第一章13 『試験』

 ――――空間が歪む。



 場面が移り変わる。これはランクアップ試験のスタートの合図だ。試験のはアイテムは使えない。この試験内容は秘匿とされ、プレイヤーやNPCにはされない。


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 <Eランクの試験>

 空間転移を開始します

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 俺は瞳を開ける。俺は練兵場みたいな場所にいた。この場には俺と目の前の奴しかいない。


「FUHAHAHAHAHA〜」


 俺はステータスを確認する。


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 PN:マッスル<HDP>

 LV:15 JOB:――

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 アメコミのヒーローチックに高笑いする奴、コイツはマッスルだ。人族でタンクトップでムキムキ男。どこがファンタジーだよ。マッスルはHDPで冒険者ランクEの試験官である。


 HDP:NPCとは違い、完全制御型ホログラフィック。


 冒険者ランクEは、数多のプレイヤーやNPCが受けるのでHDPがランクアップ試験の対応をする。


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 選択をお願いします。

 マッスルの職業。

 ウォーリアORメイジ。

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 Eランクの試験は、試験官マッスルの職業をプレイヤーが選べる。アルカディアをプレイして第一歩だからである。しかし、Eランクになる為には、レベル15位が平均だが。俺はどっちでもいいが――――


「ウォーリアで説明はいらない、スタートで頼む」


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 PN:マッスル<HDP>

 LV:15 JOB:ウォーリア

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 俺が選択した後、マッスルの右手に剣が現れる。



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 Eランク試験を開始します。

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 ──ドパンッ!


 俺は開始と同時に武器を装備し弾丸を放った。被弾した暑苦しい見た目がポリゴンになり爆ぜた。



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 おめでとうございます。

 Eランク冒険者になりました。

 空間転移を開始します。

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 ――――空間が歪む。



 目を開ける。俺の目の前にはルーシーが居る。ランクアップ試験が終わり、先程の場所に俺は戻った。


「おめでとうございます。これがEランクの証となります」


 ルーシーがそう言うと、カウンターに冒険者プレートが出現される。俺はカウンターに置かれた、Eランクの証を受け取る。やはり、一発で十分だったな。


「ランクアップ申請をお願いしたい」

「――はい」


 間髪入れずに、俺は次のランクアップ試験を受ける。眼前のルーシーは無表情である。


 ――――空間が歪む。



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 <Dランクの試験>

 空間転移を開始します。

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 Dランクからのランクアップ試験はランダム試験である。それは――――俺は目を開ける。


「ここは草原か?」


 空間転移された後は、どこに飛ばされるかはランダムである。勿論、敵もだ。草原とは不格好なモンスターが目の前に現れる。眼前にいるのはキングクルルだ。試験相手が目の前とはラッキーだな。


 キングクルルは4メートル位のバカでかい真っ赤なトマトである。クルルが沢山集まると、偶に出現するモンスター。遭遇率はかなり低いモンスターである。



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 N:キングクルル LV:38

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 試験外で会いたかった。俺はそう内心ため息をつく。


 ――――ドパンッ!


 撃ち放たれた弾丸が、敵を食い破らんと空を切り裂き迫る。真っ赤なキングクルルが弾けた。


「きたねえ花火だ」


 一度言ってみたかった――――百年前の物語だが今でも人気である。



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 おめでとうございます。

 Dランク冒険者になりました。

 空間転移を開始します。

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 ――――空間が歪む。



 目を開ける。俺の目の前にはルーシーが居る。いつもと変わらない無表情のルーシーだ。


「おめでとうございます。これがDランクの証となります」


 前回と同じようにプレートを受け取ると、前のプレートは消えて新たなプレートが自動装備される。


「ランクアップ試験をお願いしたい」

「――――はい」



 ――空間が歪む。





 ――――ドパンッ!




 ――――空間が歪む。



 俺はCランクも一撃で終わらせた。Cランクは先程より強くなったマッスルだった。そして俺はまた同じ場所にいた。無表情のルーシー、じゃない。


 えっ――なにか目の顰めている気がする。じ――――っとされているような。いやいや、なわけ――HDPは感情はない。複製キャラクターである。


「――おめでとう」


 あれ、ございますが消えてないか? タメ口になったよ――俺は先程と同じようにプレートを受け取る。


「その――ランクアップお願いします」

「――――――――」


 えっ無言。そう心で叫びながら空間が歪む。



 ────キュウィイインドパンッ!



 Bランク試験も一撃で終わった。スキル、マジックバレットを放って。転移先は活火山で相手はレッドワイバーン三体だった。まぁまぁでかい空飛ぶ、ただのトカゲだ。


 しかし、エリアダメージを受けてしまった。耐性のない初心者装備だから仕方ないが。


 特定の場所ではエリアダメージというのが存在する。今回は熱によるモノだ。試験が終わると全回復される。


「これどうぞ」


 あっ――あれ。おめでとうも言わなくなったよルーシー。死んだ魚の目で俺を見ているよ。


「ランクアップ試験お願いします!!!!」


 俺は元気よく左腕をレッツゴーさせ、ルーシーにそう告げた。


「……」


 いやいや俺の方見てない。わざと目線逸らしているし……。何この子、感情がないんじゃないの――ねぇお医者さん――――



 ――――空間が歪む。



 目を開ける。


「ヒャツ――――」


 俺はAランクの証を受け取る。とうとう「ヒャツ」って言われたよ。背後から急に人が肩トントンみたいに声をあげたよ。Aランク試験は雪山だった。しかし、フロストドラゴンが現れるとは、流石はAランク試験だな。



 ---



 俺はいつでも抜き打ちできる状態で、フロストドラゴンを訝しむように目を眇めた。フロストドラゴンは壮絶な咆哮をあげる。


 取るに足らない、ただの雪を払うかのように両翼をはばたかせ矜恃し、睥睨するフロストドラゴン。凄まじい衝撃波により吹雪がおこる。俺はスキルを使った。


「消えろ マジックバレット!!!」


 極太のレーザー兵器のように、全てをかき消しフロストドラゴンに迫る。弾丸が食い散らかす。フロストドラゴンはブレスを放つが、もうおそい。フロストドラゴンはその圧倒的な力でねじ伏せられる。


 ――――試験に出る、モンスターや場所も疑似体験だ。


 次はSランクだな。しかし今までとは同じようにはいかない。なんせ次の試験はSランクの試験官との試合だからな。


「ランクアップ――――」


 俺はルーシーの姿を見て息を呑んだ。


「――――EEEEEAEERRORE――システムコール。eeeeeee――――」


 ルーシーのホログラフィックが異常にぶれている。


「――大丈夫か!!」


 俺はルーシーのホログラフィックに左手を伸ばした。勿論、実体はないので俺の左手が透けた。



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 パッシブスキルが行使されます。

 異常耐性<SSS>

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 ――――――――――空間が歪む。



 場面が移り変わる。そして、目を開けるとカウンターに居たルーシーが消えていた。俺が正面のカウンターを見つめながら唖然としている中、背後から喧騒が向かってくる。


「ノブナガ様だ――」

「ノブナガ様がこんな所に!!!」


 嫌な予感が背中から伝わる。――逃げよう、直ぐにこの場から去ろう。俺は踵を返した。すると喧騒の主がそこに居た。


「ほおぅ、お主がAランクだな」


 鋭い眼光を放つ、ハイカラな男がそこには居た。

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