはずですね。おそらく、レベルとの兼ね合いで、【99】までしか表示できないのでしょう。


 次に、神々の試練たる【歴劫の試練】をクリアしたのです。【運】がSになるのは当然です。悪業も貯まってるでしょうが、それをはるかに超える善業を積んだのですから。


 あとは…、他次元とも言える【根源世界】から、【転移】してきたのですよ。すでに、【空間魔法】としても最高のレベルに達していると評価されて当然でしょう。


 ただ…、生まれたての【魔力体】ですからね。残りが全て初期値なのは、しかたがありません。

 むしろ、赤子とちがって、首がすわってるだけでもマシです』



……くっ


そんなこと言ったって、【HP1】だよ。

転んだだけでも死にそうじゃないか。



でも、しかたがないか。



これから、戦場に向かうわけでもないし…。

それに、低レベルでひいひい言いながら遊ぶのも、楽しいと言えば楽しいよね。まあ、ゲームだったら…って話ではあるけど。



やっぱり、街道に出て来てよかったよ。

森の中だと、足元が危なっかしいから、木の根っことかに足を取られて、転んでしまったかもしれない。


【HP1】だよ。

転んだだけで、ゲームオーバーになっちゃうよ…。



………



まあ、嘆いていても始まらない。


オレは、さっそく、体をきたえることにした。

まずは、転んだくらいでは死なない体にならないと…。



トレーニングといえば、ランニングだよね。

全ては、走ることから始まると言っても過言ではないよ。


…って、思ったんだけどね。


ほんの20〜30メートルくらい走ったら、脚がいうことをきかなくなった。

脚が棒になるって、こういうことだったんだね。よくわかったよ。


………


走るのが無理なら、歩くしかない。

オレは、広場のなかを、とぼとぼと歩きはじめた。

すると、たちまち、くたびれてしまった。


体力【G】ランクって、こんなに過酷なの?


いや。たぶん、【身体】と【体力】が噛み合ってないんだろうね。

【魔力体】としては生まれたてなのに、【身体】は10歳児のサイズ。

【体力】に対して【身体】が大きすぎるのかもしれない。



しかたがないので、素直に休むことにした。



でも、ただ、ぼうっとしてるのももったいないよね。

【境界】を【魔力】でいっぱいにしなくちゃいけないんだから、そっちの能力も鍛えておかないと…。



オレは、そのへんに落ちてる石ころを拾った。



そして…、


(転送!)


…って念じた。



手のひらの上の石ころは、いっしゅん光の粒子になって、消えた。


おおーっ!


一回目で成功するとは、さすが、【根源世界】の能力だね。

それに、以前使ってた【転移魔法】と違って、魔力消費がほとんどないのもありがたい。



ちなみに、【転送タブ】を開いて、スイッチを押す方法もあるよ。

だけど、【異世界】に来た以上は、魔法でも何でも、可能な限り無詠唱にしなくちゃね。

それなりに集中して強く念じる必要はあるけど、もし、戦闘になった場合は圧倒的に有利だからね。



何度か、小石やら木切れやらを拾って転送してたら、すぐに手が真っ黒になった。

拾うときに、いちいち、椅子から降りてかがむから、腰もけっこう痛い。





実はね。アウトドアチェアっていうのかな。キャンプで使う椅子に腰掛けてるんだよ。

もちろん、【根源世界】で創った日本の商品だよ。


コレはね。【根源世界】からこっちに持ち込む時に、オレの【身体】と違って、あっという間に実体化したんだ。

たぶん、今回は、自然界の魔力だけじゃなくて、自前の【MP】も使ってるから、早かったんじゃないかと思う。


でもね。【MP】表示は相変わらず【99】のままなんだよ。

ちょっとだけ、【MP】を消費した感覚はあるのにね。


やっぱり、【レベル】が【1】のせいで、【MP】も【99】までしか表示できないのかな。


コレってさ。

たぶん、自動車のガソリンを満タンにした時、少し走ったくらいだと、メーターが減らないのと同じことだよね。

もちろん、日本にいた頃のオレは高校生だったから、自分で運転したことはないけどさ。



魔力を消費してるはずなのに、【MP】が減らないのは、ちょっと得した気分だね。

でも、コレだと、【根源世界】で作ったモノを、こっちの世界に持ち込む時の、MP消費量がわからないよね。


まあ、いまはとにかく、【魔力】をたくさん集めることに集中するしかないね。





すこし、話がそれちゃったけど…。



石ころや木切れを【転送】する時に、手が汚れるのはしかたがないんだよね。今のところ、直接触れないと【転送】できないからさ。

でも、せっかく体を休めているときに、腰を痛めるのは本末転倒だよね?



うーん。困ったな。



………



そうだ!ひらめいたよ。



オレは、さっそく、念じた。


(重力軽減!)


「むむむむーーーーーーっ!」


無詠唱なのに、うなっちゃったよ。



すると…、小石が、ぴくりってしてから、ふわふわって浮かんできた。

【重力魔法】は、最低の《G》ランクだったけど、なんとかなるもんだね。



かつて、【歴劫の試練】のクリア直前には、ほとんど全ての魔法を習得してた。

まあ、そのために、何度も何度も何度も転生したんだから、当然なんだけどさ。


でも、【根源世界】に入るときに、それまでの【身体】といっしょに、身につけた魔法も、全て失った。



でも、やっぱり、頑張って身につけたものが、無駄になることなんてないんだね。

《努力》は、必ず【情報カルマ】に刻みこまれる。


刻み込まれた《努力》は、いつか必ず、《才能》としてよみがえる。

だから、すこしでも、《努力》しておくに越したことはないね。


少しの《努力》は、ちいさな《才能》になり…。

たくさんの《努力》は、大きな《才能》になる。

ちょっとした《努力》だって、けっして無駄にはならないんだ。




オレは、ふたたび、トレーニングに取り組んだ。



① とぼとぼ歩いて…。

② アウトドアチェアに座って休憩して…。

③【重力魔法】で、小石やら木切れを浮かせて…。

④ タッチして、【転送】して。



コレを、何時間も、淡々と繰り返した。

ゲームをやってる人なら、こういうルーチンもわりと平気だよね。

まあ、そのお陰もあって、リアル【試練】にも耐えられたんだけど…。



そしたらね。なんと。

お腹がすいてきたんだよ。

コレは、久しぶりの感覚だね。


【根源世界】では、お腹がすくことはないんだよ。

そのくせ、いくらでも食べられるし、食べても太らないから、理解不能なんだけどね。



ああ…、空腹っていいね。

飢餓に苦しんでいるひとたちには、ホント申し訳ないけど…。



うーん。こういう時は、おにぎりだよね。

あと…、ペットボトルのお茶かな。


オレは、さっそく、ウチのコたちに頼んだ。

ついでに、【境界】に【倉庫】を創ってもらって、そこにいろいろと入れてもらうことにした。

【倉庫】に入れておけば、いつでも、こっちの世界に持ち込めるからね。

ラノベに出てくる【マジックバック】みたいなものだね。



…ふう。



おにぎり2個とお茶1本で、おなかいっぱいになっちゃったよ。

さすが、10歳児だね。


それよりも、なんかこう。異様に力がみなぎってくるんだけど…。

さけと梅のおにぎり&日本茶だよ。

ヘルシーな食べ物なのに、おかしいよね。



コレは、たぶんアレだね。

【根源世界】で創ったモノって、こっちで実体化したときに、けっこうな魔力を内蔵しちゃうんだろうね。創った時は、【霊力体】だったからね。

【MP】表示は、相変わらず【99】のままだから、どのくらいのMPが注ぎ込まれたのかは、わからないけど…。



………



お昼ごはんを美味しくいただいた後も、せっせと、トレーニングに励んだよ。

めざせ、転んでも死なない体!…だよ。



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