第5話 いざ、決戦! またの名をえげつないトラップ
四日目の朝。米の飯を食べたあと、ザックにあった高カロリー食とエナジードリンクを飲んでおいた。カフェインで戦いに挑む準備、それにハイになってやべえ奴を演じやすいようにするためだ。そして祈祷師の言うタイムリミットが昼頃になる。エネルギーは充填せねば。
身軽な者を何人かを各トラップ近くの木に登らせ、仕掛けの発動をさせたり、合図を送るように指示してある。
早速、第一ポイントのトラップの見張りから合図の布が見えた。白が一枚ということはひっかかったのは一人だけということだ。もうちょっとひっかかると思ったのだがな。ま、ワイヤーにしなかったのは最後の良心だ。
〜〜〜
「親方、アイツ一人に総勢で行かなくても」
馬を並走しながら手下の一人は頭領に語りかける。
「いや、あいつは俺たちだけではなく、この世にとって存在するのはやべえ奴だ。全力で叩きのめす」
「確かにあの様子は気(ピー)いじみていた」
「俺たちも悪どいが、あれは気(ピー)いの悪どさだ」
「ぐえっ!」
その時、先頭の馬に乗っていた人間が落馬した。主を失った馬はそのまま駆けていく。
「何があった!」
「ゲホ、ゲホッ! 親方、き、来ちゃいけねえ! 縄が張ってあるから首にかかって息ができなくなる! 下手すると首が折れる」
落馬した者が痛みをこらえて警告する。
「やはり姑息な手段で来たか。おい、とりあえず縄を切れ。気をつけろ、きっと他にも罠をしかけているはずだ」
「うおっ!」
「うわっ!」
「今度は何だ!」
先程の主を失った馬と、目の前の者が馬ごと消えている。
手下の一人が馬を降りて、消えた場所へ向かう。
「ひいっ! 落とし穴の底に竹槍が仕掛けてある! おい、大丈夫か!」
「お、俺は何とか。足を切ったが、馬が身代わりになってくれた」
「お、俺も。竹槍の長さが馬に合わせてあるようだ」
「落とし穴に竹槍か。あいつ、馬だけ“だめーじ”与える計算をしているとは相当“くれいじー”な奴だ」
「親方?」
「しっ! 時々親方は俺たちにわからない南蛮の言葉を使うんだ」
「さすが親方、賢いんだな」
〜〜〜
第二ポイントの見張りから布が二枚見えた。これで二人脱落、と。まあ、馬は気の毒だが、馬刺しなりユッケにでもして食べて成仏させてやれ。ユッケがこの時代にあるかは知らんが。まだ食材になる生き物の方が罪悪感少ないな。
しかし、第二ポイントはそんなに重要ではない。そして第二ポイントを村の近くにしたのもちょっとした目論見であり、すぐに第三ポイントが待ち受けている。そして罠にかかったタイミングで競馬妨害用の超音波を出す装置をオンにするように指示はした。
〜〜〜
「これは勢いよく進むと罠にひっかかるようだ。慎重に進むか」
「勢いが削がれるなあ」
「バカ! さっきの落とし穴見てないからそんなこと言えるんだ。馬であんなズタズタになるんだぞ! 人間だったら恐ろしい」
「馬を身代わりにして進むか、馬を置いて進むか悩むな。馬を失うと村に行きにくくなる」
「親方、ここは馬は置いていきましょう。馬もさっきから様子が変だ。それに再び手に入れるには手間もかかるし、もう歩いても村はすぐです」
「確かに言うとおりだ」
賊達は落ち着きを失った馬から降り、適当な場所に繋ぐとぞろぞろ歩き出した。が、間もなく悲鳴が上がることになる。
「うわああ!!」
「なんじゃこりゃー!」
「ひょえー!」
「今度はなんだ!」
「親方、泥の沼ができてます! ハマったら動けねえ!」
「巧妙に葉や枝で隠してたか、あいつやるな。迂回して進むか」
「ぎゃー! こっちにも泥沼が!」
「こっちもです!」
手下達がどんどんと沼にハマって動けなくなっていく。
「あ、足がついた。腹までの深さか。でも、なんか中にいるぞ」
「この感覚、ミミズじゃねえか?」
「ひぃー、ヌメヌメしたものがあちこち足や腹を伝って気色悪りい」
「……迂回するのを見越して沢山作ったのか。しかも、ただの泥沼ではなく気色悪い仕掛けまで。やはりやべえ奴だ」
〜〜〜
先程の見張りから合図が来た。赤い布が一枚、白い布が五枚ということは十五人はひっかかったということだ。大漁だな。
竹槍のトラップと超音波で馬から降りるのは予測できた。さらに泥沼にはまり、迂回するのを見越して複数のミミズ入り泥沼を作ったのは成功だ。溺れない深さにしてやったし、ミミズには殺傷能力は無いが、気色悪さで充分トラウマにはなるだろう。
賊は二十人くらいと聞いていたから残りは数人と言うところか。
そして、徒歩とはいえ賊達は間もなく到着だ。俺はエアガンと武器をもう一度確認した。
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