第7話 つながってたよ
それにしても…
デパートをまるごと創ったのは、まずかったかもしれない。
なにしろ、もう5日にもなるのに、未だに、店内では白い球体がたくさん回転してるんだから。
まだ、実体化しきれていない品物がたくさんあるんだよ。
でも、幸いなことに、デパートを作っている間でも、他のものを作ることができる。
低スペックのパソコンみたいに、リソースの大半を専有されて、他の作業ができなくなってるわけじゃないようだ。
なので、パンツとかシャツとか靴とか、まず、着るものを創った。
それから、スウェットの上下。
いつまでも、裸でいるのもナンだからなあ…。
最初の予定では、完成したデパートで、のんびり気に入ったものを探そうと思ったんだけど、デパートがこの状況だしね。
もちろん、すでに完成してる品物も多いとは思うけど、さすがに、あの白い球体が、ぐりぐり回ってる中を歩き回る気にはならなかった。
でも、この状態で、ウチのコを創るわけにはいかないよね。
やっぱり、ウチのコは、最善の状況で創りたい。
そういう点で、しょっぱなからデパートを創ったのは、失敗だったと思ったんだ。
でもまあ、いわゆる経験値的なものが増えるはずだから、コレはコレでいいのか…とも思う。
【不老不死】らしいから、時間は無限にあるんだしね。
もちろん、【不老不死】の実感なんて、まったく無いけど。
…さて、
オレは、自分の回りの広大な空間を見渡した。
オレの周囲には、いろんなものが転がっている。
いちばん小さいものだと、消しゴムだろうか?
日記帳を創ったので、シャーペンといっしょに創った。
日記なら万年筆で書いたほうがいいんじゃないのか…と思う人もいるかもしれないけど、万年筆だと簡単には消せない。
書きそこねたり、字が汚かったりすると、すっごく気になって、日記帳ごと取り替えたくなるから、シャーペンがいちばんいい。
こういう、つまらない潔癖さは、自分でもガキだなと思うけど、しかたがないよね。
いちばん大きいものでは、自動車を創った。
いわゆる《SUV》ってやつ?
《SUV》っていうのは、《Sport Utility Vehicle》の略だっけ?
翻訳すると《スポーツ用多目的車》になるけど、この訳語だと、ちょっとイメージ違うよね。
けっこう前に流行してから、コンビニに行くにも、ふつうに使われるようになったもんね。
ひと頃は、アフリカでも走るみたいに、でっかい《カンガルーバンパー》をつけていた人もいたけど、アレは、街乗りではタブーだよね。
本来、車っていうのは、正面から人を
いわゆる《パッシブ・セーフティ》ってやつ。
事故を未然に防ぐ《アクティブ・セーフティ》に対して、事故が起きた時に、被害を最小限に抑える技術だね。
《カンガルーバンパー》なんかつけちゃったら、それができなくなって、モロに跳ね飛ばしてしまうから、キケンこの上ない。
さすがに、最近では見なくなったから、危険性が理解されたのかもしれないね。
結論から言うと、《SUV》は、無駄に終わった。
10歳児では、アクセルやブレーキのペダルに足が届かなかった。
コレじゃ運転なんてできないもんね。
あと、何と言っても、現代人の必需品。パソコンを創った。
日本にいた頃は、コスパを考えて、ミドルタワーの自作PCを使ってたけど、【無限創造】の力を得たんだから、『コスパなにそれ?』だよね。
以前から欲しかったハイエンドのゲーミングノートを創ったよ。
真っ赤な筐体で、ハイスペックなのに、すっごく薄いんだよ。
熱処理とかホントに大丈夫なんだろうかと思うけど、そんなことを心配するところが貧乏人なのかもしれない。
いろいろと創ってみて、わかったんだけど、ある程度のイメージは必要なんだよね。
《角丸デパート》なら、たいしたイメージがなくても大丈夫だった。
たぶん、世の中にひとつしかないからだろうと思う。
オレが住んでいたS市の駅前にある《角丸デパート》って祈ったからね。
コレに対して、『自動車が欲しい』って祈ってもダメだった。
そりゃそうだよね。
自動車のディーラに出掛けて、『自動車を売ってくれ』とか言ったり、
八百屋さんに行って、『野菜をくれ』って言っても、お店の人を困らせるだけだよね。
やっぱり、《具体性》って必要だよね。
《具体性》をもたせるのに、いちばんいいのは《映像》。
《ことば》っていうのは、たぶん、とっても
曖昧じゃないと、そもそも他人に通じないはずだし…。
だから、パソコン使って、ネットで検索して画像や映像を見るのが、いちばんよかった。
チョット待て、お前何言ってんだ!…とか思うよね。
お前は、今、【創造の根源】とかいう得体のしれない世界にいたんじゃないか!って…。
でも、そうなんだよ。
この【創造の根源】っていうか【根源世界】は、ネットがつながってるんだよ。
PCを立ち上げて、最初に《Yout◯be》につながった時は、思わず、無線ルーターを探したよ。
でも、なんとこのゲーミングノートPCには、有線のLANケーブルがつながってた。
それで、そのLANケーブルをたどったら、床っていうか地面に、LANの差し込み口と、電気のコンセントがあったよ。
なんか、思わず苦笑しちゃったよ。
微妙にリアリティのあるファンタジー世界なんだもの…。
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