第4話 【万物創造】と【記憶の集合体】

いま、眼の前では、直径20センチくらいの白い球体が、くるくる回っている。


白いし、高速回転してるから、止まってるようにもみえる。

コマみたいなもんだね。


強く祈ったら、この球体がぽんっと現れて、くるくる回りだした。

【万物創造】ってやつらしい。

重々しい名前とは、ちょっとイメージが違うけど。


ちなみに。


オレの【身体】は、無事に完成した。


自分って、自分自身には見えないよね。

自分の顔とか背中を直接見るのは、絶対に不可能だ。


だから、どんなふうに創られていたのか、よくわからなかった。

ただただ、白かっただけ。


でも、祈ってからしばらくすると、ピロンって音がした。

恐る恐る見下ろすと、お腹とか足とかが見えてきた。


うん。よかった。


ちゃんと、アレもついてたよ。ちっちゃめのヤツが…。

これから、ウチのコと青春するための必須アイテムだ。

まだ、10歳くらいだから、いきなり18禁展開にはならない…と思うけど。



そうそう。



まだ、真っ白だけど、真っ白じゃなくなったんだ。

空間ができた。

いまのところ、自分の【身体】と、ちっこい球体しかないから、どのくらいの広さなのか把握できないけど、とてつもなく広い気がする。


それから。


あの宇宙ぽい光景は、もう消えてしまった。

そもそも見えないものだからね。

今回は、【万物創造】が、【記憶の集合体】を解析して、そこから創造のために必要な情報を引き出すことで、可能になることを説明するために、象徴として顕現させたらしいから、消えても当然だよね。



ピロン!



音が鳴った!


見ると、目の前に、円い置き時計が現れた。

ゆっくりと回転しながら、床(地面かな?)にコトリと着地した。



おおっ!なんか懐かしい!



コレは、オレの部屋にあった愛用の置き時計だ。

秒針もあるアナログ時計だね。



『あなたが、最初に、その時計を創造したということは、【根源世界】での時の流れも、あなたの故郷と同じ一日24時間にするということでよろしいのですね?』


「ううん。それでいいよ」


時間の概念って、慣れてるもののほうがいいに決まってるからね。

天体が存在しないから、根拠がないようなものだけど、今までどおりの感覚がいい。


【歴劫の試練】では、地球とぜんぜん違う時間体系の世界もあって、けっこう混乱したんだよね。


ピロン。


音が鳴ると、オレの視界のなかに、デジタルの時間表示がポップアップしてきた。

この世界のシステム表示らしい。

ステータス画面みたいなもんかな。


日数は、ちょっとだけいじって、《1日目》って表示にしたよ。

24時間経過してから、1日ってカウントするほうが正確かもしれないけど、今日で何日目かな?って、ふつうは思うだろうから、こっちの表示にしたんだ。


時間の方の表示は秒までだった。

ミリ秒だっけ?あの見ていて追い立てられるような表示はなかった。

秒表示とか、秒針がないと、ほんとに動いてんのかわからないから、秒の表示は必要だよ。



さらに、目の前に…。


【万物創造_Lv1】


…という表示もでてきた。



おおっ!

オレは感動した。


これから、コツコツとレベルアップしていけば、いずれは何でも創れるようになるんじゃないかな。

すばらしい!

ああ…、はやくウチのコも創りたい!


「ありがたや。ありがたや…」


オレは、思わず手をすりあわせて感謝した。


すると…。


ピロン、ピロン、ピロンって音がして…


【万物創造_Lv4】


…になった。


ナニコレ?


『あなたが、心からの感謝を捧げたからです。この世界のレベルは、実績だけではなく、感謝の心によっても上昇するのです』


「ええっ!そ、それなら…」


オレは、感謝を連発した。


「ありがたや。ありがたや。ありがたや…」


ブッブー。ブッブー。


【万物創造_Lv2】


「ええっ!」


何で下がるの?

感謝したのに…。


『愚かな…。この【根源世界】で、心の籠もらぬ感謝の言葉が、通用するとでも思ったのですか。減点に決まっています』


【導く者】さんに叱られた。


けっこう、シビアなんだな…。この世界って。



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