第4話 準備は手抜かりなく、でも手段は選ばん
翌日は朝早くから突貫作業で大忙しだった。男たちをいくつかの班に分けて、力仕事、女達にはトラップ用の小物作りに励んでもらった。
「こんな事であいつらをやっつけられるのかねえ」
「竹様が言うんだ、信じるしかねえべ」
「しかし、おっかない企みだなあ。やはり祈祷師様は鬼を呼んだのでは?」
「しっ! 竹様に聞かれたらどうするべ! それに野武士達がどこで偵察してるかわからないからな、しゃべるんじゃねえ」
「とりあえず言われた通りに切って、組んでいくべ」
俺は地形などを観察がてら村人に指示を続けた。
「外で作業する時は輪になっておけ。そうすれば野武士が覗いても何をしているかわかりにくい」
「そう、その形に掘ってくれ、あとはさっき指示した通りにするんだ」
「子供達に頼んだものは集まったか? よし、結構あるな。その調子だ」
「作戦実行時の逃げ道と避難場所も確保してくれ。どこで野武士が見ているかわからないからな」
意外と忙しい。村のあちこちを走り回って指示を繰り返したり、出来を確認する。昨日と今朝の米の飯だけではバテるところだ。ザックに高カロリー食をいくつか入れてあったので助かった。
それにしても一人黒澤明、もとい七人の侍と椿三十郎するとは思わなかった。違うのはあの映画のヒーロー達と違って、俺は勝つためなら手段を選ばない奴ということだ。
初めて参加したサバゲーでもデスゲームと勘違いして危険物を使ったので、危うく出禁になるところであった。勘違いと認めてもらえたこと、使った武器が照明弾と殺傷能力が無かったこと、初犯なので厳重注意で済んだのは幸いだったな。
……もしかして、俺は自覚ないだけで本当にやべえ奴なのか? いや、昨日のあれは演技だし、爆竹で慌てふためくのを見て楽しくなる奴では……いや、ちょっと面白く思ったのは白状する。
とにかく、奔走するか。恐らく、頭領のエアガンでの目の怪我が回復する明後日、つまり俺が滞在できる最終日にでも襲撃はあるだろう。
相手は悪党とはいえ、いざ人を殺してしまうかもしれないというのはやはり最後の理性と良心が痛む。かといって、このままでは村人が餓死する。村長が言わないだけで、娘の中には売り飛ばされる前に奴らにかどわかされて十八禁展開にされた者もいるだろう。
悪党達にはそれなりのダメージを与え、この村はやべえと思わせるか、滅んだようにして近づかせないのがいい。
まあ、「それなり」と言っても令和の時代ではアウトなのだが、ここは江戸時代(多分)だから、まあ、大丈夫だろう。昔の映画やドラマ、バラエティでやってみたかったことがこんな形で実現するとはな。ちょっと楽しくなってきた。
……やっぱり俺、やべえ奴なのかもしれない。
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